【考察】映画『ジェーン・ドゥの解剖』ジェーン・ドゥの解剖|身元不明遺体の謎を暴けるのか

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:あり

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

遺体安置所兼火葬場を営むティルデン親子の元へ、身元不明女性(ジェーン・ドゥ)の遺体が運ばれてきた。死因を翌朝までに解明して欲しいと保安官から無茶ぶりされ、トミーはオースティンと共に早速解剖を始める、というストーリー。しかし、この遺体が発見されたのは謎の多い惨殺事件の現場で、何故ジェーン・ドゥの遺体だけがそんなに急を要するものとしてトミーの元へ運ばれてきたのか不明である。

●拷問の痕跡
トミーたちは解剖を進めた結果、ジェーン・ドゥは魔女裁判の拷問を受けていたと結論付けた。それだけで彼女が実際魔女だったのか、“魔女とされた”被害者だったのかは断定できない。とは言え、呪いを撒き散らして作中の惨劇を引き起こした以上、「ジェーン・ドゥ」としては魔女だったと言って差し支えない。

●魔女ジェーン・ドゥ
作中でのゴールは【完全な肉体で生き返ること】だったと考える。トミーがオースティンを助けるよう懇願した時には、それを聞き入れ、トミーの肉体と交換するかのように自身の肉体を再生させていたからだ。冒頭、地下から発見された時点でやたら綺麗な見た目だったが、ダグラス一家を殺害した際になんらかの力で肌を再生させた可能性がある。つまり、人間の“なにか”と引き換えに自身のパーツを再生したとすると、ある程度筋は通るだろう。

●どれが現実?
現実と幻覚が入り乱れる本作において、第三者視点でも描かれている“明らかに現実の出来事”を並べると、下記の流れになる。

ダグラス宅からジェーン・ドゥの遺体が発見され、ティルデン遺体安置所に運ばれる

トミーたちは遺体の解剖をはじめ、通常通り、録画とメモ、写真撮影を始める

スタンリー死亡

トミーとオースティンは幻覚を見始める

遺体に火を放つと室内に広がり、解剖写真などは燃え、ジェーン・ドゥの体は燃えずに残る

オースティンがトミーを殺害

オースティンが転落死

ラジオも幻聴=天気はずっと晴れで、大木が地下への入り口を塞いでいることもなかった。また、エマについては最後に運び出される遺体が2体(トミーとオースティン)のみであり、エマの車も停まっていなかったことから、エマの再訪自体幻覚だったと考えられる。これらの状況から、作中のジェーン・ドゥが持つ力は、【幻覚を見せる力】と【人間の肉体と引き換えに自分の体を修復する力】の2つと見てよさそうである。

「最後に登場した黒人警官が黒幕/サポート役」説には否定的である。運転中なので電話端末こそ持っていないが、耳にイヤホンをはめていたし、誰かと通話しているだけに思える。Baby, listen(ねぇ、聞いて)という語り口から、彼女や奥さん辺りに電話しているだけではないだろうか。

その後、ラジオがヘブライ書4章の読み上げから例の歌へパッと切り替わるので、単純に「本人は電話に夢中で全く気付いていないけど彼が行く先にもジェーン・ドゥの魔の手が迫ってるよ!」ということを示唆して終わったのだと受け止めた。

夜の死体安置所で解剖という状況の怖さと、異様に美しい死体の謎解きが融合した個性派ホラーで、引き込まれるものがあった。ルイスの遺体のベルはどう見ても伏線!と思える部分で、逆にそれがどんな風に展開するのかワクワク感もあった。解剖の知識はゼロだが、遺体にメスを入れて臓器を一つ一つ確認していく様は実にリアルに感じられて、人体破壊ホラーともまた違うちょっとした心寒さがあった。だからこそ、徐々にジャンプスケアが増えて、よくあるお化け屋敷ホラーになってしまったのが残念だった。

それでも、他にはないシチュエーションやインパクトのあるジェーン・ドゥの遺体のビジュアルも手伝って、一度見たら忘れない作品にはなっていた。ジェーン・ドゥって結局なんだったの?という謎を残した終わり方も良いが、あそこまで手の込んだ拷問をされて死んでいった女性の生前の様子は、やはり気になる。

ラストの足がピクッ!から、次に運ばれる先のコモンウェルス大学においても似たような惨劇が起こることは予想に難くないが、解剖します➡幻覚見せます➡解剖担当者死にます、の繰り返しではインパクトに欠ける。であればむしろ、ジェーン・ドゥのリアル魔女時代を描いた前日譚の方が興味をそそるだろう。

基本情報

【公開年】2016年
【監督】アンドレ・ウーヴレダル
【キャスト】エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド、マイケル・マケルハットン、オルウェン・キャサリン・ケリー
【登場人物】オースティン・ティルデン(医療技術者)、トミー・ティルデン(検死官/オースティンの父)、エマ(オースティンの彼女)、バーク(保安官)、ジェーン・ドゥ(謎の死体)
ポストクレジットなし

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