【考察】映画『ハウスバウンド』|拘禁先の実家には、幽霊がいる?

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり(軽微)、子ども被害:なし、動物被害:なし

●物語の構成
心霊物を匂わせ、主人公宅に潜んだ危険人物の存在を疑わせ、しかし結末は“普通の人”の顔をしていたアイツが真犯人!という二重どんでん返し構造となっている。冒頭から結末を予測するのはまず無理だろう。

いろいろな伏線
細かな伏線は挙げればきりがないが、いくつかピックアップして確認していく。

◆食べ尽くされたミートローフ:外出から帰ったミリアムは、がっつり食い荒らされたミートローフを見つけカイリーを責めるが、カイリーは「全部は食べてない」と訴える➡うまく母娘がかみ合わないことの描写に見せかけ、実際は家に潜んだユージーンが食べていたという伏線だった

◆怪しい男、マッズ:帰宅したカイリーが何かを燃やしているマッズを目撃➡マッズがエリザベス殺しの犯人かも知れない!と疑う流れの下地となっている

◆カイリーとデニスの会話:「カウンセラーになったのはいつ?」「15年ほど前でその前に数年勉強した」というやり取り➡作中の”現在”が2013年なので、デニスの言う数年の勉強期間は1998年前後となりエリザベス事件の時期と一致(更生施設=sunshine groveは1996年に閉鎖)している

●エリザベスの幽霊?
怪奇現象をきっかけに調べた結果カイリーが辿り着いたのは、自宅がかつて更生施設だったこと、その施設で殺人事件があったこと、その事件の被害者がエリザベスという少女だったことの3点である。そしてカイリーたちは、家の不可解な事象は、エリザベスの霊が何かを伝えようとしているからではないかと推測した。しかし実際は、『可哀想なエリザベスの幽霊』などいなかったのである。

●怪奇現象の真犯人
終盤で、カイリーの家で起きていた事象は、長年カイリーの家に身を潜めていたユージーンのせいだったことが判明する。住民のミリアムたちが知らない隠しドア、隠し通路、隠し部屋が存在しており、そこでユージーンが悠々自適に隠居生活を送っていたのだ。とんだビックリハウスである。

●ユージーンという男
エイモスがマッズから聞いた話をまとめると下記の通り。

◆ユージーンはマッズの知り合いの女性が置き去りにした子ども
◆彼らに血の繋がりはない
◆会った時から、人の目も見ず、3語以下で話すような『変わり者』
◆幼い頃から機械の才能があり、壊れたら何でも直してくれた
◆小動物に危害を加えたお仕置きで閉じ込めていたが、3日後、行方不明になった
◆マッズの家にいた10年間で一度も外出していない

これだけ条件が揃えば、『電子機器を改造するなどして暮らしやすい環境に整えながら15年近く他人の家に隠れ住んでいた』、というトンチキネタバレも納得してしまう。(なんでカイリーの家にはあんな謎空間がたくさんあるんだ、という点は置いておくとして)

ユージーンの存在がすべてを否定できるのか
怪奇現象的に演出された中で、あれって幽霊じゃないと無理じゃない?と言う事柄はなかったのか、振り返ってみる。

①物音がする
②電気代が大幅に上下する
③ボロボロに色あせた白シーツのような何かがいた
④PCがショートする
⑤ミートローフが食べられていた
⑥屋内に人影があった
⑦勝手にPCがついた
⑧地下室でおもちゃが鳴った
⑨カイリーの足首を黒い手が掴んだ
⑩しゃべる熊のぬいぐるみが突如現れた
⑪タンスのドアや、タンスの下段が勝手に開いた
⑫停電した
⑬デニスが突如物干し竿で刺されて血まみれになった
⑭配管を通って上階から入れ歯が落とされた
⑮おもちゃの音で、通風孔のような穴に隠された宝箱に導かれた

