【考察】映画『死霊のはらわた(2013)』|決して口にしてはいけない呪文を唱えた結果

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:あり

●かつての悲劇
冒頭、過去の出来事として一人の少女が『浄化』される。悪魔に憑かれて母親を殺してしまったらしい少女は、火あぶりにされ、父親に射殺されたのだ。本作の舞台は、その少女が死んだ小屋である。

●危機感ゼロの若者たち
主人公一行はミアの断薬のために山小屋へとやってきたが、序盤で床下に動物の死骸を発見する。一般的な感覚では、大量の死骸、しかも人為的に殺されたものを発見した小屋で、引きこもり生活を継続するのは難しい。しかし、彼らは違う。うわ、なにこれやば!くっさ!くらいのテンションで死骸を外に出し、荒治療を続けるのだ。そして、エリックの不始末へと繋がっていく。

●木の餌食
エリックは、読むなよ!読むなよ!絶対に読むなよ!という『死者の書』のフリに対し、一字一句余すことなく丁寧に呪文を読み上げてみせた。それによって悪霊たちが召喚される。そして断薬の禁断症状による錯乱状態で外に出たミアが、木を介して悪霊に取り憑かれる展開となった。

●『死者の書』
本シリーズのキーアイテムである、悪霊召喚呪文などが書かれた本。本作では、『ナチュロンデモント』という名称で、以下の事が明記されていた。

◆呪文を唱えると“彼”への扉が開く
◆呪文は『クンダ アストラダ モントセ カンダ』
◆悪の存在が魂を5つ食うことで、地獄から“忌まわしきもの”が蘇る
◆取りつかれた者は特定の儀式的行動を取る:熱湯をかぶる、破片で顔面を削ぐ、など
◆憑依された者を”浄化“するとすべてが終わる
◆浄化の方法は3つ、①生き埋め、②体の切断、③炎(火あぶり)

●時すでに遅し
ミアが熱湯を浴び大やけどをしたことで病院に行こう!と決意するも、もう遅い。『ここからずっと悪霊のターン』である。川は増水して渡れない。ミアの吐血によってオリビアも悪魔化してエリックの反撃を食らい死亡。ミアに噛みつかれたナタリーは、腕を切り落して抵抗するも結局悪魔化してデビッドにより殺される。いつの間にか悪魔化していたエリックとデビッドは、仲良く爆発からの火事で死亡する。

●悪魔復活
デビッドの自爆も空しく、悪魔は地中から復活を果たす。デビッドの作戦によって仮死状態から蘇っていたミアと悪魔との血みどろバトルの始まりである。しかし、悪魔は結局ミアにチェーンソーで頭をカチ割られて、あっけなく消えてしまった。ミアも腕を失っているがデビッドのお陰で魂も取り戻せたようで、一応の勝利と言えるだろう。しかし、こんなトラウマ級の出来事があって、再び薬物に走らないかは心配である。

●5つの魂を集める
悪魔は実体として復活するために、5つの魂を必要としていた。今回やってきたちょうど5人の若者たちが次々に犠牲となっていくことで、最終的に復活の野望を成就させた。

●オリビアとナタリー以外は曖昧だが
恐らく、ミアの魂は最初の憑依時点で1つ目にカウントされているのだろう。でなければ魂が足りないことになるし、基本的に、『死亡』ではなく『憑依』が『魂の回収』と同義と思われるからだ。なおデビッドは、劇場版にはなかったエクステンデッド版収録のカットで、明らかに憑依されていたことが分かる(火災シーンで金目の憑依状態の顔になっている)。したがって、少々分かりづらい部分はあるものの、ミアたち5人=5つの魂コンプリート➡復活ということでよさそうだ。

●かつての少女は?
冒頭に描かれた過去の事件に関しては、少女を火あぶりにして射殺した時点で『浄化』され、一度カウンターがリセットされたものと考える。でなければ、本作の中途半端なタイミングで5つの魂が集まってしまい違う展開になっていたはずだ。

●どうしても読みたかった
登場時こそインテリ枠っぽかったエリックは、「読むな」を読んで災厄を招く。それも、ぱっと目についた壁の落書きを口に出しちゃった、みたいな話ではない。有刺鉄線をぐるぐるに巻かれて、黒いビニールで包まれた代物を必死に開封し、塗りつぶされた文字を鉛筆でゴシゴシしてわざわざ浮き上がらせて、あえて唱えたのである。それによって全ての悲劇が起こるのだから、これは近年まれに見るやらかしだ。

●逆ギレもする
呪文詠唱により悪霊が引き寄せられ、仲間たちは次々憑依されていく。途中で自分の呪文のせいだと気付くと、今度は「ミアを殺すしかない」とデビッド=ミアの兄に伝える。しかもデビッドが躊躇すると、臆病者!と言い捨てる。とんでもない話である。

●許されないけど許される、けど許されない
それでも何故かエリックを完全には嫌いになれない。その一因として、一応彼なりに状況を打破しようと動いていた点がある。目に注射針を刺されても、そしてそれを自分でぶっこ抜いても、鏡の欠片を肩にザックリされても、ネイルガンでバスンバスン釘を刺されても、何度でも立ち上がった。それは、エリックにとって友人以上の特別な存在である(と仄めかされていた)デビッドを守るためだろう。結局、エリックも憑依されてしまい自らデビッドに致命傷を与えてしまったことで、魂を奪われる以上の罰を受けたとも言える。

とっても不器用だけどいい奴、みたいな印象を残しつつも、でもお前のせいなんだよね、となってしまう不思議なキャラクター、エリック。彼のような存在は、万人に心底嫌われてしまうホラー映画界の「やらかしキャラ」においてなかなか貴重である。

旧作と比較すると、バカがバカをやってアカンことになるイマドキのティーンホラー感が強くなった。また、コメディな雰囲気は減ってシリアスグロ度がアップ。”死者の書”の設定は部分的に付け足しがあるものの基本維持されており、床下から覗く顔やペンダントなど旧作を想起させる部分もあったが、ほぼ別の作品のような印象を受けた。

なお、『バカがバカをやって』というのはエリックだけを指しているわけではない。そもそも、ODまでしている重度の依存症患者を、素人集団が人里離れた小屋に連れてくる段階でアカンことになる予感しかしない。そのプランを聞いて、ヨシ賛成!と同行した時点で、全員共犯だと言えよう。そしてそんなところに彼女を連れてきちゃうデビッドは、いくらなんでもズレてるだろう。

そうは言いつつも、エリックの心地良いまでのダメっぷりと、終盤の画面真っ赤っかシーン(血糊260,000リットル超使用!)を拝むため、たまぁに見返したくなる作品である。

基本情報

【公開年】2013年
【監督】フェデ・アルバレス
【キャスト】ジェーン・レヴィ、シャイロ・フェルナンデス、ジェシカ・ルーカス、ルー・テイラー・プッチ、エリザベス・ブラックモア
【登場人物】ミア、デビッド(ミアの兄)、オリビア(看護師/ミアの友人)、エリック(高校教師/デビッドの友人)、ナタリー(デビッドの恋人)
ポストクレジットなし

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