【考察】映画『キャビンフィーバー』|血塗れの男が招いた恐怖、その真実とは

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:あり

●ひとまず言葉の意味は
『キャビンフィーバー』という言葉自体は【閉鎖空間に長期間いることで引き起こされる情緒不安定】を指す。本作では、山小屋という閉鎖空間で謎の感染症の恐怖に直面した5人組が、疑心暗鬼になっていく様子が描かれる。大抵の場合、若者!山小屋!とくれば、殺人鬼!か、悪魔!と続きそうだが、そうではなかった。

●本筋はシンプル
よく分からない脅かし演出が多く、ところどころ滑っているコメディ感すらあるのだが、本筋の事件は至ってシンプルだ。犬が感染➡犬に触ったヘンリーが感染➡ヘンリーの遺体が落ちた貯水池の水を飲んだ人々が感染、というだけの話である。物語の追加要素として、病気と直接関係ない【射殺事件】、病気が明らかになってからの【警官による隠蔽】が加わった形だ。

●感染症の原因は?
序盤からこれでもかと水道管や水の入ったグラスがアップで映されたり、貯水池にヘンリーの死体があることをポールが発見したりと、水から感染が広まったのは明らかである。しかし、そもそもどうやってヘンリーの飼い犬が感染したのかは不明のままだ。ヘンリーの従姉妹が病気の豚に憤慨しているシーンがあったので、その辺から感染が始まった可能性はある。

●感染の拡大
ヘンリーを殺してしまったあと、若者たちにじわじわと感染が広がっていく。最初に発症するのはカレンで、彼女はヘンリーが落下した貯水池から汲み上げた水を誰よりも先に飲んでいた。その後、バート、マーシー、ポールの順に発症していくが、彼らについては飲み水以外から感染した可能性もゼロではない。バートはヘンリーの血を浴びているし、ポールはカレンと、マーシーはポールと身体的な接触があるし、ポールに関してはとどめにヘンリー入りの貯水池に落ちている。

病気の対処法
発症後、唯一病院へ運ばれたポールだったが、そこの設備では対処できないとして別の病院へ移されることになってしまった。結局その後ポールは警官たちの隠ぺい工作(兼仕返し)のため山中に捨てられることになるのだが、なんせ身体の崩壊スピードが尋常ではないので、あの時点で適切な治療を受けられていたとして、助かったのかは不明である。作中の感染症は壊死性筋膜炎という実際の病気がモデルとされているらしいが、特定の病名は明言されておらず、何かしらのウイルスが原因とされている。全身に症状が広がるスピードが速く、仮に壊死した部分を切除しても有効か分からず、ウイルス性の病気であれば抗菌薬も効かないので、ポールが大病院にたどり着いていたとして正しく対処出来る保証がないのである。

周辺にいる住民がもう少しまともだったら、ポールたちが助かる可能性は0.001%くらいあったかも知れない。

◆雑貨店店員たち:作中の行動や言動から、店員たちが今回の感染症について知らなかったことは明白だろう。しかし、バートの様子や『友人が病気』という発言から、バートが何かしらに感染していることは悟ったらしく、デニスに感染させた!とブチ切れだした。突然のブチ切れもびっくりだが、即射殺しようとするのはさすがにやり過ぎである。そもそもデニスの方から噛みついたことを忘れてないだろうか。また『ニガー』については、思い込みの滑稽さを言いたかったのか、単なる意識高い系な若者たちへの皮肉か分からないが、オチがついたところで雑貨店へのマイナスな印象は変わらなかった。

◆デニス:序盤から強いインパクトをもたらし、こいつがすべての元凶か!?そうでなくとも、なにか関係が!?と思わせておいて、ただ噛み癖のある少年というオチ。本作のスベり要員とも言える。後半再登場した際、店の壁にちゃんと『デニスの横に座らないでね』と書いてあったのはちょっと面白かったが、謎のカンフーもパンケーキ連呼も結局本編とは全く関係がなかった。本当に、全然関係なかった。

◆警官:自分たちで対処しきれると思えないからか、或いは単に余計な仕事を増やされると面倒だからか、ポールを捨てるし、勝手に若者たちの死体を燃やす。ラストは感染が爆発的に広がりそうな描写で、彼らも巡り巡って感染することになりそうである。完全に自業自得である。

●若者たちの謎行動
ホラー映画につきものの【若者が取る謎行動】は本作でもいくつか見られた。突然命の危機に晒されて動揺しているという言い訳はあるにしても、いくらなんでも理解し難い点を挙げる。

◆マーシー:シャワー後、なぜか唐突に小屋の外に出る➡そして犬に食われる
◆ポール:助けを呼びに行った先で、なぜか突然覗きを始める➡そして追い払われる
◆ジェフ:状況が不明なタイミングなのに、なぜかわざわざ小屋に戻る➡そして射殺される

キャラクター造形が不十分だったのか、描き方が不十分だったのかは分からないが、役柄的にポールが覗いちゃダメだろ!やるならバートだろ!とツッコまざるを得なかった。また最後のジェフは、これ、ロメロさんの某ゾンビ映画オマージュをやりたかっただけやん、という強引な展開に感じてしまった。

●グリムとマンボ
グリムは思わせぶりな登場をするも、本筋になんの影響もなかった。存在自体が謎というか、たいして意味がない人物である。グリムの犬、マンボにやたらみんなが怯えるのも意味不明だった。マーシーとカレンを食わせるためだけの存在であれば、“グリムの犬”でなくても良かったように思う。また、グリムは恐らく感染で死亡したようだが、マンボは幸いにも感染源の水を飲んでいなかったということだろうか。登場から退場まで、なんとも異質さのあるコンビだった。

バカな若者が自業自得的に痛い目に遭う典型ホラー、という括りでいいだろう。しかしホラーとは言っているものの、怖さはまったくなく、ブラックジョークの(つまらない)コメディと化していた。よく分からない演出や、意味のないシーンの挿入も多く、とにかく散漫な作品という印象である。

ただ、山小屋x若者ときて感染症へと繋がっていくのは、新鮮に感じた。感染の恐怖から懐疑的になったり快楽へ逃避したり、結局は自分本位になっていく様。ブラックユーモアを交えてそういった人間の本質的な醜さを描いている本作には、他にないイヤらしさを感じた。ただ、どうにもデニスの印象が強すぎて、振り返った時に「キャビンフィーバーは、カンフー少年がパンケーキと叫ぶ映画だった」となってしまう。取り立てて好きなキャラクターや心に残るシークエンスもなかったので、もう見ることはないだろう。

基本情報

【公開年】2002年
【監督】イーライ・ロス
【キャスト】ライダー・ストロング、ジョーダン・ラッド、ジョーイ・カーン、セリーナ・ヴィンセント、ジェームズ・デベロ、アリ・ヴァーヴィーン
【登場人物】ポール(大学生)、カレン(大学生/ポールの幼馴染)、ジェフ(大学生)、マーシー(大学生/ジェフの恋人)、バート(大学生)、ヘンリー
ポストクレジットなし

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