
方向音痴絶望展開
前作ラストの感動をぶち壊すスタートとなった第三弾。制作時の混乱がそのまま映画になってしまったような本作を、劇場公開版と完全版との比較を交えつつ考察していく。
事実関係・疑問点の整理
劇場公開版と完全版の違い
●墜落した先は囚人惑星
まさかの、スラコ号メンバーほぼ全滅、生き残ったのはリプリーのみという絶望からスタートする。さらに、墜落先が囚人惑星フィオリーナ161だったことから、リプリーは身体的・性的危険を伴う環境に晒される。それでも、『溺死』とされたニュートを解剖してもらい、寄生がないこと確認して安堵していた。
<ココが違う>
劇場公開版は脱出機の中で冷凍睡眠ポッド内のリプリーがその他大勢に発見される流れだが、完全版は、海辺で気絶しているリプリーをクレメンスが見つけ抱えて帰るところから始まる。その後の二人の関係を考えると、完全版の方がしっくりくるところだ。
●異変の始まり
人知れず、ワンコがフェイスハガーに襲われ、寄生され、ほぼ成体のようなエイリアンが胸をぶち破って出てくるという悲劇が起きていた。そして、エイリアンに遭遇したマーフィーが換気扇でミンチになり、マーフィー追悼の蝋燭を並べていたボッグスとレインズが食われ、せっかく仲良くなったクレメンスがリプリーの前で頭をぶち抜かれ、皆の前で『怪物なんておらんねん』と語りながら所長が襲われる、怒涛の展開となる。
<ココが違う>
完全版においては犬ではなく、『突然死んだ牛』からエイリアンが生まれる。なんなら全く犬は登場しない。そのため、マーフィーが換気扇近くの穴に向かって『スパイキ~』と呼びかけながら覗き込むシーンが若干意味不明になっていた。
●単純なのに難易度の高い作戦
相手はたった一匹のエイリアンなのだが、宇宙に逃げる手段もなく、武器もなく、設備はオンボロ、誰も戦闘のプロではない、という厳しい状況のため、【なんやかんやして核廃棄物用の倉庫に閉じ込める】という作戦を立てるしかなかった。しかし仕掛けの準備中、一人がエイリアンに襲われ発火筒を落としたことで爆発事故が起きた。
<ココが違う>
完全版ではこの後、ジュニアが犠牲となりながらも、一度はエイリアンの閉じ込めに成功した。しかし、ゴリックが奇行を働いてエイリアンを解放してしまい、結局劇場公開版の展開に繋がっていく。ゴリックを散々かばって来たディロンの顔も丸つぶれの酷い展開だった。
●ようやく解放されるリプリー
第二の作戦としてエイリアンを溶鉱炉へ追い立てることにしたが、作戦中に囚人の殆どが死亡する。それでも、モースとリプリーの共闘でなんとかエイリアンを爆散させた。その時ちょうどウェイランド・ユタニ社の『救助隊』が到着したが、会社を一ミリも信用していないリプリーは、体内のエイリアンと共に死ぬことを選び、自ら溶鉱炉へと身を投げた。最終的に、足を負傷したモースだけが生き残って救助隊と共に出発、囚人惑星は閉鎖されることとなって物語は終わった。
<ココが違う>
終盤の流れはほぼ変わらないが、完全版ではラストの溶鉱炉ダイブシーンで、チェストバスターが飛び出ることはなく、リプリーがそのまま落ちていく演出になっているのが一番の違いである。余談だが、完全版の演出の方が、監督とシガニー・ウィーバーの意に沿うものだったらしい。
囚人惑星と新キャラたち
●囚人惑星フィオリーナ161
今回の舞台は、ダブルY症候群なる遺伝子変異を持った凶悪犯たちのいる労働監獄、囚人惑星フューリー161金属精錬所である。と言っても、作中で一度リプリーを襲おうとする以外、『凶悪な囚人』の設定が生かされる(?)場面はなかった。とにかく、精錬所の施設の設計が分かりにくいのが印象的。
●クレメンス
医務主任。過去に鎮痛剤の分量間違いで11人を死亡させる事故を起こしており、それがきっかけでフィオリーナへやってきた。ずっと理性的な振る舞いでリプリーの味方として働き、二人の絆が強固になったかに見えたタイミングで、エイリアンのインナーマウスで頭をぶち抜かれるというショッキングな最期を迎える。いや、どう見てもゴリックの方が殺しやすかったやろ!と、誰もがツッコミを入れただろう場面である。
●ディロン
俺っちは殺人も強姦もしてきたワルだぜ、と語る囚人のリーダーだが、作中ではむしろ宗教家。特に完全版では、毎度所長の前座として皆の前に立ち宗教色強い演説をしていた。最後は、エイリアンを溶鉱炉内で引き留めるための囮となり死亡する。
●モース
