
え、何そのポーズ!手旗信号!?
【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:あり、身体損壊:あり(軽微)、子ども被害:なし、動物被害:なし
事実関係・疑問点の整理:孤独な女性の過去とこれから
真夜中の侵入者はいかにもなエイリアン
●エイリアンの急襲
ある晩、物音と気配で目覚めたブリンが遭遇したのは、一人暮らしの自宅に侵入してきたエイリアンだった。ちょっとした攻防の末に、勢いでエイリアン1体を殺害するも、恐怖を感じて町へ出る。そして住民に助けを求めるのだが、【過去の事件】で恨まれているブリンは誰にも相手にされない。警官にもスルーされる。仕方なく、町を出て遠くに逃げるべくバスに乗り込むが、そこにいた人間たちも既にエイリアン化していた。なお、バス内にいた寄生済み配達員は序盤にも登場しており、ブリン宛の荷物をバスケットボールよろしく放り投げた男性である。
●VSエイリアン
結局自宅へ戻ったブリンは、その後数体のエイリアンとの死闘を繰り広げるが、抵抗むなしく、“何か”を強引に口内へ入れられる事態となった。“何か”=たくさん突起のついたゴムボールのような、イソギンチャクもどきを無理やり飲み込まされたのである。しかもエイリアンが体内からオエオエとそれを吐き出した直後に。最悪である。
●これぞアブダクション
イソギンチャクもどきの見せた幻覚を突破し、自力で吐き出し抵抗していたブリンだが、結局UFO内へさらわれてしまった。そこでは多くのエイリアンに記憶を覗かれ、【過去の事件】も明らかになる。ピンポイントで【過去の事件】の記憶にアクセスしていたが、それだけブリンの心の中で大きなウェイトを占めていた、ということなのだろうか。その後スキャニングを終えたエイリアンたちは何やら相談し始め、天の声の後押しもあり、ブリンは地上へ戻された。
ブリンのトラウマと選択
●【過去の事件】とは
ブリンは12歳の時に、親友であるモードと口論になり突き飛ばされた。そしてカッとなり、手近な石を持ってモードの頭を殴り殺してしまった。モードが町の警察署長の娘だったこともあり、ブリンはそれ以降、閉鎖的な町の中で孤立していく。本作時点では事件後10年経っているが、それでも町の誰からも相手にされないというのは、なかなかシビアな社会である。これは意図して”事件が風化しにくい小さな社会”や”閉鎖的で無情な隣人たち“を描いた部分もあるだろう。また、ブリンが事件当時12歳だったことで刑事罰を免れた可能性もある。そのため、きちんと更生したことを証明する機会もなく、白い目で見続けられることになったのかも知れない。しかし、ブリン自身に原因はなかったのだろうか。
●理想と思われた世界
ブリンは一度、イソギンチャクもどきを飲み込まされて別の世界線を見せられる。そこにはモードがいて、直接本人に謝罪の機会が与えられた。それが彼女の本当の望みであれば、まさに”理想の世界“である。しかし、ブリンはそれを吐き出した。すごい抵抗力である。乗っ取られまくっている町民たちと比較すると、かなりのイレギュラーだろう。そしてそれは、ブリンの『理想の世界』が別にある可能性を伺わせるのだ。
●ブリンが望んだこと
脳内スキャンしたエイリアンたちは、ブリンにイソギンチャクを飲ませることなく、ありのままの彼女を地上に戻した。その後、ブリンは『洗脳』も『乗っ取り』もされないまま、エイリアン化した隣人たちと楽しく共生していく。ここから読み取れるのは、これこそがブリンの”理想の世界“だったということである。つまり、『モードに許して欲しい』ではなく、『みんなに今の自分を受け入れて欲しい』というのが彼女の一番の望みだったわけである。そして、誰にも拒まれることのない都合の良い”居場所“を与えてくれたのは、隣人たちではなく、宇宙からの侵略者だったという壮大な皮肉で締めくくられていたのだ。
本作に出てくるエイリアンたち
●種類いろいろ
基本的には、灰色で頭と四肢を持つ、ギョロっとした黒目のエイリアン=グレイではあるが、役割や能力の異なる個体がいくつか登場している。また、UFOの天井部分(もしくは、そこと繋がっている別の場所?次元?)には、さらに上位の存在もいたようだ。
●最初のグレイ
ドアをバタバタしたり、電気系統をぶっ壊したりはしたが、直接の危害は加えていない。単なる偵察部隊だった可能性が高い。にも拘らず、ブリンに勢いで脳天を刺されて死亡。
●小型グレイ
近接戦闘特化型と思われる、小さめの個体。素早さと攻撃力が高め。しかし、さらにその上を行くブリンの生存本能のせいで、折れたモップで刺され、棚の扉で頭を叩かれ死亡。
●大型グレイ
クモのように長い手足を持つ大きな個体。周囲を見張り、逃げた獲物を追う役割に見える。ブリンを追う際に屋根から落ちるお茶目ぶりを披露するが、必死のブリンにそのコミカルさが伝わることなく、車に突っこんで身動きが取れないところを爆破されて死亡。
●ザ・グレイ
ブリンの人間性に一番興味を示した、平均的なビジュアルのグレイ。念力の使い手で、指をクイッとするだけで生身の人間を壁ごと廊下に吹っ飛ばす程の威力がある。体内からイソギンチャクを吐いてブリンに飲み込ませたり、指でチョンとして記憶を覗いたり、様々なスキルを披露。
●エイリアンの目的
最後まで見ても、エイリアンたちの目的はいまいち分からない。【人間を殺すこと】ではなさそうだが、ありのままの人間を生かし続ける意図はなかったようだ。ブリン攻略に苦戦するも、彼女の苦悩を理解して慈悲を見せたのか、或いはおもしれー女枠だったのか、”彼女にとって心地よいコミュニティーを作り上げて生かす”という決定をした。最後のブリンの笑顔を見るとwin-winのハッピーエンドにも思えてしまうが、既に相当な人数がイソギンチャクに寄生されていることや多くのUFOが空を飛び交う現状を見れば、人類の敗北は明らかである。
感想
セリフがほぼない構成となっており、ブリンの孤独感が強調されていた。多少“セリフのなさ”を優先したがための不可解な演出はあったものの、基本的にはプラスに働いていたと思う。正直、単なるエイリアン・インベージョン物として捉えると少々ストーリーのパンチが弱く、怖さも全くない。しかし、居場所を求め続けた女性を受け入れてくれたのは、閉鎖的コミュニティーを乗っ取ったエイリアンだった、というブラックジョーク的なストーリーを主軸に考えると、なかなか新鮮で面白かった。
自宅と町を無駄に行ったり来たりする、エイリアンとの激しいようで大したことをしていないバトルが続く、など、中弛みがあるところは否めないが、現代版サイレント映画風の個性的な一作と言えるだろう。
基本情報
【公開年】2023年
【監督】ブライアン・ダッフィールド
【キャスト】ケイトリン・デバー
【登場人物】ブリン・アダムス
【ポストクレジット】なし





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