
ジャンル:ホラー、アクション
制作:ジョン・デイヴィス、ウィック・ゴッドフレイ
監督:コリン・ストラウス、グレッグ・ストラウス
キャスト:スティーヴン・パスクール(ダラス・ハワード:主人公/窃盗常習犯)、レイコ・エイルスワース(ケリー・オブライエン:アメリカ陸軍兵士)、ジョン・オーティス(エディ・モラレス:保安官)、ジョニー・ルイス(リッキー・ハワード:高校生/ダラスの弟)、クリステン・ヘイガー(ジェシー・サリンジャー:高校生)、デヴィッド・パートコー(デール:高校生/ジェシーの彼氏)
超ざっくりあらすじ
スカープレデターの腹を突き破って生まれた新種プレデリアンを乗せたまま、宇宙船は墜落した。そこから逃げ出したエイリアンたちを駆除し、全ての証拠を抹消するためにやってきたのは、一体のプレデター、ザ・クリーナー。地上で繰り広げられるエイリアンズとプレデターの激しい戦いに、町の人間も巻き込まれていく。
ポストクレジット有無
なし
好き度
60/100(好き)

ここを【見所】とする
SFアクション/ホラー映画界を代表する二大モンスターが、街中で大暴れする様子が描かれている。
今回登場したウルフプレデターはザ・クリーナーとも呼ばれる掃除屋で、地球上からエイリアンやプレデリアンの痕跡を抹消していくのがその仕事である。そのため、過去作で人間を狩りに来た時のように一人のターゲットを決めてじっくり観察しジワジワ攻めていくという展開ではない。墜落した宇宙船から外に出たエイリアンたちは本能のままに人間たちを襲っていく、ウルフプレデターはその後を追って地道にエイリアンを狩っていく、というのが基本のストーリーだ。その過程でウルフプレデターが人間を殺すこともあるのだが、基本的に今回のメインターゲットはエイリアンズであり、プレデターシリーズでお馴染みとなった「一番強い人間とのタイマンバトル」は存在しない。その代わりに、新種プレデリアンとプレデターとの激しい戦闘シーンがメインディッシュになっているのだ。
当然、そこに至るまでの、プレデターとエイリアンたちとの戦いも見逃せない。下水道ではウルフプレデターが、レーザートラップとショルダーキャノンによってエイリアンたちを次々倒していく。しかし、発電所ではエイリアンの返り討ちにあって腹部に大怪我をし、その後木の上で応急処置している姿がある。エイリアンたちは数の力も使ってプレデターを攻め立てるし、プレデターは定番武器に加え、鞭や2機のプラズマキャノンなども用いて対抗していく。そうして勝敗相半ばしながら、やがて終盤のプレデリアンVSウルフプレデターの熱い戦いへと繋がっていくのだ。
エイリアンシリーズでリプリーが必死になってエイリアンの地球上陸を阻んでいたのに、プレデターの失態により複数体が町に解き放たれる展開というのは微妙なスタートではあった。しかし、予期せぬ事態に凄腕の戦士が証拠隠滅のため飛んでくるという尻拭いには、プレデターらしさを感じた。プレデターの故郷と思しき場所がチラ映りしたのも興奮ポイントである。
疑問・つっこみ・考察 ごった煮
①人間ドラマ、全部いらなかった
本作は、野に放たれたエイリアンをウルフプレデターが始末するというストーリーである。そこに人間が巻き込まれるのは、墜落現場をアメリカの田舎町と設定してしまった以上、回避出来ない。しかし、作中で描かれる人間周りのドラマはハッキリ言って酷いもので、時間の無駄にすら感じられた。
まず、高校生たちのよく分からない恋愛模様がチープな上に見ていてイライラしかしない。ジェシーとリッキーの「いつも私を見てる」「時計を見てる」は、だからなんだ!と画面を引っぱたきたくなった。そしていかにも嫌な奴枠で描かれるデールは勿論だが、他の登場人物も、いまいち感情移入しにくい。ケリーは、エイリアンシリーズで言うところのリプリー的存在にしたかったのかも知れないが、娘への手土産に暗視スコープを渡すなど出だしからちょっとズレているし、その後それなりに働いてはいるはずだが、空気のように印象が薄い。エディは警官という肩書の主要メンバーで最も頼りになる存在かと思いきや、簡単に軍に騙されて、後半は全くの役立たずである。そして「窃盗常習犯で血の気の多いバカ」みたいな雰囲気で登場したダラスが、何故か有事の際にはずっとキレッキレで、銃器の扱いも軍人並みに長けていて、戦車でも当たり前のように銃座に行くし、周囲に的確に指示を出し場を仕切って、結果生還に導く。だが、あまりにも話が薄すぎるので、いや、お前、ただの盗人じゃないのかよ、何者だよ(ドン引き)としかならない。
