
【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:なし
事実関係・疑問点の整理
呪いの始まりから“終わり”まで
性交渉によって「それ」が感染し、別の相手との性交によって転嫁できる、というチェーン型ホラーである本作。「それ」の移動を中心に振り返っていく。
●ヒュー➡ジェイ
ヒューは、恋人関係にあったジェイと車の中で性行為に及ぶと、彼女を薬品で気絶させ、車いすに縛って自由を奪い、廃ビルに連れて行き、「それ」について下記の内容を解説した。
◆止まることなく、歩いて追ってくる
◆姿を変える
◆“移された”人間にしか見えない
◆性行為によって、相手に“移す”ことができる
◆移した相手が死ぬと、自分に戻ってくる
◆触れられたら死ぬし、触れるまでどこにいても追いかけてくる
ヒューが話している最中、全裸の女性が迫ってきて、二人は大急ぎで逃げる展開となる。とは言え、これらはすべてヒューの発言に過ぎず、作中で補強される部分と、真偽が確認できないものとがある。
●ジェイのターン
ヒューとの一件以降、ジェイは「それ」の恐怖に晒され続ける。
◆学校で老婆を見つける➡教室を出て車で移動し、ケリーたちのもとへ
◆キッチンに半裸の女性が、その後自室に大男が侵入➡公園に逃げる
◆ヒューの高校と本名(ジェフ)を突き止め、自宅に押し掛ける➡逃げ続ける必要を再度説かれる
◆グレッグの別荘のビーチでヤラ他、次々変わる複数の人物に襲われる➡車で逃げようとするが事故って入院
別荘ではポールが椅子で反撃しようとして、椅子が壊れる&ポールが吹っ飛ばされる事態があり、いよいよ友人らも「それ」の脅威を知る。この時、グレッグは別方向を向いて立ちションしており、現場を直接は見ていない。
●ジェイ➡グレッグ
この段階でも性欲優先のグレッグは、ジェイに誘われるがまま性行為に及ぶ。数日の間は「何も見えてない」と余裕をかましていたグレッグだったが、結局「母親」の姿をしたそれが訪れ、ジェイが制止するも間に合わず、触れられて死亡した。
移されてから数日バッファがあったのは、単に、その間にグレッグが別の女性と寝ていたからと思われる。「母親」姿のそれに跨られ、腰を揺らされている姿はなかなか気持ちが悪い描写だった。冒頭の女性も仰向けで死亡していたので、似たような殺され方だった可能性はある。
●決戦
(おそらく)海で見かけた男たちに移して時間を稼いでいたジェイは、ポールの作戦という名の思いつきに乗って、ケリー、ヤラとともに室内プールへ向かう。その作戦は、プールに「それ」をおびき寄せて、感電させるというもの。しかし、ジェイの父の姿をした「それ」は施設に到着後もプールには入らず、プールサイドから配置された家電類をジェイに投げ始める。それでも、(ポールに撃たれたヤラを除く)3人の連携プレーで「それ」をプールに落とし、銃で撃ち抜き、ようやくジェイが解放された。
●ジェイ➡ポール?
