【考察】映画『エイリアン:コヴェナント』|プロメテウスが残したものは狂気のアンドロイド

前作から引き続き『創造主と創造物』というテーマの元にデヴィッドの自由研究結果を見せられる本作。1979年エイリアンに繋がるようで繋がらない物語を、アンドロイドたちに焦点を当てながら考察していく。

●不測の事態と計画変更
植民船である大型宇宙船コヴェナント号は、突如発生したニュートリノ嵐に襲われた。被害は広範で電気系統も損傷、船長のジェイコブはポッド内で焼死し、入植者も一部死亡した。その後、修復作業中に偶然キャッチした謎の電波の発信元を辿ると、近場の惑星であることが判明するのだが、『あれ、この惑星めっちゃ地球っぽくない?行っちゃう~!?』というノリで、オリガエ6から行先を変えさっさと向かう。当初は反対した副長のダニエルズも調査隊として惑星に降り立つのだが、全員登山レベルの軽装でヘルメットすらなく、とんだ無鉄砲揃いである。と言うか、ウォルターだけ先行させるという選択肢が最善だった気がしてならない。

●やっぱり惨事が起こる
探索中、レドワードとハレットが黒い粒子を通じて“感染”し、2体のエイリアンが生まれた。それによりカリン、ファリス、アンカーが死亡し、着陸船ランダーも爆発したのだが、その展開も検疫や警備体制の甘さから来ていた。ランダー爆発後、調査隊はデヴィッドの閃光弾でその場を乗り切ると、研究施設まで着いて行くことになった。案の定、そこでも彼らはさしたる警戒感もなく過ごし、エイリアンだけでなく、マッドサイエンティスト・デヴィッドの餌食となる。ローゼンタールがネオモーフに斬首され、クリスがフェイスハガーに襲われ、エイリアン・プロトモーフを誕生させつつ死亡、ロープが別のフェイスハガーに襲われ、コールがプロトモーフによって殺されたのだ。

●脱出してハッピーエンド?
ようやく事の真相を知ったダニエルズたちは、タイミングよく到着した運搬艇に乗り込み脱出する。オマケでプロトモーフも乗ってきたが、ダニエルズの勇気とテネシーの神業というコンビネーションで排除に成功。しかし、ロープが既に寄生されており、船内でエイリアン誕生→なぜかこのタイミングでシャワーをしながらイチャついていたリックスとアップワースが殺害される。それでも最終的には、ロープ産エイリアンを宇宙空間に放り出し、やっと冷凍睡眠できるね、めでたしめでたし……と思いきや、目の前のアンドロイドはウォルターに成りすましたデヴィッドでしたー!という、なかなか分かりやすいサプライズを持って、本作は終了する。

●デヴィッド
前作でエンジニアに頭をもがれたものの、かろうじて生きていたデヴィッドは、ショウ博士の助けもあって完全に修復されていた。そして見事に悪の科学者へと変貌し、惑星にいたエンジニアっぽい種族を黒い液体で滅ぼすと、彼らの施設で生体実験を繰り返していたらしい。なお、エンジニアっぽい種族の正体は明言されておらず、前作で登場したエンジニアの同族なのか、エンジニアの創作物の一種なのかは不明。仮に同族であっても、立場や能力はだいぶ差があるように見える。

●ウォルター
本人曰く『どの機種よりも忠実で効率的』な新型アンドロイド。デヴィッドがあまりにも人間っぽ過ぎて人々を不安にしたことから、後継機種は単純化されたらしい。ウォルタークラスの高性能アンドロイドが量産されているかまでは明言されなかったが、複数いる可能性は高い。デヴィッドにはない自己修復能力を持ち、多少の外傷は即座に再生する。ちょっとした損傷なら、機能自体もバックアップから復元可能。

●キスの意味
突然同じ顔がキスをする衝撃、からの、ウォルターのオモシロ機能停止モーションで、無駄にインパクトのあるシークエンスである。あのキスは、①自分大好きデヴィッドが己と同じ顔・似た存在に愛着を持った、②マシンなお前はキスとか愛とか知らんやろ?という挑発、③破壊前の歪んだ愛情表現、などいろいろな意味が考えられるが、とりあえずデヴィッドの異常性が端的に表れていた。