実際のアメリカ軍もきっと、得体の知れない何かが小さい町を襲ったとなったなら、住人の救出よりも敵の殲滅を選ぶだろうし、その選択はモンスター映画の既定路線とも思える。それでも、警官と大佐のやり取りをちょろっと挟んだだけで無理やりねじ込んだ核爆弾の唐突さは否めない。アメリカ軍ならもっと色んな戦略を取れよという気持ちもあるし、核爆弾作戦にしても、町民のために爆弾投下をやめるべきか、国民へのリスクを考えて投下すべきか、といった葛藤さえほぼ皆無で軽く感じた。それに加えて、軍は広場に囮となる町民を集めてエイリアンが群がったところで爆弾を落とそうと企んでいるわけだが、その策略を察したケリーに対してジェシーが「政府は人々に嘘を吐かない」などと言うのが見ているだけでストレスになる。ジェシー個人の馬鹿さを強調したいのか、高校生なんてこんなものと言いたいのかは分からないが、こんなくだらないセリフを言わせる尺があるなら、もっとプレデター見せてくださいよの心境になったことは確かだ。
②初登場、プレデリアン
プレデリアンはクイーンエイリアンに次ぐ実に厄介な相手である。前作、AVPにおいてクイーンとの戦闘の末に命を落とし、仲間の手によって厳かに宇宙船へと運ばれたスカープレデター。そのスカーの腹をぶち破って出てきた存在が、新種エイリアンのプレデリアンだ。プレデターとエイリアンを足して二で割った名称で、外見も、胴体はプレデター、頭部はエイリアンだがドレッドヘアーもあり、尻尾もインナーマウスもあるが顎は完全にプレデターという具合に、両者の特徴が半々くらいで継承されている。
クイーンエイリアンに次いで厄介とする理由は、1つにその繁殖能力がある。プレデリアンは、自身で卵を産むのではなく、人間の妊婦に直接卵を挿入して一人の妊婦から複数のチェストバスターを産ませることが可能だ。しかも産卵中のクイーンエイリアンはその場を動くことが出来ないが、プレデリアンは一度挿入作業(言い方)を終えてしまえば隠れるなり戦うなり出来るので、クイーンよりも身軽に繁殖活動が出来る。
また厄介な点としては、単純に個体の強さが段違いである。序盤で、下水道からエイリアンたちの後を追って地上に出るのだが、簡単に地面をぶち破って表に出ている。その後、プレデリアンを追うウルフプレデターは道路を粉砕するために道具を使っている描写(ガントレットでパワーを増幅している様子)があるので、それだけでも筋力が段違いであると伺える。最後のウルフとのタイマン勝負でも、単純な押し合いでは終始優勢を保っていた。しかし、やはり生まれたばかりの経験不足感は否めず、押さえつけてインナーマウスで突くだけの単純攻撃が続くなど、戦い方は雑であった。知能も他の個体より高そうで、がむしゃらに闘いを挑むというよりは相手や状況をよく観察するような仕草も見受けられたが、総じてどうにも好感を持てないのはやはり赤ちゃんや妊婦さんをたくさん襲ったからだろうか。あえて妊婦に卵を産み付けたのは、胎児を栄養源とするためだったのか、妊婦側に孵化に役立つ要素があったのか、その辺の詳細は分からないが、あの場面を見てプレデリアンに嫌悪感を抱いた人も多いだろう。その点、プレデターの戦いに関するルール(戦うに値しない奴は相手にしない)はうまく作用しているのだと改めて思う。
③今回のプレデター
本作のメインプレデターとなる、ウルフプレデターは証拠隠滅のために地球へとやってきた掃除人だ。こういった役割で地球を訪れるプレデターが描かれるのは本作がシリーズ初となる。そして今のところ他にない。
