【考察】映画『エイリアン』|シリーズにおける最高峰でありSFホラーの名作

語り尽くされた感のある不朽の名作ホラーだが、何度も見るからこそ疑問に思える点も出てくる。そこで、そんな疑問点に独自の解釈を添えて、完全生物の恐怖を描いた本作を改めて振り返っていきたい。

●宇宙貨物船ノストロモ号
登録番号:180924609。狭い通路にいくつもの空間が繋がる構造で、方向音痴キラー。今見ればカチャカチャなるライトや操作パネルは少々古めかしいが、不思議なリアリティと近未来感がある。船内はまさかの喫煙可。メインAIであるマザー(MU/TH/UR 6000)と交信する部屋は、船長クラスの船員しか入れない特別な丸い個室で、なぜか壁面がライトで埋め尽くされている。船体下部にシャトル『ナルキッソス』が格納されている。

●地球への帰り道のはずが
クルーたちのハイパースリープ(冷凍睡眠)中、勝手に航路が変更されており、目覚めた時には太陽系ですらないゼータ第二星団という宇宙の外れにいた。その後、謎の信号をキャッチ➡発信源である惑星(LV426)に着陸して現地調査➡謎の生物に襲われる➡被害者を謎の生物ごと宇宙船に入れる➡謎の生物大暴れで船員ほぼ全滅、というのが大まかな流れである。

●VSエイリアン
フェイスハガー状態で船内へとやってきたエイリアンは、じわじわ船員を殺しながら成長していく。以下に、リプリー以外の船員について死亡順に簡単にまとめる。

◆ケイン:副長。着陸後した惑星にある謎の建造物内でエッグチェンバーを発見。フェイスハガーに寄生されてしまい、そのまま船内へ。フェイスハガーが役目を終えて死亡したため一度は解放されるも、その後チェストバスターとなったエイリアンに胸をぶち破られ死亡。ぐるぐる巻かれて宇宙に葬られた。

◆ブレット:機関士。「その通り(Right)」を繰り返すのでオウムと馬鹿にされたり、常時モブっぽい雰囲気だが、急遽電気びりびり棒を作成するなど技術はある。猫のジョーンズを探しに行った先で、成長しきったエイリアン・ゼノモーフのインナーマウスで刺されて死亡。ディレクターズカット版では、その後卵化されている描写がある。

◆ダラス:船長。中盤までさも主人公のような出方をしていたが実は違う、というある種のどんでん返し要員。会社に忠実なタイプ。通風孔に侵入したエイリアンをエアロックに追い詰めよう大作戦では自ら追い立て役を買って出るも、あえなく失敗。劇場公開版ではそのまま行方不明扱いだが、ディレクターズカット版では繭にされており、リプリーに頼んで燃やしてもらうシーンがある。

◆アッシュ:パーカーにボコされ一度は停止したが、頭を機械に繋がれ強制再起動される。尋問を受けるが『チミたちには同情するよw(意訳)』などと煽り全員のヘイトを集める。最後はパーカーにより部屋ごと燃やされる。

◆パーカー:機関長。なんだかんだで最も戦闘力が高く頼れる男だった。ランバートがゼノモーフとのにらみ合いになると、自ら飛び出し、そのまま殺されてしまった。

◆ランバート:二等航海士。酸素冷却剤の回収中、ゼノモーフとご対面しパニックからフリーズする。パーカーが助けに入るも撃沈、そのまま殺されることになった。直接的な死の描写はないが、長い悲鳴や血の滴る素足などから、かなり惨たらしく殺害されたことが仄めかされている。

●そして宇宙へ……
ノストロモ号が自爆し、それをナルキッソスから眺めるリプリー。しかし安堵も束の間、完全にシャトルの内部構造と同化していたゼノモーフの腕が突然現れる。リプリーと一緒に、視聴者も「ギャッ」となる瞬間である。だが、我らがリプリーは、恐怖でキャーキャー奇声を上げるような馬鹿はしない。慎重に移動し、冷静に宇宙服を身に着け、エアロックを解放後も粘るエイリアンに銛銃を撃って宇宙空間へと吹っ飛ばした。

本作登場の個体、ビックチャップの成長過程は下記の通りである。

◆オヴォモーフ:エイリアン・エッグとも呼ばれる、エイリアンの初期状態=卵。獲物が近づくと中のフェイスハガーが活動を開始。外から内部が見えるような半透明の皮に覆われている。

◆フェイスハガー:カニ+クモ+尻尾のような見た目で、尾を使ってジャンプしたり巻き付いたりしつつ、本体で獲物の顔全体を覆う。その後、獲物=宿主の口から管を挿入してチェストバスターの”素”を産み付ける。宿主は管から酸素の供給があるので窒息死はしないが、張り付かれている間は意識もない。表面はタンパク質らしいが、血液は強酸性のため足を切断して引きはがすなどは難しい。

