「アナベル 死霊人形の誕生」 (2017年)

ジャンル:ホラー
監督:デイビット・F・サン
キャスト:アンソニー・ラパリア、サマーラ・リー、ミランダ・オットー、ルル・ウィルソン、タリタ・ベイトマン、グレイス・カリー、フィリッパ・クルサード、ステファニー・シグマン
登場人物:サミュエル・マリンズ(マリンズ工房主人)、アナベル・マリンズ(サミュエルの娘)、エスター・マリンズ(サミュエルの妻)、リンダ(孤児)、ジャニス(孤児)、キャロル(孤児)、ナンシー(孤児)、シャーロット(修道女)
ポストクレジット:なし
ポテッチの好き度:60/100(好き)

超ざっくりあらすじ

かつて幼い娘を不慮の事故で失ってしまったマリンズ夫妻は、娘の死から12年の時が過ぎ、二人には広すぎる家に孤児たちを招き入れることにした。そこで暮らすことになったシスター・シャーロットと6人の孤児たち。はじめは広い家に大喜びしていたものの、少しずつ不穏な空気が漂ってくる。そして、少女ジャネットが入ってはいけない部屋に足を踏み入れてしまった時、本当の恐怖が始まる。

ここからネタバレ注意

事実関係・疑問・つっこみ など

●悪魔が憑くのは人間
悪魔は人形=物に取り憑かず、人間に取り憑くものとされている。だから死霊人形と名乗ってはいるが某チ〇イルド・プレイのように悪霊の乗り移った人形が刃物を持って追い掛け回す類ではないし、本作でもアナベル人形は直接人間を殺傷していない。

●アナベル人形の役割
悪魔は、アナベル人形がクローゼットに閉じ込められた際サミュエルたちに干渉できなくなっていた。少なくとも「人間の世界に干渉し始めるツール」としては必要だったと推測する。

しかしジャニスたちが訪れた時点では、人形がクローゼットに鎮座したままでも、周囲に影響を及ぼしていた。たとえば、ジャニスをおびき寄せるために「find me」のメモを置いたり、部屋を開錠する、など。これは、12年の間に悪魔がじわじわと力を蓄えていたことを示唆する。

マリンズ夫妻をコントロール下においていた可能性もある。突然「そうだ、孤児たちを住まわせよう!」という気になったのも、無意識に悪魔の誘惑を受けていたのかも知れない。元々彼らは悪魔が人形に憑く=自分たちの人生に干渉することを了承してしまっていたので、パワーを増した悪魔が彼らを殺すことが出来たとすると辻褄は合う。 

●12年サイクル?
12年前アナベル人形を閉じ込めた時には、いわゆる霊障は収まった。しかし12年の歳月の間に、最初の祝福の効果は切れていたに違いない。聖書の切り貼りをした小さなクローゼットだけでは押さえ込めなかった。そして12年が経ち、孤児たちを迎え入れるイベントをきっかけに動き始めたのだ。

本作のエンディングでは、12年後再びジャニスが凶行に及ぶ描写がある。ジャニスに取り憑いたことでマリンズ工房の外に出ることに成功した悪魔だったが、なぜ12年間沈黙していたのか。もしかすると12年というサイクルに何か悪魔的な意味があるのかも知れないが、その点は明言されていない。

●十字架はむしろ禁忌かも知れない
エスターも、サミュエルも、十字架を持って悪魔に近付いたら返り討ちにあい、左顔面が潰されたり、指をポキポキと折った上で殺されたりした。ドラキュラの延長線で、十字架を持てば悪魔に対抗できる気分になるが違うらしい。別シリーズだが、死霊館においても心霊研究家のエドは十字架で悪魔を挑発する・ ・ ・ ・と言っていた。悪魔を見かけても、安易に十字架で威嚇しない方がよさそうである。

本作で一番インパクトのあるシーンはエスターの半身壁飾りかも知れないが、唐突なシスター・シャーロットの歯磨きシーンも印象深い。歯磨き前に彼女たちは一台の車を見送っている、つまり、あれはサミュエルが死んだその日の出来事ということになる。

人里離れた家の中で、家主の男性が異様な死に様で亡くなったのだ、のんびり口腔衛生に気を使っている場合ではない。そもそも直前にはジャニスも酷い目に遭っていて、異常事態であることは明らかだ。すぐさま子どもたちを連れて外に出る!と騒ぎ立てていい状況だろう。シャーロットの危機管理能力が低いのではないかと疑わざるを得ない。

ジャニスが「(自分は)階段から落ちたんじゃない、目に見えない何かがこの家にはいる、ここには住めない」と必死に訴えたのに、「あなたは弱くない」という話に収束してしまった辺りでも、シャーロットの呑気度が高いと感じたが、そういうタイプの人間なのか、神の御加護を心底信じているから動じないのかは不明。

各作品の事件の時系列としては下表①、映画公開順では下表②の通り。

【死霊館シリーズ】実在の心霊研究家エドとロレインをモデルとした悪魔祓い系ストーリー。
【アナベルシリーズ】エドたちが所有している呪いの人形アナベルにまつわるストーリー。(本作)
【死霊館のシスターシリーズ】シスターアイリーンが主役、1950年代のストーリー。

・死霊館シリーズはどれも単発で観てOK、だが公開順に観た方が細かい部分の繋がりを感じる
・死霊館2を見たあとで死霊館のシスターシリーズを見ると理解が深まる
・死霊館のシスター2は、死霊館のシスターを見てからがオススメ
・アナベル死霊人形の誕生➡アナベルは内容の繋がりがあるが、一方のみでも一応成立する
・死霊博物館は全然毛色が違い単発でも問題ない

感想

リンダは、素直さと賢さの絶妙なバランスを保った好感しかないキャラクターだ。

・アナベル人形が異変の原因だと悟るのが誰よりも早かった
・そして原因排除のために不気味な人形を抱えて夜の井戸に向かった
・シスターが宙に浮き上がろうが、転んで足を引っ張られようが、挫けず逃げ続けた

といった具合に、大人顔負けの判断力を持ち、行動力も抜群の少女である。特に荷物用エレベーターでの逃走劇は、あの状況でも冷静で、ストレスなく応援出来た。無駄なキャーキャーとかない。

一生一緒にいることを誓ったはずのジャニスに襲われ、そして失い、きっと心に負った傷は誰よりも深いだろう。それでも最後の場面で、ジャニスと交換した人形の「ベッカ」を大切に抱える姿に胸を打たれた。キャロルはどうでもいいが、リンダには、素敵な里親が見つかるといいと心から思う。

一方、マリンズ夫妻にはまったく同情できない。悲劇の始まりであるアナベル・マリンズの交通事故に関しても、あんな見通しの良い道で作業中の停車車両がいるにも関わらず暴走してくる車は確かにバカ野郎だが、迫ってくる車の存在にまるで配慮しないマリンズ夫妻も迂闊だ。不慮の出来事とは思うが、まったく防ぐ術がない事故だったとは思えない。更に12年後、償いという自己満足的理由で子どもたちを引き取ることにも苛立った。せめて、巨大な金庫を買ってアナベルをぶち込むくらいのことをしてからなら、もう少し同情の余地もあったが。

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