【考察】映画『ファウンド』|“秘密”を知った少年と知られた兄、二人の結末

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:なし

●時代背景
おそらく時代設定は1980年代で携帯電話もサブスクもない。映画を見たかったら、映画館に行くか、レンタルビデオ店でVHSを借りるしかない時代である。人種差別やホモフォビアがそれと指摘されることなく蔓延していたのは、現実社会と同じようだ。

●学校生活
成績優秀で問題行動はない、らしい。イジメのターゲットにされていたが、要因やきっかけは不明である。体格が比較的小柄で攻撃しやすかっただけかも知れない。そんなマーティにとって、友人と呼べる存在はデヴィッド一人だけだった。共にイジメられるかも知れないリスクを孕みつつも、気の合う『ホラー仲間』としてマーティと一緒にいることを選んだのは、デヴィッドの子供らしい素朴さや素直さからくるものだろうか。彼の存在がマーティにとって心強いものであることは想像に難くなく、だからこそ、後半の悲壮感に繋がる部分もある。

●両親との関係
母親は、マーティに穏やかに接して寄り添うような素振りを見せる反面、仕事で忙しい様子もあり、腹を割って話せる雰囲気はなかった。母親自身、面倒からは逃げるタイプにも見えた。一方父親は、表面上は面倒見が良く見えるものの、人種差別的な発言や人を見下すような物言いをして、威圧的な側面もあった。暴力を振るうな!とマーティを叱る場面でマーティに殴りかかっていたことから、以前も子どもたちに手を上げていた可能性はある。この父親の存在が、スティーヴの精神的問題の原因の一つと見て間違いないだろう。

●マーティにとってのスティーヴ
「普段は優しい」と言っていたし、マーカスのことも素直に打ち明けるなど、年の差の割に仲が良かったように見える。マーティがホラーに惹かれるのは兄の影響もあっただろう。【憧れの存在】だった兄が、秘密を知ってからはそれと同時に【恐怖の対象】となったことが伺える。

●スティーヴにとってのマーティ
スティーヴは、父親の人種差別思想には影響を受けつつも、関係性は良くない。母親との関わりはあまり描写されないが、もしスティーヴもラブレターに気付いていたら、マーティより更に複雑な心境だろう。両親からは『拒絶されている』と感じていたこともあって、唯一、純粋に家族愛を持てる相手がマーティだった。何度もマーティに「お前だけは傷付けない」と言っていたが、正しい愛情表現を知らないスティーヴが自分に言い聞かせているようにも見えた。

●やり返さないのが正しい?
親や牧師など周りの大人はマーティに対し、何をされてもやり返すな、殴り返すなと諭す。これは現実でも一般的な対応にも見えるが、実務的な解決策でないことは明らかだ。だから、マーティも腑に落ちない。そして、スティーヴの「殴り返せ」というアドバイスに従うことを選んだ。いじめた側の社会的制裁に比べると、自分の痛みは遥かに大きく、殴り返さなければ釣り合わない、というスティーヴに共感したからだ。実際、殴り返したマーティは、まるで暴力によって生きる気力を取り戻したかのように見えた。

●殴り返すのが正しい?
殴り返したことで復讐心は満たされ、恐らくいじめの抑止にもなっただろう。しかし、代償もあった。マーティは牧師に見放され、両親に説教され、もはや誰の目にも「優等生」ではなくなった。両親の殺害事件がなかったとしても、マーティはあの時点で多くのものを失っていたのだ。それでも、また同じ場面に遭遇したら、マーティは殴り返したような気がしてならない。決して暴力を正当化するつもりはないが、形式だけの「ごめん」の無意味さや、大人の正義が子どもにとっては時に理不尽であることを考えさせられる展開だった。

●「HEADLESS」
マーティとデヴィッドが視聴した『HEADLESS』という映画は(作中で流れた範囲では)マスクを被った男が女性を鉈で殺したり食べたりするシーンのみで、ストーリー性は皆無に見えた。無意味スプラッタであることにデヴィッドは不満を漏らすが、兄と重なってしまったマーティが気が気でない様子は、見ているこちらにもハラハラ感が伝わる姿だった。なお、本作で殺人のシーンが直接映るのはこの映画内だけである。

●殺害の場面
作中の出来事は基本マーティ視点で描かれ、スティーヴが誰かの頭部を切断する様子は映らない。両親を殺害する場面においても、声しか聞こえない。最初から最後まで、マーティは悲惨な出来事を「found」するものの、現在進行形では目撃していないのである。

80年代のもつ独特の陰湿さと、思春期の少年の鬱屈した感情が、全編に溢れるじめじめした雰囲気にマッチしていた。歪んだ、壮絶な兄弟愛に満ちた作品である。兄がどこでああなったのか、“きっかけ”は分からない。明確な“きっかけ”はなかったのかも知れない。それにより、日常に潜む狂気が演出されていてよかった。一方で、あれだけ犯行を重ねてもフリーダムなスティーヴというのは、非現実的である。警察なんて存在しない世界線だろうか。

互いに秘密を抱えギクシャクする家族、学校ではいじめにあい、どこにも居場所がないマーティに取って、ホラーの世界はある種の現実逃避先だった。だから兄の部屋で生首を見つけても、父のポルノ雑誌と同じような感覚で、見て見ぬフリが出来た。しかし、生首が友人の頭だった瞬間、ホラーが現実に浸食してくる。そして、自分が縛り上げられ、家族が殺され、ホラーは不可避の現実となる。「こんな体験は人を歪ませる」というマーティの言葉で終わっていたが、本当は生首発見の瞬間から歪んでいたとも思える。

ラスト、スティーヴは血まみれ全裸で街の中へと出て行った。果たしてどこまでが彼の計画だったかは分からない。しかし、ここから先予想される未来は、逮捕されて精神鑑定➡精神異常無罪で生涯入院コースか、単純に極刑だろう。マーティも、精神病院か孤児院といった未来しか見えない。どれだけ愛が大きくとも、方法を間違えれば愛した相手を守れないというメッセージとも取れた。それでも、「殺してくれてありがとう」の瞬間、2人の間に確かにあった兄弟の愛と絆を見ると、「全てが間違いじゃなかったのかも」なんて、感覚が狂っていく気がする。人にオススメは出来ないが、インパクトがあって記憶に残る作品だった。

基本情報

【公開年】2012年
【監督】スコット・シャーマー
【キャスト】ゲイヴィン・ブラウン、イーサン・フィルベック、フィリス・ムンロー、ルイー・ローレス、アレックス・コギン
【登場人物】マーティ(小学生)、スティーヴ(マーティの兄)、リサ(マーティの母)、スタンリー(マーティの父)、デヴィッド(マーティの友人)、マーカス(マーティのクラスメイト)
ポストクレジットなし

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