【考察】映画『エイリアン:ロムルス』|衝突の危機と謎の生物から逃げ切れるのか

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:あり、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:なし

●なんでも管理できると思っている傲慢さ
20年前にノストロモ号の船員をほぼ全滅させ、その後宇宙空間へと放り出されたエイリアン=ビッグチャップは、ウェイランド・ユタニ社(以下、WY社)により回収され、宇宙研究施設ロムルスにてDNA解析等の研究に利用されていた。残念ながらというか大方の予想通りというか、ビッグチャップは突如目覚めて研究員たちを襲い、最終的に施設は全滅となった。なお、会社が残骸を発見するに至った経緯だが、マザーのセンサー機能が生きており繭に反応して信号発信→WY社側でキャッチしたものと思われる。

●脱ブラックのために
その頃主人公レインたちはブラック極まりないジャクソン星採掘植民地から逃げ出し、「ユヴァーガ」へ向かうことを決意。たまたま発見したWY社の“廃船”から冷凍睡眠ポッドを拝借する計画を立てた。若者が現状に絶望してリスクを取ってでも逃げ出そうとする、というスタートは、これまでとは違う重苦しさがある。さらに、ユヴァーガへ行くにはポッドの残燃料が足りず、船内で追加燃料を探すハメに。道中、その“廃船”が宇宙ステーション“ロムルス/レムス”であることが判明。そしてたどり着いた低温室で燃料は確保できたものの、燃料の抜き取りにより解凍されたフェイスハガーが続々と脱出する展開となる。フェイスハガーが静かに陳列されている様子は、正体を知る人がそれだけで見たら即気絶モノだ。

●ロムルス=エイリアンの巣
フェイスハガーの1体は、ナヴァロに卵を産みつけ、貨物船へ戻ったナヴァロの胸からチェストバスターとして飛び出ると、その後ゼノモーフへと急速成長し、ビヨンを殺害してケイを襲う。しかし後半、ロムルスから貨物船に戻ろうとした面々は、低温室のとは別にフェイスハガーが存在していたこと、ロムルス内がすでにエイリアンの巣と化していたことを知る。タイラーも巣に運ばれ大量のゼノモーフに迫られてからの、インナーマウスで一撃という悲惨な最期を迎えていた。

●今回の勝者はレイン……?
終盤、瀕死のケイは、胎児を助ける/自分も助かるために、得体の知れない「合成物Z0-1」を自分に注射してしまう。それにより誕生した新種エイリアンによって結局食い殺される残念な展開となった。一方レインは、壊れたアンディを回収しつつ、貨物室の切り離し作戦によって、新種エイリアンを宇宙に放り出すことが出来た。そして無事に冷凍ポッドへ入り、ユヴァーガを目的地に設定して貨物船が出発したところで本作は終わる。ということで、間違いなく本作の勝者はレインである。しかし、ユヴァーガへ到着したところで本当に彼女が思い描いた未来が待っているのかは、また別の話。特に、エイリアン~エイリアン3を見てきた層にとっては、フリにしか見えないエンディングである。

●ロムルス内での研究内容
ルーク曰く、彼らは“完璧な人間を作る研究”をしていたという。ジャクソン星のような過酷な場所でも使い倒せる駒を生み出し利用するつもりだったのだろう。そこで目を付けたのが、完全生物エイリアンだったのだ。なんやかんやでロムルスでは、エイリアンのDNAから“代謝を制御”し“宿主をアップデート”できる「Z0-1合成物」の生成に成功したらしい。しかし、ラボにはかつてマウスだった“残骸”が残されており、ケイの最期を見ても、失敗作か未完成品のようである。

●ウェイランド・ユタニ研究施設としてのロムルス
アンディは、ゼノモーフと対決する必要を察すると、保管されていたF44AAパルスライフルを取り出す。電子パルスを発射する照準アシスト機能付きの、絶対殺す系武器である。研究施設に当たり前のように立派な武器を備え、それでも詰めが甘くて全滅してしまうあたり、やはり企業としての傲慢さがにじみ出ている。ところで、シリーズを通してみていると、会社がエイリアンについてどこまで把握していたのかが不明瞭である。会社としてかなりの縦割り構造で、部門によっては社内でも極秘扱いになっていると考えるのが妥当だ。ロムルスほどの規模の施設を会社上層の決裁なく運用するのは無理だろうし、かと言って、エイリアンの存在をわずか30年で全員が忘れてしまうというのも無理があるからだ(エイリアン2)。つまり、ビックチャップ研究にあたった部門(ロムルス乗員等)とそこに予算をあてがえるような層だけがエイリアンに関する情報を持っており、ロムルス消滅とともにデータも消え、余計なトラブルを避けたい上層もそのままなかったことにした……と推測するのが現実的だろう。

