
ジャンル:ホラー、ミステリー
監督:パスカル・ロジェ
キャスト:クリスタル・リード、アナスタシア・フィリップス、ミレーヌ・ファルメール、エミリア・ジョーンズ、テイラー・ヒックソン
登場人物:エリザベス・ケラー(作家)、ヴェラ(ベスの双子の姉)、ポリーン(双子の母親)
ポストクレジット:なし
ポテッチの好き度:30/100(好きではない)
超ざっくりあらすじ
ラブクラフトに憧れ、自身でもホラー小説を書いているベスは、双子の姉ヴェラ、母ポリーンとともに、かつて親戚が暮らしていたという古い屋敷へ越してきた。親戚の趣味で集められたという人形やアンティーク品が大量に並ぶ不気味なその家で、引っ越し早々、ベスたちは2人組の暴漢に襲われる。

事実関係・疑問・つっこみ など
事件の整理
●妄想どんでん返し
本作は「精神を病んだ人 x 実際の幽霊屋敷」モノかと思わせておいて、未来パートはすべて主人公の妄想(現実逃避)だった!というどんでん返しモノである。妄想と現実が入り混じる構成となっているが、実際に起きたことを整理すると下記の通り。
ベス、ヴェラ、ポリーンの3人は引っ越し後まもなく、2人組の暴漢に侵入される
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母は刺され、首を切り裂かれ殺される
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ヴェラへの暴行が続き、ベスはその間現実逃避している
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ヴェラが限界をむかえ、ベスが暴行の対象となる
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ようやく現実を受け入れるベス
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ベスが乱暴されそうになり抵抗、隙をついて二人で脱出
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運よく警官と出会うも、追いついた暴漢によって警官射殺
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再び家へ戻されて二人とも絞殺されそうになる
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一瞬ベスは現実逃避するもののすぐに覚醒し反撃
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別の警官が到着して暴漢を射殺、二人は救出される
放置されたポリーンの死体の腐敗や、二人の成長が進んでいないことから見ても、本編中の経過時間は長くて数日間と思われる。
●妄想の中身
ベスの妄想は16年後、作家として成功している【理想の世界】を描いていた。しかし、そこでもヴェラは“過去に囚われ精神疾患を患って”おり、唯一救われていなかった。無意識に現実でのヴェラの姿が反映されていたのだろう。他にも、現実要素は妄想に作用していた。
<妄想>
①ラジオ、ベスにインタビューするインタビュワー、黒犬、ピエロコスチュームの息子と夫
②電話で助けを求めるヴェラの声、鏡に描かれたHELP MEの文字
③ヴェラが見えない何かに襲われる
<現実>
①室内にあった絵画やポスター
②実際にベスに呼びかけるヴェラの声、ヴェラの書いた文字
③暴漢によって襲われている=都合よく暴漢だけが見えていない
冒頭の少年
最初のシークエンスで登場した少年の正体が最後まで不明だった。冒頭以外登場することはなく、本編中あの少年について語られることもなかった。【ヴェラは“見えない物”が見えてしまうタイプ】というミスリードのための1コマかも知れない。しかし、どこにも正解はない。
もし強引にこじつけて別の可能性を考えるとすれば、ベスが音読していた自作小説の少年パトリックを表現している、あたりだろうか。ヴェラにも“妄想力”があり、ベスの話を無意識に映像化して見ていた、という描写だったら、それはそれで姉妹の絆を感じていい。
終盤の強引さ
●サプライズはよかったものの
ベスが現実に引き戻される展開はとても巧みで、妄想世界にあった違和感が解消される爽快感さえあった。しかし、実は妄想でした!のネタばらし以降は、“描きたい展開”ありきで、腑に落ちないところも多い。いくつか挙げると下記の通り。
・警官との遭遇
二人が家を脱出した時、周囲は真っ暗だった。一晩中走り続け、警官に会った時には完全に太陽が昇り切っていた。それだけ長い時間逃げ回っていたのに、突然あの時あの場所で女装男に見つかるというのは、少々犯人側に都合が良すぎる。
・わざわざ連れ帰る
警官射殺後、あえて二人をトラックに乗せ、家に連れ帰り、各々首を絞める必要性が分からない。【暴行した家の中で殺す】みたいなマイルールでもあったのだろうか。私が犯人の立場なら、警官とコンタクトされた以上、少女二人もその場で射殺してさっさと逃げることを考えるだろう。
●犯人の無計画さ
【手錠もないのに自力での逃亡を企てない】とか【大男を気絶させた時に殺しておかない】とか【警官に「近寄るな」と言い出す】とか、姉妹の行動にツッコミどころはある。しかし、「若い子が恐怖体験をしたらそこまで冷静でいられないよな」と思えば納得出来る。しかし、犯人はこれまで最低でも5件“家族キラー”として犯罪を成功させている設定だ。もう少し計画的、理性的な行動を取ってもらわないと、説得力に欠ける。
感想
暴漢2人は、実に不快指数が高かった。たとえば大男が足を持って持ち上げ、ベスたちの股間を嗅ぐ行為。しかも、初潮を迎えたベスの匂いは嫌がり、投げ捨てる。変態がやりそうではあるが、映像化されると嫌悪感が半端ない。犯人たちの風貌は似ていないが、あの2人は兄弟だった可能性もある。余程の理由が無ければ、わざわざ知能に問題を抱える大男と組んで犯罪を繰り返すと思えないのだ。もし兄弟なら、女装男は相当の弟思いだが、愛し方が歪んでいる。
最後まで犯人の過去や動機は明かされず、“暴力を描くための暴力的な犯人“としか思えなかった。下手にカリスマ性を持たせるよりはマシだったのかも知れないが、醜さのあまり視聴中ずっと眉間に皺が寄ってしまった。別に怖くもグロくもないのにとんでもなく不快という、異質なホラーである。
ヴェラは冒頭、小生意気で反抗的な少女かのように描かれていた。しかし、蓋を開ければ芯の強い妹想いの女の子だった。目の前で母親を殺され、妹は現実逃避し会話も出来ず、自分は現在進行形で暴力を振るわれ続ける。それでも諦めずに妹を呼び続け、”戻って“きた妹に「大嫌い」と言われても優しく抱きしめ受け止める。並大抵の精神力ではないと思った。
日頃からベスの作品や振る舞いを全肯定してきた母とは対照的に、常に現実を見据えるよう促し続けたヴェラ。ベスが、母の亡霊と決別しヴェラと二人で生き残ったのは、【これからは二人で支え合い厳しい現実にも向き合い続ける】ことを暗示しているように見えた。





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