このウルフプレデター、通称、ザ・クリーナーは、見た目からもその歴戦ぶりが分かるつよつよプレデターであり、聞かれていないが私が好きなプレデターナンバーワンである。多分、世界のプレデター人気ランキングもナンバーワンだ。多分。その一番の理由としては、ウルフの高い戦闘力が挙げられる。よく見ると左目を負傷していて恐らく失明状態にあり、また左の顔面そのものが爛れたように見えることから、過去に激しい戦いで左顔面を火傷のような怪我で損傷したことが分かる。そうして激戦を潜り抜けてきたウルフプレデターは、単身でエイリアンの群れに飛び込んでも余裕で倒しまくる。ラスト、プレデリアンというプレデターたちにとっても恐らく未知の存在と一対一で戦うようになるが、膂力では押されているだろう局面でも冷静に対応し、インナーマウスを引きちぎった時には、画面のこちらで思わず拍手をしてしまった。ノストロモ号にウルフがいたらな~みたいなことを思っては、そしたら乗員も殺されるだけかと考えを打ち消すぐらいには、エイリアン退治の際に心強い存在だ。
また、地味なシーンではあるが、自分で応急手当をする際に痛みで声を上げそうになるも必死に堪える姿は、貫禄というか、修羅場を抜けてきたプレデター感があってとても良かった。たとえばシティハンタープレデターは、治療薬(?)を塗っている最中、めちゃくちゃ咆哮していた。それはもう、凄い大声で、結構な時間叫んでいた。それと比較すると、声を押し殺して耐えるウルフにはとても大人な印象を受ける。更に、今回は証拠隠滅ミッションのために地球へ来たのだが、森で警官のレイに見つかってしまい、やむなく殺した際には、丁寧に生皮を剥いで木から吊るす基本の作法で葬っていた。どんなに締め切りに追われて忙しい状況でも、一つ一つのタスクはきっちりこなすシゴデキのベテラン掃除人。それがウルフプレデターなのだ。
雑感
①「暗い」を辞書で引いたらAVP2って書いてある
もしこの映画を観て「え?全然暗くなかったよ?」という人がいたら、是非教えて欲しい。初めて見た時には、どんなに画面の輝度を上げても真っ暗な中で何かが何かしている、というだけのシーンが多くて驚いたものだ。しかも、それが肝心のエイリアンとプレデターの戦闘シーンだったりするので、本当に勿体なかった。予算の関係なのか、技術の問題なのか知らないが、制作陣は完成した映像を見てどうしてこれで納得できたのか、煽りではなく純粋な質問として聞いてみたい。
この作品の人間ドラマはびっくりする程不要だったと思っているし、それ以外にも評価されにくい点がいくつもあるのは理解できる。恐らく「好き度」も、プレデター好きの偏見が混ざっていなければ50/100を超えることはなかっただろう。だが、仮に、脚本が今のままだったとしても画面が明るくて何が起きているか観客に明確に伝わる映像に仕上がっていたのなら、それだけで印象は全然違ったかも知れない。ホラー映画の夜のシーンが見えにくい、というのは結構あるあるだが、それが、暗いことに意味があって且つ限定的に挿入されているシーンであれば見ている方のストレスは少ないだろうし、恐怖を増大させる有効手段にもなりえる。しかしアクション映画でもある本作において暗さのもたらす怖さは求められておらず、ただただ「暗いな」というだけで、とても残念だった。
②AVPというシリーズに求めるもの
私がAVPに求めるもの、それは当然モンスター同士の激しいバトルである。未来の人類を圧倒する完全生物エイリアン、現代の超スーパー戦闘集団を狩りまくってきたプレデター、その両者の争いはどんな戦い方の末、どんな決着を迎えるのか。それが見たいのは大前提だ。
だが、これまでの作品において両シリーズに共通して言えることは、主人公サイド=人間たちも魅力的で、なんとかこの人たちに勝って欲しい!と手に汗を握って応援したくなるようなキャラクターたちだったことである(たまに例外アリ)。オリジナルのプレデターを見て「ダッチが負けてもいいや」と思う人、元祖エイリアンを見て「リプリーも殺されればいいのに」と思う人は——絶対にいないとは言わないが、相当少ないはずである。私もプレデター大好きマンではあるが、初代プレデターの結末には大満足している。そう考えると、やはり本作は主人公側のキャラクター造形なり、ドラマが薄く、片手落ち感が否めない。
さて、本作ラストでは、プレデターのプラズマキャノンをウェイランド社が入手した場面があった。過去に情報漏洩しそうになったら自爆することで防いできたプレデターたちにとっては、史上最悪のヤバヤバ案件である。きっとエルダーが数名率いてすぐに取り返しに来るに違いない、そう、AVP3でね(本作公開からもうすぐ20年だけど)。



人気記事