【考察】映画『ロングレッグス』|奇妙な連続心中事件の裏には、少女を巡る魔の計画

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:なし

●連続一家心中事件とは
過去30年で10件も繰り返されている、謎の手紙が残された連続一家心中事件、通称ロングレッグス事件。FBIもその捜査に行き詰っていたが、超能力者でもある新人特別捜査官、リー・ハーカーの登場により一気に進展していく、というのが本作のストーリーである。事件に関して、序盤に判明していたのは下記のポイント。

◆どれも、父親が家族全員を殺害後、自殺
◆すべての家族に娘がいて、誕生日が14日(事件発生日は14日以外もある)
◆侵入の形跡はなく、凶器はどれもその家にある物
◆現場には必ず手紙が残される
◆手紙には、謎の記号(暗号文)とLONGLEGSという署名

●リー投入後の飛躍的な進展
リーはFBIの超能力検査で、“超能力”保持者であることが認められる。それを受けて、難航している未解決事件:ロングレッグス事件の担当となる。リー投入後明らかになるのは下記のポイント。

手紙の暗号解読:父親が司祭と妻を殺した“カメラ家事件”とロングレッグスの関係性浮上
カメラ家事件の生存者:娘キャリー・アンは生存しており精神病院にいる
事件発生日ルール:事件発生日を結ぶと【地獄の円】を示しており、次は13日に事件が起きる可能性
ロングレッグスの写真:過去にハーカー家を訪れた際、リーが犯人のポラロイド写真を撮っていた

暗号を元に訪れたカメラ家農場の母屋では、頭部に鉄球が入れられた人形が発見された。事件のキーアイテムではあるが、人形自体は捜査の進展に影響なかった。

●思いも寄らない結末
コブルの写真を入手したことで捜査は急展開する。あっと言う間にFBIはコブルに辿り着き、逮捕したのだ。しかし、その後は怒涛の死亡ラッシュが始まる。

◆リーの聴取後コブルが自殺
◆病院でキャリー・アンが飛び降り自殺
◆ルースがリーの同僚を射殺
◆コントロールされたカーターが妻を殺害
◆リーがカーターに発砲(おそらく死亡)
◆リーがルースを射殺

最後に、リーがルビーの”人形“を撃とうとするも弾が出ず撃てない、というところで終了する。

●悪魔の関与を踏まえた時系列
連続一家心中事件はロングレッグスが”主犯”といえるが、黒幕は悪魔であり、1974年以降はルースも協力していたことが判明する。作中の描写とルースのセリフから推測できる流れは下記の通り。

1966年7月14日:最初のロングレッグス事件
・人形作家コブルが犯行スタート
・人形に悪魔の一部を埋め込み、“教会からの贈り物”としてターゲットに配る
・人形を受け取ると、父親は悪魔にコントロールされ家族を殺して自殺する
・本件~初期の数件は、コブルの単独犯行と推測される
1974年1月13日:ハーカー家侵入事件
・コブルが日中ハーカー家を訪れる
・追い返されるも、夜に再訪
・リーの命を守るため、ルースがロングレッグス/悪魔と契約する
・リーの、コブルに関する記憶が封印される
・以降、人形を配る役目はルースが担う
1975年3月8日:カメラ家事件
・父親が司祭と妻を殺害、自殺
・キャリー・アンは生き残るが精神病院に入る
1975~1990年代初め:残りの事件

そもそも、なぜ、どうやってコブルが悪魔のために事件を起こすようになったのかは最後まで描かれない。なお、最初の事件のものと思われる死亡診断書の記載内容が、どう頑張っても“1965年”に見える。本質に関わる部分ではないので、スルーしておこう。

●悪魔の“壮大な”計画
黙示録が何度も引用されていたこともあり、中盤あたりでは【現世への降臨】からの【人類滅亡】が悪魔の目的かと考えていた。しかし、結局完遂されたのは【リーへの嫌がらせ】だけだった。もしかすると本編後、”地獄の円“の儀式が完了して、オレゴン州のどこかに悪魔が降り立っているかも知れない。しかしそれは妄想でしかなく、本編から言えるのはリーが執拗に狙われていたということだけなのだ。

悪魔はリーに狙いを定めると、親を取り込み、女優への夢を諦めさせ、FBI捜査官にさせ、超能力で事件の真実にたどり着かせ、母親を殺させた。なぜリーなのか?どの時点からそれが計画されたのか?何も分からない。悪魔が悪魔崇拝者を利用して、純粋な少女の人生をジワジワと壊し、その過程で10以上の家族を殺害し、世間を恐怖に陥れた、という事実があるだけだ。

●ラストの意味とは
人形を撃てない=リーがロングレッグスの仕事を引き継ぐ、という暗示ではないと考える。“親殺し”が終わった時点で、リーの役割は終わっているからだ。ルビーは、人形が残っているうちはロングレッグスに関わる記憶が封印されているだろう。終盤のリアクションからは精神状態にも異常をきたしている様子で、キャリー・アンのように精神病院入院コースの可能性が高い。

●そうは言ってもツッコミたいところ
黒幕が悪魔ということで、作中疑問に感じる点はほぼ『だって悪魔のせいだから』で片付いてしまう。リーの(半)超能力者設定ですら、悪魔由来の可能性がある。なんせリーは超能力検査で、“逆三角形“を見て”父親“と答えていたのだ。なので、どうやって14日生まれの少女を見つけていたのか、といった実務的な疑問はあまり意味がない。キャラクターの行動でも腑に落ちない点はある。

◆ロングレッグスからの届きたてほやほやの手紙を、個人宅で勝手に開封するリー
◆ロングレッグスの取り調べを、真の関係性が不明な新人捜査官に単独で実施させるFBI
◆娘の誕生日が14日なのに完全無警戒なカーター

それすら『だって悪魔のせいだから』と言われてしまえば、『悪魔のせい』で納得せざるを得ないのである。

予想とは裏腹に、明確な犯行動機、明確な犯行手順やルール、明確な結末が用意された謎解決型ホラーミステリー作品ではなかった。最後まで視聴しても答えのない事象が殆どである。雰囲気は良かったし、前半のスリラー部分も程よい緊張感があってワクワクしたのだが、スッキリしたい民にとっては合わない映画となってしまった。

レビューを書くにあたって監督のインタビューなども目を通したが、本作においては、悪魔の儀式などはアイコンに過ぎず、親子関係における歪んだ愛とその影響がテーマになっているらしい。確かに、ルースは当初リーを守るために悪魔と契約したわけで、あの結末は『歪んだ愛』の結果でもある。しかし、作中でルースはリーを深く愛していて~二人で慎ましくも楽しく暮らしており~みたいな描写も殆どなく、終盤で唐突に“娘を守るために母が悪魔と契約”という設定が飛び込んできた印象だ。どちらかというと、サタン万歳!めちゃくちゃ陰湿で執念深くて細かくてタチ悪いけど有能だよね!みんな掌の上だもんね!みたいな後味である。とりあえず、一度観たらお腹一杯だった。

基本情報

【公開年】2025年
【監督】オズグッド・パーキンス
【キャスト】マイカ・モンロー、ニコラス・ケイジ、ブレア・アンダーウッド、アリシア・ウィット、キーナン・シプカ
【登場人物】リー・ハーカー(FBI捜査官)、ダル・コブル(ロングレッグス)、ウィリアム・カーター(リーの上司)、ルース・ハーカー(リーの母親)、キャリー・アン・キャメラ(ロングレッグス事件の生き残り)
ポストクレジットなし

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