列挙すると、多少の無理はあるにせよ、人間の仕業としても説明はつく。唯一、「⑪タンスのドアや、タンスの下段が勝手に開いた」に関しては幽霊ではない確証がなく、仮にユージーンだとして、少々遠回し過ぎて意図が伝わらなかった。しかし、さすがに⑪だけが霊の仕業ということは考えにくい。エイモスがボイスレコーダーを回し霊に呼びかけ、壮大なBGMと共にその録音を皆で確認したが霊の声は全く録音されていなかった、というシーンも、本作が幽霊とは無関係であることを示していると考えられる。結論として、やはりすべてはユージーンが原因と解釈していいだろう。

終盤の時系列は下記の流れとなっている。

①カイリーがデニスの入れ歯で犯人だと勘付き離席
②ミリアム、会話でデニスを引き留めようとするも失敗
③資料を発見したカイリーに、ミリアム合流
④1Fリビングに戻るとデニスとグレイソンがいなくなっている
⑤カイリーたち階段を上がり、2Fのトイレから出たデニスと鉢合わせ
⑥デニスが本性を表し、逃げるカイリーたち
⑦逃げた先の2Fシャワールームでグレイソンの死体を発見

つまり、デニスがグレイソンを殺したのは、②~③の時点と思われる。しかしその時点では、デニスは【カイリーは施設行きに前向き】且つ【自分の正体はバレていない】と思っているはずなので、警官を殺す動機が不明だ。可能性としては、おとぼけ警官の癖に勘が良く、「あれ?トイレ、2Fにもあるの?なんで知ってるの?」みたいな会話の流れで核心に迫ってしまったため殺された、あたりだろうか。いずれにしても、エリザベスを襲った時と同様、デニスの衝動性が引き起こした犯行だったと思われる。雑な退場でかわいそうなグレイソン。

くるくる変わっていく物語の方向性、ゆるくてシュールなコメディパート、そしてしっかりしたゴア表現のハーモニーが素晴らしい。加えて、どの登場人物も謎の魅力があった。嫌な奴?なんなら黒幕?みたいな登場の仕方をしたミリアムはただのマイペースなお喋り大好きおばさん。エイモスは真面目タイプの保護観察官兼素人心霊研究家で、全力で空回り続けるとてつもない善人。ユージーンは変態的だが可愛げがある。そして主人公カイリーは、ちょっとロックなクール美人で、考えるより先に殴るタイプ。敵意ある幽霊が出たら顔を殴ると宣言するタイプ。突然騒ぎ出したぬいぐるみは即座に殴ってタンスで挟んで痛めつけてから暖炉にぶち込むタイプ。ドアが不穏な雰囲気でギィィと勝手に開いたら怖がる前にさっさと取り外すタイプ。最高である。

実際はお化け不在の映画なので、人間同士の戦いでいろいろ痛いことが起きる。殴る、蹴る、顔面を卸す、ドアの穴からスプレーxライターで簡易火炎放射攻撃する、ふくらはぎを刺す、瓦をぶつける、屋根から転落など。絶妙に痛さを想像できる範疇なのが、また良い。締めくくりは、喉からグサッとフォークを刺して脳天爆発。そしてカイリーがちょっと食べちゃった能ミソをペッてする。最高である。

結局のところ、お転婆カイリーが個性豊かな家族や仲間との絆を深めて、やさぐれキャラから真の意味で更生するという心温まるストーリーが、この映画の根幹なんだろう。最後数分のシークエンスでは当たり前に義父も居て、しめくくりのセリフが「ユージーン!」なのは、端的に家族の絆を感じられた。最高である。

基本情報

【公開年】2014年
【監督】ジェラルド・ジョンストン
【キャスト】モーガナ・オレイリー、リマ・テ・ウィアタ、グレン=ポール・ワル、キャメロン・ローズ
【登場人物】カイリー・バックネル、ミリアム・バックネル(カイリーの母)、エイモス(保護観察官)、デニス(カウンセラー)
ポストクレジットなし

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