【考察】映画『THE MUMMY/ザ・マミー 棺の中の少女』|8年振りに帰宅した娘の内に潜む『悪』の正体

【苦手トリガーチェック】
虫:あり、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:あり(軽微)

●エジプトでの誘拐
キャノン一家は、父チャーリーがカイロで特派員として働いており、故郷のアメリカを離れエジプトで暮らしていた。本作序盤で娘のケイティが何者かに攫われるが、直後に訪れた警察署では『エジプトへ移り住んで5カ月』と語っていたので、とんでもなく間が悪い話である。

●ケイティの帰宅
事件から8年後、エジプトの飛行機墜落事故現場にあった石棺の中から奇跡的にケイティが救出された。その頃は既にアメリカのアルバカーキに戻っていた夫婦だったが、早速カイロへ飛び、自宅までケイティを連れ帰った。そこからが、本当の悲劇である。家族の全員が、ケイティのコントロール下で不本意な行動を取らされたり、物理的な危害を加えられたりするのだ。特に祖母カルメンは、『アーメン』パンチ、ロザリオで首絞め、窓ぶち破り落下、コヨーテによる実食、入れ歯盗難、防腐剤流出、娘婿への誘惑ムーブ、サソリリバースからの階段柵へ頭インなど、かなりの被害を被っていた。

次に悲惨なのはモードかも知れない。全部の歯を抜いたり、学校教師に『ネズミ顔のクソ女』と暴言を吐いたりと、正気に戻ってからも実務的影響が残る行動だったからだ。ケイティも正気に戻ったあと、「あんたあの時、おばあちゃんの遺体の防腐剤をぺろぺろ舐めてたのよ~」なんて言われたら卒倒しそうではあるが。

●謎解きから解放まで
チャーリーと担当刑事のザキはそれぞれ、皮膚の呪文、心当たりの手紙を元に謎解きを進め、ケイティの中に悪魔が封印されていることを知る。追い詰められた彼らは、かつてケイティが悪魔を移されたのと同じ方法で、ケイティからチャーリーへと悪魔を移した。そしてその後、誘拐犯でもあるマジシャン(レイラの母親)へと悪魔を再移動させた。チャーリーへ悪魔が移った直後からケイティは正気に戻っていたので、恐らくチャーリーも本編終了後、元に戻ったのだろう。

●古代の悪魔、ナスマラニアン
調査の結果&残されたビデオの内容から、ケイティの肉体には古代エジプトの悪魔、ナスマラニアンが封印されていると判明した。実は数千年の間、何人もの人間がナスマラニアンの器として犠牲になっていたのである。封印の儀式は、呪文を唱えて旧肉体から新肉体へ悪魔(黒いゲボ)を移動➡呪文を書いた帯で肉体をぐるぐる巻く➡玄武岩製の石棺にイン➡ピラミッドの中に安置、という方法。その他、ナスマラニアンについて作中で判明した点は下記の通り。

◆ナスマラニアンは暗黒の力を持つ悪魔
◆魂の病となり人から人へ広がっていく
◆紀元前2000年から記録がない
◆マジシャンの一族が先祖代々、“器”にナスマラニアンを封じてきた(今回で82回目)
◆器は誰でもいいが、無垢な子どもの方が適している

器=生贄を用意してナスマラニアンを封じなければ人類滅亡、みたいな話だと仮定すると、マジシャン一族はある意味世界を守っていたと言える。勝手に生贄に選定し誘拐するのはよろしくないが、そこはもはやトロッコ問題となる。一族としてもノーリスクではなかった。【暗黒の兆候】を受けて様子見した時点で、マジシャンの夫はクレーンのピタゴラフックで死亡しているし、ダム建設に先んじて棺を移動させようとした息子たちも死亡している。

疑問やツッコミどころをまとめつつ、可能な限り解釈を添えてみた。

ケイティが器にされたのはなぜ?
テレビ出演もしている外国人の娘は、ターゲットとして高リスクに見える。しかし、ケイティとレイラは事件前から交流があったにも関わらず、ケイティの両親にすら知られていなかった。マジシャンにしてみれば、誘拐しても自分に容疑がかかりにくい一方、声を掛けやすい子どもとして選んだ可能性がある。