◆チェストバスター:蛇の親戚のような見た目。頭部に目や耳は確認出来ないが、立派な口はある。宿主の胸を突き破って出た後は、シュタタタという効果音が付きそうな動きと俊敏さで移動する。

◆ゼノモーフ/ビックチャップ:チェストバスターが脱皮を繰り返して成長し、最終的に至る成体。頭部は大きな楕円のフードに覆われているが、顎の部分は露出している。四肢と尻尾があり、背中にも突起が見える。口の中にインナーマウスと呼ばれる小さい口が存在していて、外の口からダラダラ涎を垂らしながらじっとり獲物を見据え、インナーマウスでザクリと刺すのが定番。

視聴中に気になった点を、個人的見解を添えつつまとめた。

●すべては会社の思惑?
作中で明言されているのは、①アンドロイドのアッシュは急遽同乗することになった、②マザーが勝手に航路を変えた、③アッシュには特別指令937が出ている、という3点である。つまり、会社が組織的に今回のことを仕組んだという表現はどこにもない。もし会社がエイリアンの存在を確実に把握していたなら、さすがに荷を積んだ宇宙貨物船を向かわせない気もする。一方で、すべてが偶然と片付けるのはさすがに無理がある。つまり本作の出来事について言えるのは、WY社の”誰か”に仕組まれた物だろう、ということだけである。

●酸素の冷却剤、要らなかったの?
パーカーとランバートが死亡すると、リプリーはボンベなど見向きもせずにシャトルへ向かい、最終的に追加の冷却剤を持たないまま出発した。考えられる理由としては、シャトルは1~2名定員のため、3人で乗るには追加の冷却剤が必要だった、というものだ。しかし、作中に明確な答えはない。

●なんで商用貨物船に自爆装置があったの?
現実の打ち上げロケットにも、地上や乗員の安全を担保するため緊急時には機体を破壊する機能があるらしい。あれほど大きな宇宙船ともなれば、いざという時(制御不能状態で地球への軌道に乗った時など)のため救命艇+自爆システムがあってもおかしくない。

●最後のゼノモーフ、何してたの?
隙間に挟まったゼノモーフは、リプリーに見つかってもすぐには動かなかった。リドリー・スコット監督は、本作時点で『エイリアンの寿命は数日程度』と設定していたらしく、静かな場所で死を待っていた可能性がある。或いは、冬眠状態に入ろうとしていたとも考えられる。単純に獲物を待って潜伏していたにしては、リプリーに襲い掛かるまでに時間がかかり過ぎており、休憩モードに入っていたと解釈する方が自然だろう。

以降のエイリアンシリーズはアクション色が強くなっていくが、本作は紛うことなきホラーである。クラシック的旋律に吐息が合わさった不気味な音楽に加え、緊迫の場面では鼓動のようなBGMが続く中、得体の知れない何かが潜み、突然襲ってくる怖さ。謎の惑星を出れば解決するのかと思わせて、宇宙船という閉鎖空間で対峙しなければいけなくなる絶望。そしてエイリアンが行う無慈悲な殺戮。序盤はまだ緩急があるものの、ラストは宇宙船の自爆カウントダウンも相まって一気に緊張感が増していく。そして、やっと解放されたという安堵からの追い打ち。これぞホラーの真骨頂だろう。

総合的に見ても、エイリアンシリーズにおいてどれが一番好きかと聞かれれば本作である。エイリアンの見た目は最も洗練されているし、無機質なのに”現場感”のある宇宙船内や、機械と有機物が謎融合したアンドロイドの中身など、ビジュアル的にインパクトに残る部分も多かった。入り組んだ船内がいい具合に圧迫感を演出するものの、作戦は理解しやすく、クルーたちがそれなりに合理的な行動を取るってくれるのでストレスがない。(ダラスが火炎放射器を乱射したのは許容範囲とする)

リプリーは、規則規則うるさい堅物女、みたいなスタートなのだが、結局彼女の発言や行動は正しく、だからこそ最後まで生き残ったことに納得感もある。なお本作はよくフェミニズムと結びつけられるが、リプリーが『女性だから』ではなく、純粋に『人として』かっこいいなと思わせる人物像だったと思う。ちなみに、終盤について『あの状況で猫を探し回るのはバカだ』といったコメントを見たことがあるが、リプリーのあの時の行動は絶対に正しい。何故ならジョーンズも彼らにとって大事なクルーだからだ。そして猫は可愛いからだ。

基本情報

【公開年】1979年
【監督】リドリー・スコット
【キャスト】トム・スケリット、シガニー・ウィーバー、ヴェロニカ・カートライト、ハリー・ディーン・スタントン、ジョン・ハート、イアン・ホルム、ヤフェット・コットー
【登場人物】アーサー・ダラス(ノストロモ号船長)、エレン・リプリー(第三航海士)、ジョーン・ランバート(二等航海士)、サミュエル・ブレット(機関士)、ギルバート・ケイン(副長、一等航海士)、アッシュ(科学主任)、デニス・パーカー(機関長)
ポストクレジットなし

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