プール作戦で一応の終わりを迎えたジェイは、ポールと性交渉する。その後、ポールは売春婦と思しき女たちを見つめながら車を運転するシーンがあるが、実際に『時間稼ぎ』をしたかは不明。ラストは、ジェイとポールが二人仲良く手を繋いで歩く。その後ろに見える人影が、後を追っているのか、ただの通行人なのか、作中では明らかにされなかった。
「それ」について分かっていること
●作中から分かること
ヒュー/ジェフが語っていたことは、あくまでも彼の知っている範囲であり、伝聞の可能性も高い。しかし、下記ポイントは作中からも明らかである。
◆物理的な干渉が可能(物を持つ、物を壊す、「それ」を殴る、「それ」を撃つなど)
◆短時間でいろいろな姿になれる(別荘ではかなり短いスパンで姿を変えた)
◆離れてもターゲットの位置を正確に把握している
◆ターゲット以外は妨害されなければ襲わない
◆「歩く」だけとは言え、必要なら窓枠を上ったり水中に入ったりする
●分からないことだらけ
作中では「それ」の正体は明かされない。「死」や「性病」のメタファーと位置付けることは可能だが、実際に「それ」が何かを断言するのは不可能だ。また、ルールについても不明点は多い。どの程度の距離まで追ってくるのか(海外は?飛行機で逃げたらどうなる?)、「性行為」はどこまで含まれてどの時点で「移る」のか、など。その上で、あえて、妄想もりもりで仮定するとしたら、『観測されるまで形を持たない量子的存在』であり『呪いのプロトコル』なのではと考える。だから、姿は観測する者によって変わるし、『量子的な不安定性を解消する』ために観測者を減らす=ターゲットの人間を殺す。つまり作中の”殺害”は、ただのプロトコルによって引き起こされた現象なのである……みたいな説は、本作の不気味さともそう喧嘩しないと思う。
ピックアップしたいポイント
●感電作戦
この計画は監督が意図してバカバカしい物にしたらしい。それにしてもである。ポールは「俺を信じて」みたいなことを言っていたが、みんな成功すると思っていたのだろうか。そもそも、グレッグの別荘で一度頭に銃弾を撃ち込む➡一旦倒れて復活、というのを経験している。どこまで物理攻撃が効くか怪しいのに、逃げ場のない室内プールにおびき出すというのは、なかなかの自爆行為に見えた。ジェイが落ちた!大丈夫、感電してない!というやり取りは、作中で唯一笑ったパートである。
●不自然なまでの大人の不在
これだけの大騒動でも、ジェイたちが警察に駆け込むこともなければ、誰かの親に相談する場面もない。どうやらジェイの家庭には何かしらの問題があるようだが(冒頭で警察沙汰になった際「問題の多い家」と指摘されていた)、深く語られず、不自然にさえ感じられた。かと言って、学校の描写も一度切りで、彼らの『ティーンエイジャーとしての生活』もほぼ見えない。この作品がどことなく浮世離れして見える理由の一つはそこだろう。だからこそ、感情移入も難しかった。
●ラストの意味
最後に歩いている人物が、実は消えていなかった『それ』なのか、これからも『それ』の気配に怯える日々だと示しているのか、単なる観客向けの恐怖演出か、定かではない。これもあえて曖昧にしているらしいが、そもそも『性行為で移す』という前提の『性行為』の定義もよく分からないので、場合によっては『愛があれば大丈夫』説もあり得る。であれば、呪いは解除されたねめでたしめでたし、となりそうだ。個人的には、あの人物は「それ」ではないものの、まだ呪いは続いている、という方がいい。でないと、結局のところ、「それ」はシンプルに銃弾で倒れたということになってしまうからだ。
感想
作る側が意図して諸々を曖昧にしているため、【分からないこと】が積み上がっていく状態だ。そもそも、この作品は謎解きを主軸にしておらず、ある程度のルールだけが示される中で、死が迫る恐怖を描いているのだろう。だから、雰囲気ホラーが大好きな人にはハマるだろうし、ある程度の『理解』を求める層には微妙かも知れない。ちなみに、後者なのであまりハマりはしなかった。
また、若者たちの稚拙な行動が目につき過ぎて、怖がる前に心の中でツッコミを入れてしまう場面が多かった。それでも、怖い雰囲気は十分にあったと思う。夜遅く、歩きなれたはずの歩道で、なんとなく誰かにつけられている気がする時の、アレに近い。
基本情報
【公開年】2016年
【監督】デヴィッド・ロバート・ミッチェル
【キャスト】マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット、ジェイク・ウィアリーオリヴィア・ルッカルディ、リリー・セーペ
【登場人物】ジェイ、ポール(ジェイの幼馴染)、グレッグ(ジェイの隣人)、ヒュー/ジェフ(ジェイの恋人)、ヤラ(ジェイの友人)、ケリー(ジェイの妹)
【ポストクレジット】なし





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