【考察】映画『アウェイクニング』|心霊懐疑派作家が暴く幽霊騒動の真相

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:なし、子ども被害:あり、動物被害:なし

幽霊に懐疑的スタンスを持ちつつも、怪奇現象の追及に取り組む作家、フローレンス。彼女の元に幽霊騒動に悩む寄宿学校の教師マロリーが訪れるところから、本作はスタートする。しかしフローレンスが呼ばれた学校は、幽霊以前にいくつかの問題を抱えていた。

●いじめ問題
最初に、子ども同士のいじめが判明する。大人を騙すために幽霊役をさせられていたパリーも、フローレンスが訪れるきっかけとなった事件の被害者であるウォルターも、いじめのターゲットにされていたのだ。パリーが食堂で席についた途端周囲に離席される瞬間などは、胸がキュッとなる演出である。

●虐待的指導
教師マクネアによる体罰も、前半で明らかになった。部外者のフローレンスが見ている前でも授業中に子どもを叩いており、問題意識のなさが伺える。“幽霊のフリ”騒動の場で子どもを叩こうとした際に、フローレンスからウォルターの件もあわせて糾弾される。それでもなお腑に落ちないような態度でいたところから、問題の根深さが伺える。

●前時代的空間
死亡事件への関与が明らかになった際には、さすがの校長もマクネアに苦言を呈していた。しかし、その前の体罰に関しては黙認しており、体罰が日常的だったこと、そしてそれが問題視されていなかったことが分かる。校長はフローレンス=女性に対しても見下した態度を取っており、閉鎖的環境であることや、本人の意識の問題だけでなく、“そういう時代”というのを感じる学校だった。

●屋敷の真実
後半では、幽霊と屋敷にまつわる事実が怒涛の勢いで明かされる。判明した内容は下記の通り。

◆かつてこの屋敷には、フローレンスが家族と暮らしていた
◆フローレンスの父は、フローレンスの乳母モードと関係を持った
◆モードがトムを生んだ=フローレンスとトムは異母兄弟
◆フローレンスの母が、モードとの関係などを責めると父がキレた
 ➡父は母を射殺
 ➡続けてフローレンスを殺そうとするも誤ってトム射殺
 ➡それに動揺した父が自殺
 ➡フローレンスはショックで一連の記憶を封じた
◆殺されたトムこそが、この学校の幽霊
◆幽霊騒動によりフローレンスを呼ぶよう仕向けたのはモード
◆モードがフローレンスを呼んだのは、共に心中するため

フローレンスの父については本編中でほぼ描写がなく、モードとの関係については息子が欲しかったという動機が語られるものの、怒りに任せて銃を持ち出し家族を撃つのは唐突過ぎて、なかなか理解が難しかった。

●モードとフローレンス
モードがフローレンスを出迎えるときの緊張感や、「彼女は騒音を嫌います」とマロリーを窘めるセリフ。それらは、フローレンスのファンだからかな、と思わせる程度にはあっさりとしていたが、振り返ってみると二人の関係をありありと描いていた。腹を痛めた子ではないものの、モードにとってフローレンスは、可愛い息子と共に育ててきた大切な“娘”だったのだろう。

●モードの思惑
モードは最終的に、気が緩んだフローレンスに毒入りシェリーを飲ませて殺そうとした。フローレンスを殺害後モードも自殺をすることで、揃ってトムの元へ行き、あの世で【家族】となる、それが彼女の思惑だったのだ。しかし、フローレンスの言葉でトムは彼女を助けることを決意。便利機能で壁を抜けて解毒剤を持ってきて彼女に飲ませた。結局、歪んだ親子愛がもたらした事件は、モードが一人死亡して終わった。

●フローレンスの記憶
いくらなんでも記憶がごっそり消えすぎである。序盤、「幼少期の記憶は恐怖のみ、両親の死は見えるが、ケニアやロンドンの生活は消去、絶えぬ闇の恐怖のみ」という自著の内容が明かされる。目の前で母もトムも殺され、自身も撃たれ、あまりの辛さに記憶を抹消していた、という筋はわかる。それにしても、寄宿学校=かつての自宅で、自身の乳母に対面し、当時のままのトムを見ても、微塵も思い出さないものだろうか。寄宿学校に来てから、過去の記憶がフラッシュバックするような描写こそあったが、どんでん返しありきの少々強引な設定に感じられた。

●トムのセリフ
フローレンスが学校へ来たばかりの頃、トムがモードに彼女を指して「あの女性」と呼んだ。なぜ、そんな他人行儀な呼び方をしたのだろう。トムは、周囲の子どもたちには見えていないはずなので、モードとの会話において“知らない人のフリ”をする必要はない。単なるミスリードのためだろうか。

●なぞの霊障
桟橋でフローレンスを水中へ引っ張る、たばこケースをマロリーの枕に仕込む、フローレンスがジャッドに暴行されている間マロリーを閉じ込める、などの霊障が起きていた。果たしてそれは”誰”が行ったのか。

仮説1:トムの霊の仕業➡トムがフローレンスを傷付ける選択をするとは思えず、トムだった場合、意図や目的も不明。
仮説2:他の霊の仕業➡過去に亡くなった生徒やフローレンスの元カレという可能性はゼロではない。しかし、動機が分からない上に、展開上唐突過ぎる。
仮説3:罪悪感などからくるフローレンスの幻覚/無意識の行動➡一部あてはまる可能性がゼロではないが、物理的に不可能な場面もあり(マロリーを閉じ込めるなど)、この説だけでは成立しない。

あえて曖昧にしているのかも知れないが、『ホラー演出のための演出』に見えてしまいモヤモヤが残った。ちなみに、ジャッドに関わる一連のシークエンスは総じて微妙で、ジャッドの無駄死に感が半端なかった。

フローレンスは戦死した恋人に対する罪悪感から、執拗に”霊の存在“の検証を行っていた。【恋人の霊などいない】という確証を得たい気持ちと、【例え霊でもいいからいて欲しい】という願いの狭間で揺れる心の機微。それは、作中でマロリーが語る「暗闇は怖いのに目を閉じる」という矛盾に通じる物があるし、なんとなく想像出来る。マロリーはマロリーで、足の古傷を抉って体の痛みを感じることで、”一人だけ戦争を生き残った“心の痛みから逃れようとしていた。そんな似た者同士の二人が共感し惹かれていくストーリーは、まぁ、分からなくもない。しかし、いくらなんでも本作の急接近はやり過ぎに見えた。フローレンスは、いわば人生をかけて”元カレの死“と向き合ってきたのに、ほんの数日前に出会って意気投合した男へコロッと靡いてしまうのは軽すぎないだろうか。ラストシークエンスでマロリーにしなだれかかる様子も、ちょっと気持ち悪かった。

英国らしくどんよりとした空模様と厳かだがどこか寒々しい建物がゴシックホラーの雰囲気たっぷりで良かったし、マロリーのたった一言でそれまで見ていた物がひっくり返るのはインパクトがあった。だが、逆に言えばそれだけの印象である。雰囲気はとても好みだったし、実は子どものイタズラでした~と思わせて幽霊いました~しかも主人公の過去とめっちゃ関係あります~という大筋は好きだった分、消化不良に思えて残念。

基本情報

【公開年】2011年
【監督】ニック・マーフィ
【キャスト】レベッカ・ホール、ドミニク・ウェスト、イメルダ・スタウントン
【登場人物】フローレンス・キャスカート(作家)、ロバート・マロリー(寄宿学校歴史教師)、モード・ヒル(寄宿学校寮母)
ポストクレジットなし

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