【考察】映画『死霊のはらわた』|B級山小屋アンデッドホラーの先駆け!

【苦手トリガーチェック】
虫:あり、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:なし

●“呪い”の経緯
休暇を過ごすため山小屋を訪れた若者5人は、地下にあったテープレコーダーを興味本位で再生する。すると呪文が詠唱され、悪霊が蘇ってしまう。そして悪霊たちはジワジワと憑依者 = Deaditeデダイト を増やしていった……というのが大筋である。まずは憑依された順に振り返っていく。

◆シェリル:アッシュの姉
謎の声に誘われるようにして森へ出ると、“木”に襲われる。なんとか小屋に逃げ戻るも、憑依されていた。その後はリンダの足を刺す、地下室の扉からお茶目に覗く、奮闘するアッシュたちを煽るなど活躍を続け、ラストバトルにもつれ込む。最終的にはアッシュが“死者の書”を燃やしたことで体が崩壊した。

◆シェリー:スコットの恋人
窓を割って侵入してきた悪霊に憑依された模様。デダイトになってからは執拗にスコットを襲うが、逆にスコットによって斧でバラバラにされてしまった。

◆リンダ:アッシュの恋人
シェリルに刺された足の傷から浸食が広がり、やがて憑依された。ケタケタ笑い&呪いの歌でアッシュをブチ切れさせる。チェンソーでの四肢切断を断念したアッシュによって、土に埋められた。一度はそこから這い出てアッシュに飛び掛かるも、シャベルで斬首されて活動停止となった。

◆スコット:アッシュの友人
仲間を見捨ててでも一人で逃げるべく迂回路を探し森に出るが、木に襲われ戻ってきた。その後、死亡と前後して憑依される。デダイトとなりアッシュの首を絞めるが、逆に目を潰される。本を燃やすとスコットが燃えることに気付いたアッシュが本を暖炉に放り込むと、シェリルと共に、ドロドロになって崩壊した。

結局、アッシュが一人だけ憑依されずに朝まで生き残りました、めでたしめでたし……と思わせておいて、何かが勢いよく迫ってくる描写で終わる。

●遺跡にあった“死者の書”
テープレコーダーに残されたメッセージから明らかになるのは、下記の事実である。

◆かつてこの山小屋にいたのは、カンダール遺跡の発掘品を調査していた人物
◆『古代サマリア人の埋葬儀式と弔いの呪文の集大成』の書かれた“死者の書”もあった
◆その人物は、“死者の書”に書かれた呪文を唱えた
◆呪文により悪霊が蘇り、その人物の妻が憑依された

『重要な発見をした』と言っていたが、何故こんな山小屋で奥さんと二人で調査を進めていたのか、その後どうなったのか、などは全て不明である。

●蘇った悪霊たち
悪霊たちの目的は語られないが、人間を殺すことや肉体を乗っ取ることではなく、恐怖に陥れること自体に意義を感じているように見えた。なお、作中で見られた能力は様々である。ざっとあげると下記の通り。

◆人間の言葉で呼びかける
◆ポルターガイスト現象を起こす
◆憑依する(木を介する、ケガを介する、窓を突き破って直接憑依など複数経路)
◆橋を崩す
◆トランプカードを言い当てる

『橋を崩す』だけ突然規模が大きく異質に感じるが、“森”そのものを操って崩壊させたとすれば筋が通る。シェリルを“木”が襲ったように、悪霊たちは範囲内にある“自然”に干渉して操れると考えられるからだ。

●一応対処法がある
◆バラバラにする
テープレコーダーでは『体をバラバラに切断する』のが憑依を解く方法と語っていた。実際、スコットに斧でバラバラにされたシェリーは、その後復活していない。リンダもアッシュによって首を切られて以降起き上がることはなかったが、『バラバラ』というほどの切断レベルではなかったのでモヤモヤは残る。