ケイティの帰宅許可が下りたのはなぜ?
医師は、”グルグル巻きで長らく棺に閉じ込められていた上で上空から墜落したのに生存している”という特大ミラクルを事実上スルーして、ロックドイン症候群と診断しており、母親のラリッサが看護師であれば対処できると見越したのだろう。病院として、国際的な面倒臭いやり取りを回避するため帰した可能性もある。しかしいずれにしろ、体を洗ったり、長すぎる爪を切ったりという最低限の処置をしなかった理由にはならないだろう。ちゃんと整えておいてくれれば、母が親指の爪を切って脛までペロン事件は起きなかったかも知れない

墜落事故がしっかり調査されなかったのはなぜ?
作中、墜落した飛行機、そして石棺の持ち主が調査される展開はなかった。事故の死者である息子たちから念入りに辿れば、石棺の持ち主=マジシャンがケイティ誘拐に関わっていたことがもっと早く分かったはずだ。無理矢理理由を探すとしたら、マジシャンが棺を運ばせると決めた時点で、息子たちと自分とが公的に繋がらないように細工していた可能性はあるかも知れない。娘の舌を切り落としていたくらいなので、やれることはなんでもやっていただろう。

チャーリーに移動後、ナスマラニアンが大人しかったのはなぜ?
ケイティは、解放時点で悪魔に体を奪われて8年が経過していた。また、作中でケイティ/ナスマラニアンがコントロール出来た(生きた)人間は子どもだけだったことを踏まえると、移動後間もない成人男性であるチャーリーの意識を完全に奪うには、もっと時間が必要だったのかも知れない。

他にも気になる点は多数あるが、こじつけ解釈が出来なかった主要なものはこの辺だ。

◆両親がケイティを、車いすをガコンガコンさせながらあえて2階に運んだ理由
◆腐った床をチャーリーが放置した理由
◆サソリを食おうが、皮が捲れようが、両親がケイティを病院に連れて行かない理由
◆モードの様子が明らかに異常でも両親揃って普通に接する理由
◆ザキがずっと単独でこの事件に肩入れして、VHSをアメリカまで持ってくる理由
◆儀式をわざわざ録画したVHSを、ちゃっちい箱に入れ崖に埋めておこう!となった理由

ピラミッドに納められた石棺、エジプトで発生した誘拐事件、ミイラ姿で発見される娘、古代の悪魔……それらの組み合わせ自体は目新しいかも知れないが、展開は予想出来る流れも多く、よくある悪魔憑きモノにエジプトのエッセンスを追加、という印象に落ち着いてしまった。

また、尺が長い分中弛みがあり、『あれ?あそこ変じゃね?』などと余計なことを考えてしまうゆとりがあった。結構あった。とは言え、ある程度は“創作だし”とスルーするのも楽しみ方の一つだろう。しかし一点、チャーリーがVHSを一時停止させたことについては、「そりゃないだろ」と何度でも叫びたい。一応ニュースの専門家という立場で、妻も差し置き謎を追って来た身なのだから、『モウヤダー』みたいなことで現実から目を逸らすのは違和感しかない。ビデオを見終わってソファでフリーズしていたのも悪魔の力的サムシングではなくただボーッとしていただけのようで、むしろこちらがビックリである。

ただ、祖母の死あたりからの、畳みかけるようなゴア表現は好きなタイプのものだった。祖母だけ死後まで酷い扱いを受けたのは胸が痛いところだが、その分作中で最もインパクトを残したサブキャラと言える。コヨーテに食われて終わりかと思った分、その後の大活躍はいい意味での裏切りだった。

基本情報

【公開年】2026年
【監督】リー・クローニン
【キャスト】ジャック・レイナー、ライア・コスタ、メイ・キャラマウィ、ナタリー・グレイス、ヴェロニカ・ファルコン
【登場人物】チャーリー・キャノン(ケイティの父)、ラリッサ(ケイティの母)、ザキ(刑事)、ケイティ、カルメン(ケイティの祖母)
ポストクレジットなし

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