【考察】映画『ロスト・ボディ』|結末の読めない“遺体行方不明”事件の犯人とは

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり(軽微)、子ども被害:なし、動物被害:なし

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

本作は、遺体安置所から消えた女性の遺体を巡り、どうやって消えた、誰がやった、何故なのか、という謎解きがベースとなっている。しかし中盤の演出で、もしやこれは死者の呪いかと思わせたり、怪奇系ではないと方向性が定まってきても『犯人』の可能性が二転三転し、最後の最後までどんでん返しが続くのだ。

●真犯人
マイカの幽霊か?アレックスの犯行か?マイカの復讐ゲームか?と、次々容疑者が変わっていくが、実際にはハイメ・ペニャ警部が主犯、共犯者が娘のエヴァ/カルラだった。

●動機
動機は妻が『殺された』ことの復讐である。10年前、家族を乗せてハイメが運転する車に、アレックスの運転する車が横から激突した。しかしアレックスは同乗していたマイカとともに保身のため救護もせずに逃亡。そのため、事故直後まだ息のあったハイメの妻は死亡したのである。

●計画
事故の際にエヴァが偶然見ていた車のナンバーだけを頼りに、アレックスとマイカに辿り着いたハイメは、なかなか大胆な計画を企てた。

エヴァが学生のフリをして教師アレックスに近づく

アレックスとエヴァが不倫関係になる

エヴァが別れをチラつかせアレックスを誘導する

アレックスの手でマイカを殺害させる

ハイメがマイカの死体を運び出す

エヴァがアレックスにTH-16を盛る

エヴァがアレックスの車に証拠の品を隠す

エヴァの痕跡を消す

アレックスが『長時間の拘束によるストレス』で死亡

●計画との乖離
下記の点はハイメにとっても予想外な出来事だった可能性が高い。

◆夜警のアンヘル・トレスが交通事故に遭う➔ハイメの計画としては、『警備員を驚かして追い払う』ぐらいの予定だったと思われる。警備員の怪我や殺害を計画に組み込む必要性はない上、完璧なタイミングの事故を装うのは難易度もリスクも跳ね上がるからだ。

◆アレックスが招待状を食う➔招待状とその裏のメモは、アレックスを動揺させるのが目的だった。アレックスがその紙をどう処分するかまでは、計画になかっただろう。結果として、想像すると吐きたくなるレベルの悪あがきを視聴者に披露していたが、そもそもハイメはトイレに浸した上で食った事実まで知らないはずだ。

◆探偵の存在➔当初の計画にはなかった存在と明言している。急遽見つけたにもかかわらず、大胆に計画に組み込み、アレックスを追い詰めるのに役立てていた。

かなり綿密に練られたシナリオという感じはあるが、気になるところもある。

●アレックスが離婚していたら
ハイメとエヴァがうまく誘導していたものの、彼が離婚に踏み切っていた可能性もゼロではない。恐らくその場合には、また別のプランに変更してアレックスたちを追い詰めていたのだろう。離婚イコール復讐失敗、ではなかったと思われる。

●エヴァのメンタルどうなってる
自分の母親を殺した復讐相手と何カ月も交際を続け、肉体関係まで持ち、最終的には毒を盛る……それをやりきったエヴァの精神的負担は計り知れない。あまりにも背負わせ過ぎに見えるし、それをやり遂げるエヴァの精神構造にびっくりするが、それほど彼女の中で喪失感が大きく、復讐という目標自体が生きる支えになっていたとも考えられる。その意味では、作中というより、今後の彼女のメンタルの方が心配である。

●TH-16を盛るタイミング、完璧すぎ
TH-16は摂取後8時間で効果が出る=死亡する。つまり、マイカの遺体が消えて、アレックスが警察署に呼び出されて、朝まで尋問を受けて……という一連の展開を、8時間で収める必要があった。しかし仮に途中の時点で心臓が止まっていたとしても、TH-16の特性を踏まえて『ストレス』や『ショック』などで起きた心臓発作、ということで乗り切れる算段だったのだろう。

まったくサスペンス的面白さを期待せずに見始めたので、完全に予想と違う流れが来て驚いたし、掘り出し物感があった。最後に明かされる諸々が、説得力があるようで、勢いで誤魔化されているような、なかなか絶妙なところではあったが、ちょっと強引なところも含めて発想そのものが面白かった。さすがに、ハイメがネタ晴らしを完全に話し終えた時点で暗転、というのは出来過ぎ感があったが、スカッと系ではあるので許容できる。

一方で、キャラクターの心情を考えると実は複雑なところもある。結局、作中で一番手を汚してしまったのはエヴァだし、彼女は青春時代も復讐に心を囚われて過ごしていたことになる。ハイメも妻を失った悲しみや怒りはあったと思うが、せめて、娘には別の生き方を提示してあげて欲しかったとも思う。それにしても、マイカはかなりの煽り厨というか、モラハラ気質みたいなのが前面に出ていたので、全く同情の余地ナシである。

基本情報

【公開年】2012年(日本未公開)
【監督】オリオル・パウロ
【キャスト】ホセ・コロナド、ウーゴ・シルバ、ベレン・ルエダ、アウラ・ガリード
【登場人物】ハイメ・ペニャ(警部)、アレックス(製薬会社社長)、マイカ(アレックスの妻)、カルラ(大学生/アレックスの愛人)
ポストクレジットなし

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