【考察】映画『プロメテウス』|完全生物エイリアンの起源はまさかの黒い液体?

リドリー・スコットが監督を務めた、エイリアンシリーズの前日譚。しかし、エイリアンはほぼ登場せず、『創造主と創造物』というテーマが前面に描かれていた。謎だらけの本作について、疑問点の独自考察を中心にレビューしていく。

●2093年宇宙の旅
創造主様にのこのこ会いに行って長生きしたいって言ったら逆に殺された件。ラノベタイトル風にまとめると、本作はそういう話である。岩壁画のヒントを元に、2年半もかけて未知の惑星を訪れ、ウェイランドは創造主=エンジニアと対面する。しかし、エンジニアは激オコしてその場の人間たちを殺害。平行して、エンジニアが準備していた『黒い液体』とそこから生まれた謎の生命体のせいで多くが死亡。その後エンジニアが地球に行くのを阻止すべく特攻して残っていた面々も死亡。結局、ショウ博士と、アンドロイドのデヴィッド以外全員死亡する展開となった。

●プロメテウスの乗員たち
主なメンバーをピックアップしていく。

◆ショウ:考古学者
信心深さと、創造主の存在を肯定する考えが両立しているのは、不思議な点である。トリロバイトを妊娠するも、開腹して摘出手術を受けた直後に全力ダッシュするなど、尋常じゃない忍耐力というか精神力を見せた。

◆ホロウェイ:考古学者
ショウの恋人。やたらアンドロイドを見下す発言をしていたが、あの社会では通常の反応なのか、ホロウェイの価値観によるものかは不明。デヴィッドに黒い液体を盛られて感染。体の崩壊が始まった後にヴィッカーズに火炎放射器で燃やされ死亡。

◆ピーター・ウェイランド:ウェイランド社社長
齢100歳を超える。不老不死願望が強く、自力歩行が出来ない状態にも拘わらず、遠路はるばる創造主に直談判しに来た。しかしエンジニアの怒りを買い、その場で殺される結末となった。

◆メレディス・ヴィッカーズ:ウェイランド社役員
プロメテウス管理者であり、ウェイランドの娘。冷酷な悪役的に描かれていたが、検疫に対する意識も高く、リスクを可能な限り排除して船の安全を守ろうとする優秀な責任者だった。しかし最後の最後、走って逃げるルートの選択だけはミスったようだ。

◆ミルバーンとファイフィールド:生物学者と地質学者
両者、行動が稚拙で杜撰。ミルバーンは、ビビッて逃げておいて、いざ新生物を目の前にすると好奇心のままに行動。スーツの穴から侵入したハンマーピードに殺害された。ファイフィールドは序盤こそ電子タバコ(的なもの)をふかしてイキっていたが、ミルバーンを助けようとして酸性血液を食らい、ヘルメットは溶けるわ寄生されて人間やめるわ撃たれるわ轢かれるわ燃やされるわの大惨事となる。

◆ヤネックとチャンスとラヴェル:プロメテウスの船長と副操縦士たち
普通の人枠だが、最後は宇宙船で宇宙船に特攻し、地球を救ったヒーローとなった。しかし、本当に3人でプロメテウスをぶつける方法しかなかったかは疑問が残る。

◆デヴィッド:アンドロイド
超高性能で、既に人間の知性を越えている。やたら創造主マウントをとってくるホロウェイに皮肉で返したりすることから、デヴィッドには感情があるのでは?と思わせる演出となっているが、あくまでも”学習結果”の範疇だろう。エンジニアに頭をもがれたが、完全な機能停止には至らず、最後はショウの手も借りて生き残った。

●エンジニア
人類の創造主とされる白い巨人。独自の言語がある。人類よりも遥かに進んだ技術を持っているようだが、遺跡(実際には船)の内部は古代的だった。

●ハンマーピード
ワームが黒い液体に感染して生まれた、コブラのような生き物。元のワームがLV223の原生生物なのかは不明だが、調査隊が保管庫を開けた時に踏みつけており、船内にはもともといた模様。血液は酸性。巻きついて締め上げる威力は強く腕が簡単に折れるほど。口から侵入してミルバーンを殺害。

●トリロバイト
黒い液体に感染したホロウェイと性交渉したショウが妊娠した、イカ的な生き物。摘出後、医療ポッドの中で一度静止したが死んでいたわけではなく、その後めちゃくちゃ成長する。ショウを追ってきたエンジニアに遭遇すると、足を巻き付けがっつりホールド、口的なところから触手的な物を出して、エンジニアに挿入して殺害。

●ディーコン
トリロバイトに襲われたエンジニアの内部から出てきた”エイリアン”に近い形状の生物で、二重顎構造もある。しかし、ラストでサービスショット的に登場するに留まり、本作において一切の活躍がなかった。

個人的に疑問に思った点を列挙するが、多少考察できる部分と全く出来ない部分がある。

●ヴィッカーズってアンドロイドだったの?
アンドロイド説の根拠は、冷淡な様子、ピーターとの年齢差など。人間説の根拠は、個別に冷凍睡眠をしていた、汗をかく、危機に激しく動揺する、など。根拠の数と説得力だけで考えると、人間と思ってよさそうではある。

