【考察】映画『HELP/復讐島』|サバイバリスト部下とクソ上司の無人島生活の結末とは

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:あり

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

本作冒頭で、新CEOブラッドリーは親のした約束をあっさり反故にして、リンダを昇進コースから外す。普通なら一気にブラッドリーにヘイトが溜まる流れなのだが、今回は違う。リンダが、デスクに食べかけのサンドイッチをつっこんだ上、顔にツナをつけたままブラッドリーに挨拶をしてしまうなど、開始数分で【残念な人物】だと判明しているからだ。

●リンダの素質
会社で完全に浮いている様子からして、リンダに共感性がないことは明らかである。また、元夫が飲酒運転で事故る可能性を理解した上で車のキーを渡したのは遠巻きの殺人だが、その秘密を抱えたまま普通の生活を送る図々しさがあった。さすがにズーリと船長を直接殺したことには罪悪感を覚え悪夢まで見ていたが、いのしし狩りで快感を覚えた残虐性と合わされば、なるべくしてなった殺人鬼とも言えるのだ。最終幕で、ブラッドリーに奪われることも見越して弾のないライフルで脅すあたりも、リンダの狡猾さが表れている。

●リンダのハッピーエンド?
ラスト、場面転換するとそこではリンダが笑顔でゴルフに興じている。一年前に奇跡の生還を果たし、今度は著書が映画化されるセレブリティの一人、と紹介されたリンダが『自分で自分を守って♡』と語って終幕となる。これは、果たして現実の出来事なのだろうか?指を突っ込まれたはずの右目も、剥がれたはずの頭皮も、何事もなかったかのようにここまでキレイになるだろうか?監督の流儀を考えると完全妄想オチというより、美化した演出という気がするが、確定できる要素がないか繰り返し視聴して確かめてみたいところだ。

細かい点も含め、注目ポイントを一気にまとめてみた。

●ラブロマンスなんてない
最も象徴的なのは、『こんなに愛情を注いでくれたのは君だけだ』と言いつつ毒を盛ったブラッドリーが、『Fxxk you, Linda!』と中指を立ててウッキウキでイカダに乗り、直後の大波で沈没していくところだろう。ブラッドリーは作中で何度も改心したかのように振舞って、リンダを騙し、見ている側にも“さすがに心動いたか?”と思わせては、結局最後まで嫌な奴だった。その辺の駆け引きも、物語に引き込まれていく要素の一つだった。

騙された、予想外ポイント
【オフィスではパワハラ被害者だった部下が無人島で無双して上司を見返す】というプロットに見せかけて、本作の大筋は全く異なる。端的に言えば、少々サイコパス気質だったリンダが、無人島で本領発揮し、不法侵入や殺人まで犯したにもかかわらず、社会的成功を掴むという話だったのだ。

サム・ライミと言えば、コレ!
死霊もクモ男も出てこないが、ちょっとコミカルさを感じる独特のグロ表現は健在である。特にインパクトの強いシーンを列挙すると下記の通りである。

◆飛行機から飛び出て、悲惨な状況のドノヴァン
◆リンダvsイノシシにおける、森を這う死霊視点からの、血みどろバトル
◆ブラッドリーの大事な部分をチョン切ると見せかけてネズミを捌くドッキリシーン
◆リンダの悪夢に出てくる、もはやゾンビと化したズーリ
◆終盤のリンダvsブラッドリーが魅せる、首絞め、頭皮むしり、人体齧り、眼窩がんかぶっさし

劇場で何回か「ハハッ」と漏れてしまったくらいには、笑えるシーンがいくつかあり、シンプルに『面白かったー!』と感じる一作だった。オフィスで浮きまくっているリンダやツナに気を取られて話が入ってこないブラッドリーの描写から、これはだいぶブラックなコメディなのかとワクワクしたのだが、その期待を裏切ることなく終始ニヤニヤが止まらなかった。特に、ドノヴァンが飛行機から飛び出すもネクタイが引っかかってバインバインしてリンダがシェードを閉める、と言ったコント的展開や、リンダがオレンジ色の吐瀉物をゲボゲボしながら心肺蘇生するくだりは爆笑モノ。また、砂浜にブラッドリーが描いた文字が『HEPL』になっているなど、地味に笑えるシーンも多かった。

あらすじ時点では終始リンダを応援するようになると思っていたが、あれ?これ、ブラッドリーも別に悪くないんじゃ……いや、ダメだわコイツ……でもリンダ、それはアカンて、みたいな感情の行ったり来たりを経て、どっちもクソやんけ(笑)!!!となるのも、ドタバタ感があって良かった。

総じて、『思ってたんと違う』な部分と、『こういうのでいいんだよ』の部分がうまく融合して、予想の遥か上をいく傑作となった。一応、“スリラー”作品と位置付けているが、これはもう“サム・ライミ”というジャンルではないかと思う。

基本情報

【公開年】2026年
【監督】サム・ライミ
【キャスト】レイチェル・マクアダムス、ディラン・オブライエン、エディル・イスマイル、ゼイヴィア・サミュエル
【登場人物】リンダ・リドル(プレストン社社員)、ブラッドリー・プレストン(プレストン社CEO)、ズーリ(ブラッドリーの婚約者)、ドノヴァン(プレストン社社員)
ポストクレジットなし

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