●アンドロイドは必須
エイリアンシリーズと言えばアンドロイドの存在が欠かせない。本作では、主人公サイドおよび敵サイドとして立ち位置が異なる2体のアンドロイド、アンディとルークが登場する。ルークは見た目を裏切らず、アッシュの再来のような立ち位置で会社の利益を最優先する。過去作でも描かれた『会社に従順すぎる機械人間が敵に回る』という構造なのだが、途中、モジュールの交換によってアンディがコロッとクソアンドロイド化する展開は、生成AIが普及してきた現在では以前よりもリアルな脅威に感じられた。それでも、レインを最優先し、寒いギャグを言い続けながら寄り添う姿には、アンドロイドと平和に共存する明るい未来も示している。

●人工エイリアン
ロムルスが“廃船”となる原因はビッグチャップの暴走だったが、作中で大暴れしたのはビッグチャップを元に人工的に作られたエイリアンである。フェイスハガーが、エッグチェンバーではなく人工的なシュリンクをぶち破って出てくるのは、卵がペニョンと割れて飛び出るのとは別の不気味さがあった。一方、ゼノモーフとしての外見はビッグチャップとよく似ており、見慣れた美しい形態だった。

●人型エイリアン
本作で初出となる新種エイリアンは、人型エイリアン『オフスプリング』である。ケイが合成物を注射したことで胎児のDNAが変異したものと思われるが、シリーズで初めて”妊婦”から”生まれた”存在でもあり、象徴的な誕生だった。酸まみれの卵から生まれると急速に成長して、あっという間にレインの倍ほどの大きさになる。しかし下手に人間らしい顔をしているので、「どう見ても勝てない」という、絶対王者感が消え去っていた上、背中の穴は急所丸出し感がすごかった(急所かは不明)。オフスプリングは母であるケイを吸い尽くして殺したり、追い詰めたレインを見下ろしてニヤリとしたり、とにかく嫌悪感を抱かせる存在だった。

●人工重力
作中の世界では重力が人工的に完全にコントロールされている。爆発を防ぐため(?)に、宇宙ステーション内は定期的に人口重力が発生していたし、後半は手動で重力をかけたり消したりすることで、うまくエイリアンとのバトルに生かしていた。これまでにないアプローチで、科学的に正しい挙動なのかはわからないが、重力発生!酸性血液ビチャ!穴!みたいな流れは新鮮。

●小惑星帯との衝突
レインたちは小惑星帯との衝突という危機にも直面していた。ロムルス到着時点では衝突まで36時間あったのだが、貨物船の衝突で回転軸がずれて47分に短縮される。そこからは、本編の進行と、衝突までの時間がリンクしリアルタイムで進んでいく、緊迫感ある展開となる。衝突によってロムルスが完全崩壊し、残っていたクローンエイリアンやら合成物Z0-1やらがすべて物理的に消滅していることを祈るばかりである。

宇宙に漂う閉鎖空間の中で未知の生物に襲われるが、最後まで諦めずに戦い、勝利する。そのシンプルなプロットを見ても、本作はエイリアンの原点回帰ムービーだと言えるだろう。仲間が一人ずつ殺されていく展開や、会社の利益を最優先するアンドロイドの存在もオリジナルを彷彿とさせるものだしオマージュも多い。ゼノモーフの生態についても、クローン設定でありながら、比較的初代に近い物を感じる。

一方で、印象に残る新たな切り口も多かった。X線照射装置で体内にエイリアンを発見!という流れは、薄々予想はできたもののゾクゾクした。また、音を立てず息を殺してフェイスハガーの大群を突っ切ろうとするのも、これまでにない戦略である。一部勢いで押し切った感やツッコミどころもあるが、新たにエイリアンの世界に触れる人にも、これまでエイリアンに親しんできた人にも程よく刺さる塩梅になっていたと思う。残念なのは、オフスプリングに好き要素が微塵もなかったことかな。

基本情報

【公開年】2024年
【監督】フェデ・アルバレス
【キャスト】ケイリー・スピーニー、デヴィッド・ジョンソン、アーチー・ルノー、イザベラ・メルセード、スパイク・ファーン、アイリーン・ウー、ダニエル・ベッツ
【登場人物】レイン・キャラダイン(ジャクソン星鉱員)、アンディ(アンドロイド)、タイラー(レインの元カレ)、ケイ(タイラーの妹)、ビヨン(タイラーの従弟)、ナヴァロ(ビヨンの友人)、ルーク(アンドロイド)
ポストクレジットなし

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