
【苦手トリガーチェック】
虫:あり、体内侵入:なし、身体損壊:なし、子ども被害:なし、動物被害:なし
事実関係・疑問点の整理
あの世界で起きていたこと
かなり強めのミスリードや事実を曖昧に見せる演出などで難解になっているが、起きた事実をまとめると、とてもシンプルである。
●ジェームズ・コールの軌跡
主人公コールは、繰り返し見る夢や、「自分は病気ですべては妄想かも知れない」という自己不信によって混乱しているが、実際の流れは下記の通りである。
1996年:子どもの頃、空港で射殺事件の現場を目撃
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2035年:なんらかの事情で服役中、減刑のために「ボランティア」となる
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タイムトラベルで1996年に戻り、空港で射殺される
※これが、子どもコールが目撃した射殺事件
射殺事件はトラウマとなり、夢という形で断片的に思い出されるが、曖昧な記憶は蘇る度に少しずつ形を変える。たとえば、12モンキーズ=ジェフリーに辿り着いてからは、ウイルスを持って逃げる男の姿がジェフリーとして夢に出てくる。現在の思考が記憶に逆輸入された形だろう。
●12モンキーズ
未来では、『12モンキーズ』という集団がウイルスを撒いたと考えられていた。ちょうど、ウイルスの最初の兆候が確認されていた時期に、同じフィラデルフィアで動物実験に反対する派手な抗議活動をしていたからである。しかし、実態は学生運動の延長線にあるような集団で、ウイルスとは無関係だった。実際にウイルスを撒いた真犯人は、ゴインズ博士の助手のピータースだったのである。
本作におけるタイムトラベル
●大前提
本作でのタイムトラベルにおける絶対のルールは【過去は変えられない】ということだ。だから、タイムトラベルしたコールが過去で色々な人物と関わって、様々なイベントを起こしても、未来が変わって大人コールが消滅する、とかはないのである。
●コールが送られた目的
科学者たちがコールを過去に送り込んだのは、「過去に遡ってウイルス散布を防ぐため」ではなく「ウイルスサンプルを入手するため」であり、彼らの目標は「ウイルスサンプルを研究して未来の人類が地上へ戻れるようにする」ことである。繰り返しになるが、あの世界では【過去は変えられない】からだ。それを裏付けるように、コールが最後まで「未来を変える」ために奮闘しても、結果は変わらなかった。子どもの頃に目撃した通り自分は空港で死亡し、ピータースはウイルスの入った容器を開け、恐らくこのあと50億人は死亡するのである。
それでも、作中のコールの奮闘が全て無駄だったわけではない。ラストで、「救済保険業者」と名乗るジョーンズ博士が登場する。これは、ウイルスの純粋なサンプルが未来の科学者たちへ届けられようとしていることの示唆と取れる。であれば、コールの尊い犠牲は、未来の人類を救う確かな礎になったと言えるだろう。ラストシーンについては他の解釈も出来るが、最も希望を感じられるものとしてこの説を推したい。
●歯の「追跡機能」と回収
作中の描写から、考えられるのは下記のモデルである。
◆歯は位置情報を未来側に送信するビーコン
◆ボランティアが歯を抜くと信号が途絶える
◆歯を抜いたボランティアの位置情報は電話の逆探知などで検知
◆未来側はボランティアの行動や戻った年代をリアルタイムで把握していない
◆ボランティアは“特定のきっかけ”で未来に自動回収される
➡特定のきっかけ:生命の危機、極度の精神的な不安定さ
疑問点いろいろ
●「ボブ」と呼びかける声の正体は?
聞く限りは、1996年の路地裏にいたホームレスの声である。彼はコールと同じく未来の「ボランティア」で、あの時代に辿り着き、歯の追跡装置を抜いて、留まり続けていたと考えられる。ホームレスがいない場所でもコールが彼の声を聞いていたのは、タイムトラベルによる影響で時空を超えた繋がりが生じた可能性がある。が、断定はできない。彼の存在が作中で一番謎なところだ。演出としては、「やはり全てはコールの妄想なの?」と思わせる意図もあるだろう。
●ピータースの動機は?
カサンドラ異常心理について語っていたライリーの講演会後、『人類は今のままでは地球を滅ぼすことになる』と語るなど、ピータースの【人類に対する嫌悪感】は明らかだった。彼は12モンキーズのような表立った抗議活動などは行わず、静かに怒り、単独で行動を起こし、結局は目的を達成する。それは騒ぎまくって目立ちまくったジェフリーとの対比でもあるだろう。
●ライリーがコールを好きになる要素、ある?
作中、「ストックホルム症候群」への言及があったが、それに近い感情があった可能性はある。コールが本当に未来から来たのであれば、この先50億人が死亡する未来が確定していることとなる。その事実に直面したライリーは、圧倒的恐怖や絶望感を抱えたはずだが、それを唯一共有できる存在がコールだった。そのためより強く、心理的依存を感じ、愛情に転じていったと考えられる。
感想
公開当時に劇場で観て、大混乱したのを今も覚えている。ストーリーに追いつくだけで精一杯で、かなりの情報を取りこぼしていた。タイトルなどのミスリードもあるが、やはりブラピの怪演に引っ張られた部分が大きい。細部は忘れても、あの“目”は忘れられない。特殊コンタクトを使っていると知らずに、「あれ、ブラピの目ってこんなだっけ!?」、「目の演技ヤバ過ぎやろ!」と度肝を抜かれた人は多いはずだ。しかし、眼だけではない。手の動き、空間の使い方、独特な会話のテンポなど、あらゆる要素が、ジェフリーの異常さをこれでもかと表している。圧巻だ。
謎解き目的、或いは単に見返したい気分で、この作品は何度も繰り返し見たのだが、見れば見るほどシナリオの緻密さには唸るばかりである。重箱の隅つつきマンではあるが、この作品に関しては、ほぼ破綻がない。また音楽が印象的で、特にテーマとなっているタンゴは、世界観に非常にマッチしていると思う。OPでくるくる回る猿と共に、インパクト抜群だ。
基本情報
【公開年】1996年
【監督】テリー・ギリアム
【キャスト】ブルース・ウィリス、マデリーン・ストウ、ブラッド・ピット、クリストファー・プラマー、デヴィッド・モース、ジョン・セダ
【登場人物】ジェームズ・コール(囚人)、キャサリン・ライリー(精神科医)、ジェフリー・ゴインズ(精神病院患者)、リーランド・ゴインズ(博士/ジェフリーの父)、ピータース(博士/リーランドの助手)、ホセ(囚人)
【ポストクレジット】なし






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