【考察】映画『バイバイマン』|その“名前”を知ってしまった彼らに、助かる術はない?

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり(軽微)、子ども被害:なし、動物被害:なし

●不気味な新居
エリオットたちがシェアハウスとして新居に選んだのは、大学から20分のところにある家具付き一軒家だった。本作は、そこにあったナイトテーブルに書かれた殴り書きを見て『バイバイマン』を知り悲劇が起こる流れである。サーシャは、ハウスウォーミング時点で除霊を友人に頼むほど新居を不気味に感じていたが、最後まであの家自体に呪いの元凶があるという描写はない。単純に、ナイトテーブルに起因するものと推測される。

●人のせいにしているが
エリオットはナイトテーブルの引き出しに、呪文のように『考えるな、言うな』と繰り返し書かれているのを見つける。するとわざわざその面を引っぺがし、底に書かれた“the bye bye man”の文字に辿り着く。その後、降霊会の場でキムが『考えるな、言うな』を繰り返すと、思わず「バイバイマン」と零す。図書館ではしっかりワトキンスにバイバイマンの説明をする。終盤レドモン元妻の前で、さも全部レドモンのせい!みたいな態度を取っていたが、なかなかの元凶ムーブである。しかし、エリオットの残念ムーブ含めて全部バイバイマンの呪いという可能性もゼロではない。

●幻覚とわかっていても
バイバイマンは、その名を知った者を直々に殺しにくるわけではない。幻覚を見せて、人間同士で殺させるのである。そして最終時に自殺に追い込む。エリオットも、バイバイマンが幻覚を見せていることを把握し、全体の構図に気付いたところで、恐怖心を払拭すれば奴は無力だ!とドヤ顔で説いた。しかし、最終幕では結局幻覚に振り回されての、自殺ENDとなった。『恐怖心がなければ無力』という説は、エリオット自身によって否定された。

●わかっていること
バイバイマンの正体は、結局最後まで分からない。判明したのは下記の事実だけである。

◆「バイバイマン」という名前を、口にしたり考えたりすると狙われる
◆バイバイマンは猟犬を連れている
◆猟犬が現れてコインの音がした時にはもうすぐそばにいる
◆直接危害は加えず、幻覚を見せる
◆幻覚によって、対象者は周囲を死に至らしめようとする

エリオットは過去の事件までたどり着くも、結局有益な情報はなく、対処法も不明のままだった。もはや、知った瞬間に詰んでいるとしか言いようがない状況である。

●投げっぱなし
コインが……4214の列車が……と、思わせぶりなモチーフをばらまくが、結局何も拾ってくれないままエンディングとなる。原作小説において、バイバイマンのモデルとも言うべき男は列車に乗って移動しているという描写があるらしい。そこから作中でも列車のヴィジョンが採用されたのかも知れないが、それだけでは全くの意味不明である。特に若者たちの全裸ショットは本当に意味不明である。

●犬とおじさん
バイバイマンのビジュアルは、フードを被ったおじさん、或いは別作品の魔法使い、みたいな見た目。連れている猟犬はCG丸出しであること以外あまり特徴のない見た目。つまり、怖い要素が全くない、ただの『犬とおじさん』にしか見えないという、致命的欠陥を抱えている。

●バイバイマンに目的はあるのか

断言するが、作中の情報からバイバイマンの目的を知ることは不可能である。作中で描かれる呪いのステップを簡略化すると、Aがバイバイマンという名前を知る➡バイバイマンがAの元へ来る➡AがBを殺す➡最終的にAが自殺という流れを取っており、AかBがあらかじめ誰かにバイバイマンの名前を伝えていなければサイクルはそこで終わる。「人間同士の殺し合いを引き出す」のが目的だとしても、「恐怖として伝播し続ける」のが目的だとしても、効率が悪い。分からないからこその恐怖や、すべて謎がゆえの不気味さを演出したかったのかも知れないが、あまりにふんわりし過ぎて恐怖もぼやけた感は否めない。

●でなければ人類消滅
個人レベルでは『知った瞬間詰んでいる』わけだが、少なくともバイバイマンのせいで人口の半数が消滅、みたいな事態は起きていない。実際、一時的にでも封じる方法はあった。【周囲に漏らさず全ての痕跡を消し最後に自殺する】という手段だ。

●1968年の事件
過去に起きたバイバイマン事件では、ラリーがそれなりに正解の対処法をとっていた。調査中に辿り着いた『バイバイマン』について話してしまった人々を射殺し、最後は服毒自殺をしたのだ。しかしラリーは、【全ての痕跡を消す】という点で失敗してしまった。ナイトテーブルの殴り書きを消し忘れ(焼却処分しておくべきだった)、図書館にも資料が1点だけ残っており(ラリーが残したかは不明だが)、それを元に今回の悲劇が起きたのである。強靭な精神力で妻にも名前を漏らさないでいたラリーだが、バイバイマンの呪いが、その上を行く強さだったということだろうか。

●今回の事件
本作で起きた事件は、登場人物ほぼ死亡➡エリオットの自己犠牲虚しく更に広まる予感……という結末になったわけだが、どこかで回避可能なポイントはあったのか。エリオットがナイトテーブルを見つける前から、サーシャはコインの音を聞き、小さい扉の向こうに何かを感じ、ジャンプスケアを体験している。そこで既に呪いの気配が近づいていたのだとしたら、ナイトテーブルの置かれたあの家を選んだ時点でバッドエンド回避は相当困難だったかも知れない。

所謂都市伝説ホラーなのだが、結局バイバイマンの詳細も分からないし、生き残るためにどうしたらええねんという謎解き要素もほぼなく、頭を使う余地も、生きるか死ぬかのドキドキ感もない。さらーっと、ホラーの雰囲気だけ楽しみたい場合には最適かも知れない、と言いたいところだが、振り返ってみると恐怖要素もほぼなかった。ジャンプスケアで脅かしたいのかバイバイマンのビジュアルで怖がらせたいのかジワ怖を演出したいのか不明で、結局どの方向性も失敗した形だ。

キャラクターの人数が少ないのに魅力ある登場人物がおらず、謎の三角関係(ほぼ幻覚)を見せられる流れも困惑した。冒頭の、突然乱射事件が始まる掴みは良かっただけに、肩透かしの残念さが際立った。唯一良かった点と言えば、アリスが無事だったこと、ただそれだけである。

基本情報

【公開年】2017年
【監督】ステイシー・タイトル
【キャスト】ダグラス・スミス、クレシダ・ボナス、ルシエン・ラヴィスカウント、ジェナ・カネル、リー・ワネル、フェイ・ダナウェイ、クリオ・キング、キャリー=アン・モス、マイケル・トルッコ、エリカ・トレンブレイ
【登場人物】エリオット(大学生)、サーシャ(大学生/エリオットの恋人)、ジョン(大学生/エリオットの親友)、キム(大学生)、ラリー・レドモン(記者)、ワトキンス(図書館職員)、ショー(刑事)、ヴァージル(エリオットの兄)、アリス(ヴァージルの娘)
ポストクレジットなし

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