
カプチーニ病院の謎のエレベーターがずっと気になってる
【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:なし
事実関係・疑問点の整理
ソーン家を襲う悲劇の全容
●悲劇の始まりは死産
外交官ロバート・ソーンは、我が子が誕生と同時に死亡したことを知る。直後、神父によって【偶然同じタイミングで生まれて母親が死んでしまった赤子】を引き取るよう説得される。しかし、その子には恐ろしい秘密があり……というストーリーなのだが、発端となったロバートの選択自体がトンデモである。外交官の立場で『出自も分からない謎の赤ちゃんを、妻にも内緒で、正規の手続きも取らず自分の子どもにする』というのは、倫理的にはもとより、リスク管理という点でも最悪だ。
●徐々に迫る“災厄”の影
ソーン家に引き取られ、ダミアンと名付けられた息子の5歳の誕生日会を機に、不穏な出来事が起こり始めた。
◆乳母のホリーがド派手に首吊り投身自殺
◆教会に連れて行こうとしたらダミアンがキャシーを殴り出す
◆サファリパークでやたら動物たちに逃げられたり威嚇されたりする
◆ブレナンの首に避雷針が突き刺さり死亡
◆キャシーが二階から落下、妊娠していたが流産
◆ホリー、ブレナン、ジェニングスの写真に”死の予兆”が写る
当初はどれだけブレナンに注意を受けようとも危機感のなかったロバートだが、この頃にはカメラマンのジェニングスとともに調査を始める。
●明らかになる真実
ここから謎解きターンが始まり、下記の内容にたどり着く。
◆カプチーニ病院
ダミアンが生まれたローマの病院は、証拠を消すかのように5年前に火事になった
◆ダミアンの“母親”
【サンタンジェロ墓地】で5年前の6月6日(ダミアンの誕生日)に死んだ者の墓を見つけ掘り起こすと、犬の骨のようなものが埋葬されていた
◆ブーゲンハーゲン
ブレナンがずっと語っていた『メギド』の場所を突き止めて出会ったブーゲンハーゲンは、ダミアンの『殺し方』を把握しており、専用の短剣セットも持っていた
キャシーの死にショックを受けたロバートは、『ダミアンも死なせたい』と言い出したのだが、ブーゲンハーゲンからダミアンを刺すべく短剣を渡されると『子どもを殺すなんてできない!』と拒絶。ブレブレな男である。
●そして、勝利する悪魔
ロバートが放り投げた短剣を取り戻しに行ったジェニングスは、トラックの荷台から飛び出したガラス板によって断首される。結局ロバートは短剣をもって家に帰ると、妨害しに来た犬を追い出し、ベイロックを刺し殺し、覚悟を決めてダミアンを教会へと連れ出す。しかしロバートが最後の最後まで躊躇しモタついていたため、到着した警官にマッハで射殺される。
その後、キャシーとロバートの葬式では、大統領夫人と手を繋いでニヤリと笑うダミアンの姿が……となり、悪魔側の勝利を匂わせ物語は終わった。
反キリスト誕生計画とは
●神父と悪魔の使者
作中、ダミアン=反キリスト側の人間として登場したのはスピレットとブレナン、そしてベイロックの3人である。
◆スピレット神父
カプチーニ病院でロバートに養子斡旋した人物。悪魔崇拝者とは断言できないものの、『キリストを捨てた』と言い、悪魔に傾倒して計画に加担した模様。おそらくロバートの実子殺害にも関与しており、普通に犯罪者である。
◆ブレナン神父
計画に携わっていたようだが、具体的に何をしていたかは不明。自身の行動を後悔して、ロバートへ警告しに再三会いに来る。しかし、焦りのためか話の持っていき方が下手くそ過ぎて、前半は不審者扱いでほぼ相手にされない。
◆ベイロック
悪魔崇拝者。ホリーの死後、ソーン家に新たな乳母として強引に入り込む。ダミアンを“守りにきた”と言い、教会行きを阻止しようとしたり、ロバートに飛び掛かって戦うなどした。黒い犬も従えており明らかに悪魔側の存在だが、彼女自身がどこまで“悪魔的な力”を持っていたかは分からない。
●反キリスト誕生から現在まで