●超人技でなりすまし
どんでん返し的に明かされるデヴィッドのなりすましだが、一体『入れ替わり』はいつ実行されたのか。チャンスは当然タイマンバトル後なのだが、後継機であるウォルターを完全に制圧し、自身の左腕を破壊してから合流するほどの時間的余裕があったかは、少々疑問である。ちなみに、ダニエルズはウォルターの自己修復能力を知らない可能性が高い。左手はともかく、あの程度の顔の傷に、なんの疑問も持たずにホチキスを止めていたからだ。また、髪型を真似たあたりでエイリアン胚も飲み込んで、着々と入れ替わりの準備をしていたと推測する。それくらいの周到さがあっても、デヴィッドならおかしくない。

●デヴィッドの創造物
基本的に、本作で登場するのは黒い液体を利用してデヴィッドが生み出したエイリアンである。黒い液体は、遺伝子を破壊し、新たな生物に再構築することが出来る。デヴィッドは、死んだエンジニアたち、原生生物、ショウ博士の遺体などを利用して、様々な特徴を持つ生命体を“創造”していた。組み合わせなどを検証し、黒い液体でそれらを融合させ、“エイリアンの卵”を生成したと思われる。そして次の実験段階として“母体”となる人間が必要だったため、呼び寄せるべく、カントリーロード電波を飛ばしていた。

●ネオモーフ
黒い球体から放出される、まっく〇く〇すけ的な黒い粒子が、人間に寄生、体内で成長した新生物。背中をぶち破って出てきたり、口から吐き出すように出てきたりする。従来のエイリアンと異なり、全体的に白く、質感は柔らかく、後頭部の先端が尖っているのが特徴。話しかけたデヴィッドに反応したように見えるが、意思疎通出来ているようには見えなかった。生まれた直後から凶暴性が高く、襲った人間を食べていた。

●プロトモーフ
デヴィッドが生み出した元祖オヴォモーフ(エイリアンの卵)から出てきたフェイスハガーが人間に寄生することで誕生したエイリアン。1体目はクリス、2体目はロープから生まれた。クリス由来のエイリアンはコールを食い殺し、退避するダニエルズたちを追って運搬艇に乗ったが、クレーンで掴まれ撃たれて投下された。ロープ由来のエイリアンは、リックスとアップワース殺害後、テラフォーミングベイまで誘導されると、ドガンドガンして宇宙空間に放り出された。生きたまま宇宙へ放流パターンは過去作を彷彿とさせるものである。ちなみに、ロープにフェイスハガーが付着していたのはほんの数秒で、産み付ける速さ的にはシリーズ中で断トツである。

プロメテウスの続編ということで、前作で投げっぱなしだった謎が回収されるかと期待を持って視聴した。しかしエイリアンシリーズに繋がる部分は、前作以上のことはほぼ描かれず、より一層【デヴィッドの物語】という側面が強く出ていた。

創造主とは、人類の起源とは、創造物の進化の先にあるものは、というテーマ性があまりにも強く、デヴィッドが計画を着実に実現していくことで、エイリアンの存在自体が『凡庸な創造物』に貶められてしまったように感じる。一方で、時系列で考えると、デヴィッド作のエイリアンたち自体は初代エイリアンに繋がらないはずである。コヴェナント号事件2104年からノストロモ号事件までは、20年も経っておらず、『胸部に穴の開いたスペースジョッキーの化石』との整合性が取れなくなるからである。その意味では初代エイリアンの神秘性は棄損されていないのかも知れない。

一作のSF映画として見ても、ポンコツだらけのクルーが巻き起こすドタバタ劇でハマり切れなかったが、ウォルター単体では好きなキャラクターだった。続編で彼が復活してデヴィッドの野望を打ち砕いてくれるとスカッとするところだが、そもそも続編自体が幻となりそうなので、夢のまた夢……

基本情報

【公開年】2017年
【監督】リドリー・スコット
【キャスト】マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ、カルメン・イジョゴ、ダニー・マクブライド、エイミー・サイメッツ、ジャシー・スモレット、キャリー・ヘルナンデス、デミアン・ビチル、テス・ハウブリック
【登場人物】デヴィッド/ウォルター(アンドロイド)、ジャネット・ダニエルズ(コヴェナント副官)、クリス(コヴェナント新船長/カリンの夫)、カリン(生物学者)、テネシー(チーフパイロット/マギーの夫)、マギー・ファリス(パイロット)、リックス(操縦士/アップワースの夫)、アップワース(通信士官)、ロープ(軍曹)、ローゼンタール(警備担当)
ポストクレジットなし

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