◆“死者の書”の焼却
“死者の書”を燃やすこともデダイト消滅には有効だった。本を暖炉に投げ込むと、デダイトたちは急速に肉体が崩れていき、最後は大きな手が中から飛び出て完全に崩壊した。あの大きな手が、悪霊が実体化した物かは不明だが、本を燃やすことが何らかの儀式的な力でデダイトを消滅させたことは間違いない。

◆悪霊そのものは?
作中で悪霊が消え去った描写はなく、むしろアッシュに迫って終わる。バラバラ作戦も、焼却作戦も、対デダイトにしか機能しないものらしい。“死者の書”に『悪霊は静かに棲息し不滅である』という記載があったことからも、【デダイトを消滅させれば悪霊と人間との接触が一時的に断たれる】というだけで、悪霊はどんな手段を使っても消えることはないと思われる。

●パッとしないアッシュ
本作に限って言うと、アッシュはかなり印象が薄い。続編以降だいぶキャラが濃くなっていくのだが、本作、特に前半を見ているとまるで空気のようである。主体的な行動はほぼなく、グループの中では周りについていくタイプで、かなり頼りなく映る。後半でやっと主人公になっていくが、時折挟まる自己憐憫発言には、むしろ情けない印象を受ける。そして無事にデダイトを消滅させるのだが、どうしても、最初からそのくらい頑張れよという気持ちを抱いてしまう。応援出来ない系の主人公だった。

●シェリルがとにかく標的にされている感
シェリルは、テープレコーダー再生以前から悪霊の気配を感じていた。そして呼び出しを食らい、森に出てしまって、木に襲われることになる。何故シェリルだけが悪霊側からの接触を受けたのかは特に明言されない。元々霊感が強いタイプだった可能性、他の4人と違いパートナーがいないことで孤立させやすく最初のターゲットにされた可能性などが考えられる。それにしても、あれだけボロボロになって取り乱している姉を見て、全然取り合わないアッシュには本当にイライラした。

●やらかしポジションのスコット
恋人を斧で切り刻んだ次の瞬間には『埋葬しなきゃ』と言うスコットの切り替えの早さは清々しくもあった。また、いつまでもウダウダしているアッシュと違い、さっさと逃げようとする姿勢は評価できる。しかし、この惨事はほぼほぼスコットのせいである。この山小屋に連れて来たのもスコットのようだし、テープレコーダーを再生し続けたのもスコットだ。行動力は認めるが、やらかし度合いが凄いのでトータルではマイナスである。

この作品の魅力は、なんといってもデダイトたちである。初見時は、怖い物を見たくてレンタルしてきたはずが、床の扉から覗いてキャピキャピするシェリルに爆笑してしまった記憶がある。ケタケタ笑って歌うリンダも、鬱陶しくはあったが、不思議な髪型も相まって愉快が勝ってしまった。肉体が崩壊していく様も、ストップモーションの動きがなんとも魅力的で、ところどころ食品に見える面白さもあり、怖さは薄かった。ただ一点、崩壊後の体から突然出て来た虫には裏切られた気分だ。そんなドッキリはいらなかった。

当時の撮影技術や予算の面からチープな仕上がりに見える部分もあるし、なんとも言えない演技や、ツッコミどころの多い展開もある。それでも、ゴア表現やカメラワークはオリジナリティを感じさせるし、制作陣の熱量が画面越しにも伝わってくるような作品なのは間違いない。だからこそ根強く愛されるのだろう。“死者の書“という厨二病にゴリゴリ刺さるアイテム、呪文のダサかっこいい響きや、デダイトたちの歌はその後のシリーズにも受け継がれているのだが、たまに原点にかえって見たくなるのは、やはり独特の熱さを感じられるからだろう。

基本情報

【公開年】1981年
【監督】サム・ライミ
【キャスト】ブルース・キャンベル、エレン・サンドワイズ、ベッツィ・ベイカー、ハル・デルリッチ、サラ・ヨーク
【登場人物】アッシュ、シェリル(アッシュの姉)、リンダ(アッシュの恋人)、スコット(アッシュの友人)、シェリー(スコットの恋人)
ポストクレジットなし

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