マリア・スキアーナと名前の書かれた墓には、ジャッカルと思われる骨が入っていた。それがダミアンの実母であると仄めかされているものの、出産シーンなどはないため断定できない。また、誕生から数年の間沈黙していた“悪魔サイド”が活発に動き出す理由は明言されていないが、明らかに5歳の誕生日会がきっかけになっていた。ダミアンの成長を待っていた可能性が考えられる。
●そもそも反キリストとは
『反キリスト』は『魔性の者の三位一体(サタン、反キリスト、偽預言者)』の一つと表現されていた。そのコンセプト自体は黙示録に準じている。黙示録におけるサタンの目的は神に取って代わることで、反キリストの役割は『地上において政治的・軍事的支配を行う存在』である。黙示録通りであれば、ダミアンが政治的な立場で人間たちを支配し、いずれ訪れる悪魔が神として君臨するための下地を作る、という壮大な計画が読み取れる。
すべてが反キリストによる災厄なのか
実際、どこからどこまでが『ダミアンが引き起こした』ものなのだろうか。
ホリーは黒い犬と目が合った直後から様子が変わって急に自殺をしたし、ブレナンもジェニングスも、出来過ぎた偶然で死亡しており、かなり超常的な力を感じる。キャシーの転落は人為的なものだが、悪魔の後押しのようなものが伺える。“死の予兆”の写真についても、捻じ曲げられた不穏な未来が“現象”として現れたものだと言えるだろう。
しかし本編では、それらをダミアンが意図して引き起こしている様子はない。悪魔の力によって自然と守られていた、という方がしっくりくる。そうなると、ラストの笑顔は、『うまくいったぜイヒヒ』という意味合いではなく、本人は【魔性の使命を背負っていることさえまだ知らない】と感じさせる演出だったと言える。しかし、あえてすべてが曖昧に描かれているため、本作をもって断定できないのがもどかしいところだ。
ちなみに、その辺りは『オーメン2』でもう少し明らかになっていく。
感想
笑顔で飛び降り首を吊るホリー、立ったまま避雷針で串刺しにされるブレナン、首をスパーン!と斬り落とされるジェニングス。それらは時を経ても語り継がれる、インパクト抜群の恐怖シーンだ。しかし、どれもただの“結果”であり、この作品の怖さの本質は別にある。それは、何か超常的な悪の力をひしひし感じるのに、その正体が分からず、決して回避することが出来ないという恐怖。しかも、その根源が無垢に見える少年かも知れない、という謎も追い打ちをかけるのである。
不気味なBGMも恐怖のタイプにとてもマッチしていた。『グレゴリオ賛歌の悪魔的バージョン』のイメージで作られた楽曲らしいが、まさに反キリストを思わせる、不吉ながらも神秘性を感じられるものだった。
ところで、年を重ねてから見返すとロバートの選択がどうにも理解不能である。あの時点ですでに悪魔の力が働いていた、神父の声を借りた悪魔の囁きだったと言われた方が納得するレベルである。結局のところ、キャシーはダミアンが自分の子どもではないこと、そして本当の子どもが撲殺されたことを知らぬまま亡くなった。彼女にとって、真実を知る/知らないの、どちらが良かったのかは分からない。もし天国があるなら、本当の子どもと二人で幸せな時を過ごして欲しいものである。ロバートは、まぁ、別にいいや。
基本情報
【公開年】1976年
【監督】リチャード・ドナー
【キャスト】グレゴリー・ペック、リー・レミック、デビッド・ワーナー、ビリー・ホワイトロー、ハーヴェイ・スペンサー・スティーヴンス、パトリック・トラウトン、マーティン・ベンソン
【登場人物】ロバート・ソーン(外交官)、キャサリン(ロバートの妻)、キース・ジェニングス(カメラマン)、ベイロック(乳母)、ダミアン(ロバートの息子)、ブレナン(神父)、スピレット(神父)
【ポストクレジット】なし





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