リプリーに絡んだり、アーロン(ミスター85)を馬鹿にしたり、完全版ではゴリックの拘束を解いてしまったり、どちらかというと敵対者風に描かれていた。しかし最後は、鉛を流し込む役目を果たし、スプリンクラーで急速冷却プランを提案し、リプリーの溶鉱炉上への移動を手伝うなど、大活躍を見せた。完全版では、溶鉱炉を対抗策とすること自体もモースの案となっている。本作唯一の生き残り。
●ビショップ
医療データでリプリーがエイリアンを体内に宿していると知り、会社から飛んで来た。見た目は前作のビショップそのものだが、彼は『アンドロイド』ではなく『アンドロイドの開発者』だと主張する。殴られれば赤い血を流しており、恐らく人間だとは思われるが、エイリアンを優先する姿勢はどうしてもアンドロイド的に見える。ところで、リプリーの医療データがほぼリアルタイムで会社に届くなど、本作においては過去2作と比較し、ウェイランド・ユタニ社の監視体制が強化されているように見えた。一作目からは60年近く時間が経過しているが、本作は2作目直後の出来事である。そこまで急激に技術が進歩するのか、という疑問は残る。(配信サイト等ではエイリアン3は2270年設定という記載があるが、本編中に明言されておらず、本サイトではストーリーの整合性を見て2179年~直後の出来事と想定している)
本作のエイリアン:ランナー
●シリーズ初の四足歩行エイリアン
本作に登場するのは、犬(完全版では牛)を宿主とした新種エイリアン、ランナーである。主な特徴は下記の通り。
◆四足歩行で俊敏性が上がっている
◆背骨の突起、フードはない
◆全体的に細く、しなやかさがアップ
◆宿主から出た時点で成体に近い形状
◆捕食行動をとる(襲った人間をその場で食べる)
◆人間を捉えて繭化する等、『種の存続』に繋がる行動がない
生まれた瞬間に四肢が生え揃っている点や人間を捕食する点などは、宿主の性質の違いから来ている可能性は高い。【種の保存】の観点からすると、宿主選びに失敗したとも言える。
●どこから来たのか
これまでのエイリアンの1フェイスハガー=1寄生という性質を考えると、犬/牛に寄生したフェイスハガーとリプリーに寄生したものは同一個体でないはずだ。描写されていないところで、スラコ号には卵が最低でも二個あったとみる方が妥当だろう。
●最強外骨格
ランナーは作戦通り溶鉱炉へ落とされるものの、溶けた鉛を食らった程度では死ななかった。体表強すぎである。施設が相当古かったので、鉛の融点ぎりぎりの低い温度だった可能性はある。それにしても、強すぎである。最終的にはスプリンクラーの水を浴び、(おそらく)熱衝撃により破裂して死亡したが、見た目のヒョロさとは対照的な耐久力だった。
感想
この映画には、脚本が何度も書き換えられた上、撮影時点で固まっていない設定があったなどのメタ的な問題があった。それを踏まえての寛大な受け止め方や、作品として一定の評価があるのも分かるが、やはり、前作での死闘をすべて無にされたガッカリが大きすぎた。考えようによっては、スタート時点で絶望感はピーク、更にクレメンスも早々に退場することで、その後リプリーが死を受容することへの違和感が減った側面はある。それでも全体を通して、冒頭の虚無感を覆すほどの『良さ』は見いだせなかった。
呆気ないニュートたちの死、何故か過去作よりも強くなったCG感、ほぼ誰も印象に残らない囚人たち、弱体化した感のあるエイリアンなど残念要素が多いため、総合的に見てもあまり好きではない。それでもたまに振り返って視聴してしまうのは、ずっとエイリアンの呪縛に苦しめられてきたリプリーがようやく解放されるラストシーンに、胸を打つものがあったからだろう。チェストバスターをぐっと握りしめて落ちる劇場公開版、体内に宿したまま一人静かに落下していく完全版。インパクトがあるのは前者だが、後者はリプリーの勝利感が強く、どちらもフィナーレに相応しいものだった。リプリー、長らくお疲れ様でした。
基本情報
【公開年】1992年
【監督】デヴィッド・フィンチャー
【キャスト】シガニー・ウィーバー、チャールズ・ダンス、ブライアン・グローヴァー、ラルフ・ブラウン、チャールズ・S・ダットン、ダニー・ウェッブ、ランス・ヘンリクセン
【登場人物】エレン・リプリー、ジョナサン・クレメンス(医師)、ハロルド・アンドリュース(所長)、フランシス・アーロン(副長/ミスター85)、d(囚人のリーダー)、モース(囚人)、ビショップ
【ポストクレジット】なし





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