【考察】映画『プレデター:バッドランド』|ヤウージャ族”最弱”戦士の冒険の軌跡

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり(人間はなし)、子ども被害:なし、動物被害:なし

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

シリーズ初となるプレデターが主役の作品で、人間は一切登場しない。舞台は死の惑星ゲンナ、ゲンナにいるのは固有種とウェイランド・ユタニ(以下WY)のアンドロイドだけ、地球の様子も描かれず、人間の存在は微塵もない。主人公サイドとして、アンドロイドのティアと、かリスクのバドが登場した。バドは、デ〇ズニー成分として『小さくてちょっとコミカルで可愛いキャラクター』枠であることは間違いない。しかし、それだけではなく、本作においてデクを『ヒーロー的主人公』たらしめる重要な存在だった。デクがラストバトルへと立ち上がるのは、バドが親と引き離され失意していたことが決定打となった。つまり、バドがいたことで初めて、デクは主体的に何かを守ると決め、ある種人間らしい感情に基づいて行動したことになるのだ。

パンフレットに全く紹介がなかったので(なぜ!!)、ここで作中に登場したものを列挙していく。

◆枝のような生き物:絡み合う蔓状の枝(?)で構成された生き物。先端が口になっている。各個体の強度は低めだが複数に囲まれると厄介。

◆爆弾芋虫:見た目はただの芋虫。危険を察知するとムクムク膨れ上がって爆発する。

◆ヴァルチャー:鳥と恐竜を混ぜたような生き物。近くに生息する毒針植物を利用して獲物を麻痺させ、捕獲する。

◆インブレ・アングィス:うなぎ+爬虫類みたいなニョロニョロ。口から物凄い勢いで酸性の液体を吐く。液体の強さはアンドロイドも溶かすレベル。豆みたいな好物で餌付けが可能。忠誠心がとても強く命懸けで主人を守る。

◆ボーン・バイソン:カリスクの獲物で、象が耳を前向きに閉じているような見た目。皮膚はかなり硬そう。肉もまずそう。

◆ルーナ・バグ:3本足のクソデカヒトデのような姿。木の上に生息しており、下にきた獲物を触手のような舌で巻き上げる。

◆カリスク:ゲンナ星最強生物。子どもは体を丸め転がって移動も可能。表皮を硬化し、カミソリ草のみならず敵の牙もガード可能。驚異の再生能力を持ち、頭を切り落とされても切断面の組織が伸びて結合し復活。成体は四足歩行が基本。これまで誰もカリスクを倒せなかった設定だが、作中ではテッサが使ったヤウージャ族の手りゅう弾であっさり凍ったり、あっさり爆散したりしていた。そこは少々ツッコミどころ。

●デク
半人前の若者という設定で父からは最弱認定されている。小柄。ドレッドヘアーをポニーテール状にまとめている。左下の牙は、かつて何かから兄を守って欠けたらしいが詳細は不明。ゲンナ星到着時はプラズマソード、弓、手裏剣、スピア、ガントレット、そして手りゅう弾を所持していたが早々にそのほとんどを失った。プラズマソードは本作が初出、折り畳み式で刀身が少々個性的な形をしている。運動能力は高く、元来のセンスの良さや臨機応変な対応力により、ゲンナ星について以降は目まぐるしく成長する。

●クウェイ
デクの兄。デクよりも大きな体格、立派なドレッドヘアーはまんべんなく生えていて、恐らく成人。父もクウェイの実力を認めていた模様。なお、父との対決時、あくまでもデクを守ることを優先していたために完全に後れを取っていたが、一対一の真剣勝負の場合にも同じ結果だったかは不明である。少なくとも、最後まで剣を取って戦っていたはずだ。遺言は『必ず持ち帰れ』。

●ンジョール(ニョール)
デクとクウェイの父でクランの長。白いドレッドヘアに白いヒゲと、角があるようないかついマスクをしており、そのビジュアルはかなり個性的。放り投げて使うレーザーの鎖を携帯している。引用したヤウージャの書を体現しているような、所謂プレデター像に合致するキャラクターである。ラストでデクに対して言った『クランに迎え入れよう』というセリフは、自身の死を受け入れた上で、彼なりの筋を通した言葉だったように思う。既存のクランが正しいと信じ、そこに強き者が加わるのが正しいと信じ、反抗しているだけのデクが改心すれば再度迎え入れてやる、という発言に繋がったと取れるからだ。どこまでいっても、ヤウージャ思想どっぷりで、だからこそクウェイを斬首しても嫌いになりきれない存在なのだろう。

Yautja are prey to none. ヤウージャは誰にも狩られない
Friend to none. 群れることはない
Predator to all. すべてを 狩る
Yautja Codex 0422/25 ヤウージャの書0422/25

映画「プレデター:バッドランド」本編より

主役のデクが一族最弱設定、プレデターの怖さがない、サーマルヴィジョンがない(デク視点が序盤に数秒あるだけ)、基本マスクしてない、光学迷彩使用もほんのちょっと、プレデターはめっちゃ喋るし、兄弟愛も垣間見えるし、グロテスクな殺戮シーン皆無で、やたらデ〇ズニー色が強い。その辺りはシリーズ全体から考えるとかなり異質であり、本作に賛否両論あるのは理解できる。しかし、振り返ればこれまでも様々なタイプのプレデターが存在しているのは明白であり、信念や行動様式にも大きな幅がある。人間に近い感受性を持って行動する個体がいても、それでプレデター像が根底から覆されるわけではないと考える。

個人的には、劇場に何度も足を運んで観るくらい楽しめた。兄クウェイの言動や振る舞いに惚れ惚れしたし、たっぷり描かれた多くのバトルシーンは総じて面白く、ツッコミどころでマイナスに感じた部分を補って余りある良さが詰まっていた。特に、兄弟の描き方はとても好きだった。デクにとっては目指すべき憧れの相手である兄クウェイ、クウェイにとっては命を賭してでも成長の機会をあげたい弟デク。そこにはかつてデクがクウェイを守った恩返しの意味もあったかも知れない。デクが父とのバトルで、兄がされたのと同じようにまず右腕を切り落としたのも熱かった。シンプルに、クウェイはかっこよく、デクはかわいい、という側面もある。プレデターに『末っ子感凄い、守りたい、その牙』みたいな感情を抱く日が来ると、誰が予想しただろうか。

デクはティアとバドを指して本物のクランと言ったが、「絆が芽生えて、愛情を持って家族になった」というより、デク流のアルファ像「一番守って一番狩る」を実現するためのクラン、という気がする。デクにとって本物の“ファミリー”は兄だけなのではないか、などと勝手に考えている。強く賢く弟思いのクウェイが本当に刺さったので、兄貴主役の前日譚なんてのも見てみたい。

とはいえ、姿を消したプレデターがじっとりねっとりコチラを狙って、どこからともなく襲ってきては背骨をぶっこ抜いて生皮を剥ぐ、みたいな新作が観たい気持ちもある。次回作は「ベテラン狩人プレデターがばったばったハントしまくる血みどろ作品」あたりを期待したい。ウルフの物語でも大歓迎だ!

シリーズのまとめ記事はこちらから☟

基本情報

【公開年】2025年
【監督】ダン・トラクテンバーグ
【キャスト】エル・ファニング、ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ、マイク・ホーミック、ルーベン・デ・ヨング
【登場人物】ティア/テッサ(アンドロイド)、デク(ヤウージャ族)、クウェイ(ヤウージャ族/デクの兄)、ニョール(ヤウージャ族/デク・クウェイの父)
ポストクレジットなし

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