●大型輸送車、どこ行った?
最初の探索から帰る際、二人乗りのバギーしか残っておらず『置いていかれた!』と焦る描写がある。しかし、先に戻ったはずのミルバーンとファイフィールドは、実際にはエンジニア船に残っていた。では、誰が大型輸送車に乗って行ったのか。遠隔操作できるとしてプロメテウスが回収する意味もない。単なる制作上のミスの可能性が高い。

●エンジニアの目的は?
推測できる流れとしては下記の通り。

エンジニアは複数の惑星に様々な生命を生み出した(人類もその一種)
→2,000年前、人類は『生かしておくべきではない』と判断した
→人類を消滅させるため地球に黒い液体を散布しに行こうとした
→何らかの手違いで黒い液体に【感染】した個体が出た
→密閉できる保管庫へ逃げた
→エンジニアはほぼ全滅したが、冷凍睡眠ポッド内で一体だけ生き残った
→起こされたエンジニアは当初の目的=人類抹消を果たすべく地球を目指した

【人類抹消を判断】した理由は分からないが、人間の傲慢さや暴力性を危険視した可能性が高い。その理由をキリストの処刑と結びつける考察もあるが、監督は明言しないことを選択したようだ。

●あの黒い液体は何?
エンジニアが作ったものかは不明。効果として作中の描写から判断できるのは、触れた有機物のDNAを一旦破壊し、再構成して、ホストの情報を素材にした新生命体を生み出すこと。冒頭のエンジニアは、創造主として自ら黒い液体を飲み、DNA崩壊→あの惑星に新たな生命を広めたようだ。

●デヴィッドはなぜ黒い液体を飲ませた?
ウェイランドの具体的な指示というより、デヴィッドの判断で“実験”したと思われる。デヴィッドの使命は、ウェイランドの延命を果たすべく謎を解明することだからだ。何故対象がホロウェイだったかというと、単純に接触しやすい相手であり、飲ませやすい状況が整っていたからだと思われるが、健康な成人男性だったことも一因だろう。ホロウェイに「どこまで覚悟しているか」を確認してから液体を混入したのは、彼なりに倫理的障壁へ対処したものと思われる。

●デヴィッドがエンジニアに言ったセリフは?
ウェイランドの目的とその後の流れから、『この男性はもうすぐ死にそうなので、不死をお願いしに来ました』といったセリフだと推測できる。ネットでは、本作の言語コンサルタントが『This man is here because he does not want to die. He believes you can give him more life(意訳:この男は死にたくないのでここに来た。彼は、あなたなら延命が可能だと信じている).』だったと明かした、とある。公式資料ではないが、内容的には納得がいくところだ。

●エンジニア、ブチ切れの理由は?
エンジニアが激怒した理由は『人間に腹を立てたから』に違いないが、デヴィッドの伝えた内容に加えて、デヴィッドという存在・・にキレたようにも見える。【創造物にんげんが傲慢にも、自分に似せてデヴィッドを造り、創造主の真似事をしたこと】に対して、激オコしたのではないだろうか。

●岩壁画の意味は?
少なくとも創造時点から人類を滅ぼす意思はなかっただろう。なので、もともとLV223は人類の様子を見守る観測所的な役割で使われていた→岩壁画を描かせた時点では『文明が発展したら、自力でここにおいで、僕たちがいるよ』といったメッセージだった、ということは考えられる。が、推測の域を出ない。

1979年の初代エイリアンが大好きな理由の一つに、エイリアンの圧倒的完全生物感みたいなものがある。それは神秘的ですらある。そのため、前日譚という位置付けでエイリアンの起源(ぽいもの)が明かされること自体に抵抗があり、期待値はマイナススタートだった。いざ視聴してみると、なかなかの雑な展開で、一つのSFアドベンチャー物として見てもツッコミどころだらけ。謎や曖昧な点も多すぎて、考察を議論しようにも、仮定の仮定で話す状況になり不毛なほどだ。

そして本作で提示された人類の起源は、【エンジニアの実験結果の一つ】ということだが、要するに【人類もエイリアンも元を辿ればみな黒い液体】というのがシリーズのオチだったとも言える。人類の創造主は存在するのか、創造物が創造主の想定を超えた時何が起きるのか……そんなテーマで物語が広がれば広がるほど、エイリアンという存在が浅く薄くなっていく気がした。

とは言え、ダメなところばかりではない。デヴィッドとホロウェイが見せるアンドロイドと人間の歪な関係性は興味深かったし、延命のためにのこのこやって来たウェイランドをエンジニアが即始末したのはスカッとポイントが高かったし、ショウのイカタコ摘出シーンは緊迫感もあってよかった。細かい点で好きな部分もありつつ、全体としては全くハマらなかった、というのが結論である。

基本情報

【公開年】2012年
【監督】リドリー・スコット
【キャスト】ノオミ・ラパス、ローガン・マーシャル=グリーン、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、イドリス・エルバ、ショーン・ハリス、レイフ・スポール、エミュ・エリオット、ベネディクト・ウォン、ケイト・ディッキー
【登場人物】エリザベス・ショウ(考古学者)、チャーリー・ホロウェイ(考古学者)、デヴィッド(アンドロイド)、メレディス・ヴィッカーズ(ウェイランド社役員)、ヤネック(プロメテウス船長)、ファイフィールド(学者)、ミルバーン(生物学者)、チャンス(副操縦士)、ラヴェル(副操縦士)、フォード(ウェイランド社社員)
ポストクレジットなし

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