【考察】映画『インシディアス』|息子を狙う存在と、父の過去に隠された秘密の関係

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:なし、子ども被害:あり、動物被害:なし

●『家系』と見せかけたスタート
引っ越し直後から不穏なことが~という流れで、新居=家が呪われているというミスリードでスタートする本作。物が散乱する、変な声が聞こえる、他人の気配が、というのも気持ち悪いところだが、『息子の、原因不明の昏睡状態』はとても恐ろしいものがある。ダルトンは一度屋根裏で頭を打っているが、それが原因だと特定された方が、まだマシだっただろう。

●しつこい霊障
ルネが参ってしまい、ジョシュは引っ越しを決意する。ジョシュは教師なのだが、ダルトンの医療費のために残業をしている描写もあり、ホイホイ引っ越しを繰り返せるほどお金が有り余っている様子はない。それでも、家族の訴えをスルーしたり、ねじ伏せたりせず引っ越したことは称賛に値するだろう。しかし残念ながら、家を変えたところで霊障は収まらなかった。それどころか、ダルトンの室内を荒らしてダルトンを床に転がすなど、派手に暴れ始めたのである。

ダルトンを狙っているものの正体
ジョシュの母ロレインは、事態を重く見て、エリーズに助けを求める。先発隊としてやってきた心霊調査メンバーのスペックスとタッカーは、早々に家の異常を認めエリーズを召喚した。そして家を見て回ったエリーズが語ったのは、下記の事実だった。

◆ダルトンには幽体離脱の能力があり、幼いころから繰り返し肉体を離れていた
◆今回、魂が遠くまで行き“彼方(Further)”と呼ばれる場所で迷ってしまった
◆空になったダルトンの肉体を求めて、死者の魂が集まっている
◆死者たちとは別に、悪魔もダルトンを狙っている
◆死者は”生き返り“を目指しダルトンを狙うが、悪魔は”苦しめること“が目的
◆幽体離脱時間が長引けば、肉体と魂の繋がりが弱まり、肉体を奪われやすくなる
◆ダルトンに残された時間は少ない

一度は『荒唐無稽』とエリーズの話を突っぱねたジョシュだったが、ダルトンの部屋で見つけた絵がすべて幽体離脱を裏付けるものだったことで、考えを変えた。

●ダルトン救出大作戦
エリーズとスペックスの二人でダルトンの魂を呼び戻すチャレンジをしたが失敗に終わり、最後の手段に出る。ダルトンと同じく幽体離脱体質であるジョシュの魂をダルトンの元へ向かわせる、という作戦だ。当たり前のように幽体離脱を成功させたジョシュは、赤い扉へ到達する。その奥には、鎖に繋がれたダルトンがいた。精神世界なのに鎖という違和感はさておき、ジョシュはダルトンを解放、二人で”肉体のある家“を目指す。悪魔に追われながらもなんとか辿り着き、ダルトンは自分の体に戻って目を覚ました。よかったね、ハッピーエンドだね、と思わせておいて、ジョシュが唐突にエリーズを絞殺してしまうところで終わる。実はジョシュの肉体にジョシュの魂は戻っておらず、別人=恐ろしいビジュアルの老婆の魂が侵入していたのだ。

●アストラル体質
作中で、ジョシュとダルトンは幽体離脱可能なアストラル体質だと明かされる。また、ロレインも『夢』でダルトンを狙う訪問者を見ており、特異体質の可能性がある。かつてロレインがエリーズを呼んだのは、ジョシュが老婆に狙われる心霊現象があったからなのだが、その際は『記憶と幽体離脱を封じる』ことでジョシュを守ることにしたらしい。しかし、本人に忘れさせてそのまま放置は、少々対策不足な感じが否めない。

●彼方
エリーズがつけたエリアの名称。『苦しむ死者の魂に満ちた暗黒の領域』で、魂世界の中でも一際遠くにあるらしい。第二弾でより明確になるが、彼方は時間的にも歪みがあり、過去と現在が交わったりしている。作中でも、ジョシュ(魂)が家族を銃殺する少女の霊に遭遇しており、少女の一家の魂が死の瞬間に囚われ、その時を繰り返しているのだと推測できる。彼方では、霊であっても自由に過ごせるわけではなく、場所や時間に縛られながら苦しんでいるように見える。地獄に近い場所なのかも知れない。

●赤い扉
彼方の中でも最も危険な領域への入口であり、ダルトンが囚われている場所へ通じる象徴的な境界となっている。本作単体では、単に悪魔の部屋への入り口のようにも見えるが、シリーズを通してみるとより“彼方”の特定領域へのポータル感や【封印されし世界】な雰囲気がアップし、アイコン的な位置付けになっていく。

●モブ霊たち
複数の霊が登場するが、作中で詳しい背景が説明される人物はない。踊る少年や、銃殺少女、ロン毛の男など、既視感がなくもないがそれなりに印象に残るメンバーが出るが、名前なども明かされないまま終わる。

●赤い顔の悪魔
準公式の名称として『リップスティック・フェイス・デーモン』という名前がついているらしいが、作中では単に悪魔と呼ばれている。この悪魔についても掘り下げはなく、具体的な目的や能力、何故ダルトンなのか、何故今なのか、何故ミシンなのか、などは不明である。

●老婆の霊
ジョシュがラストで憑依されたのは、黒いドレス姿の老婆の霊だった。エリーズがダルトン救出作戦終了直後に異変に気付きジョシュを撮影すると、写真には老婆が映る。しかし、その事実を誰かに伝える間もなく、老婆inジョシュに殺されてしまう。この老婆の正体は第二弾で明かされるのだが、第二弾を見ても『ジョシュが簡単に肉体を奪われた理由』や『肉体を奪った直後にエリーズを殺せる力の背景』については、明確な説明がない。

ホラー映画で『子どもの言うことを適当に流すと事態が悪化する』というのはよくあることだ。本作においても、冒頭からダルトンは『部屋が嫌』だと言っていたわけで、そこに対してじっくり向き合っていたら違う展開になったかも知れない。ジョシュにいたっては、部屋中が引っかき回されダルトンが床に落下していた現場を見たはずなのに、一度はエリーズ(と彼女の説)を拒絶しており、正常性バイアスの恐ろしさを感じた。幽体離脱のイラストがなければエリーズを追い返してそのまま終わっていたに違いない。ダルトンが絵の上手な子で本当によかった。子どもの絵には、定期的に注意を払おう。あと、転落して頭を打ったら病院に行こう。

なお、本作単体では明かされない事実や回収されない伏線も多く、第二弾を見てようやくスッキリするところがある。そもそも二部作として構成されていたわけではないらしいが、第一段の余白が大きすぎるが故に、第二弾が綺麗にフィットした形だ。そこまで怖くもなく、雰囲気となんとなくの設定で押し切った感のある本作ではあるが、折角なら第二弾まで見て、本当の“オチ”を見届けて欲しいところである。

基本情報

【公開年】2011年
【監督】ジェームズ・ワン
【キャスト】パトリック・ウィルソン、ローズ・バーン、タイ・シンプキンス、アンドリュー・アスター、リン・シェイ、リー・ワネル、アンガス・サンプソン
【登場人物】ジョシュ・ランバート、ルネ(ジョシュの妻)、ダルトン(ジョシュの長男)、フォスター(ジョシュの次男)、エリーズ・レイニア(霊能力者)、スペックス(心霊調査チーム)、タッカー(心霊調査チーム)
ポストクレジットあり

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