「プレデター2」 (1990年)

ジャンル:アクション、SF
制作:ローレンス・ゴードン、ジョエル・シルバー、ジョン・デイヴィ
監督:スティーヴン・ホプキンス
キャスト:ダニー・グローヴァー(マイク・ハリガン:主人公/ロス市警刑事)、ゲイリー・ビューシイ(ピーター・キース:特別捜査官)、ルーベン・ブラデス(ダニー・アーチュリータ:ロス市警刑事/マイクの同僚)、マリア・コンチータ・アロンゾ(レオナ・キャントレル:ロス市警刑事/マイクの同僚)、ビル・パクストン(ジェリー・ランバート:ロス市警刑事新任刑事)、ロバート・ダヴィ(フィル・ハイネマン:ロス市警最高責任者)、ケント・マッコード(B・ピルグリム:ロス市警署長)、カルヴィン・ロックハート(キング・ウィリー:ジャマイカ系麻薬組織リーダー)、ヘンリー・キンジ(エル・スコルピオ:コロンビア系麻薬組織)

超ざっくりあらすじ

1997年、気温が40度を超える酷暑のロサンゼルスで、コロンビア系麻薬組織メンバーが惨殺された。その後もロスでは人間離れした所業の事件が起きる上、連邦政府から送り込まれた特別捜査官キースには何やら裏がある様子で、ハリガンは相棒ダニーと共に独断で捜査を進めようとする。しかし、今度はそのダニーに“異星人”の魔の手が迫る。

ポストクレジット有無

なし

好き度

60/100(好き)

ここを【見所】とする

銃、銃、からの、銃。全編を通じて繰り広げられる、そのド派手な銃撃戦が見ものである。

映画序盤では人間(警官)対人間(麻薬組織)だった戦いは、やがて人間対プレデターへと変わっていく。だが、勢いとしては前者も後者に引けを取らない。

映画冒頭では、たまたま白バイが違反車を止めたら麻薬組織のアジトだったことを発端に、警官と麻薬組織メンバーが銃撃戦を繰り広げる。これが本当に激しい。テレビで見ていたら2~3段階音量を下げたくなるくらい激しい。なんせ麻薬組織の面々はとにかく様々な種類の銃器を所持していて、ロケットランチャーに見えるクソデカ武器まで持ち出すのだ。まさにヒャッハーである。その後、アジトでは天井のガラスが割られ、何者かが侵入してきて事態が変わっていく。だが、彼らがとにかく撃ちまくるスタイルは変わらない。相手が見えないとか関係ない、とにかく発砲、それが彼らの流儀らしい。

しかしそれはコロンビア団に限ったことではなく、中盤に登場したジャマイカ団も同様で、仲間が見えない敵からの攻撃を受けた途端、四方八方に撃ちまくる。プレデターの作法として武器を持たない者は襲わないが、そんなルールを知る由もない彼らが武器を手放すわけはなく、むしろ自ら殺されに行くレベルで銃をぶっ放し続ける。

更には、ロスの地下鉄での一コマとして、ランバートとレオナが乗った列車内でギャングが一人のスーツ男に絡むシーンがある。ギャングに脅されたスーツ男は、怖くないぞと言ってバッグから銃を取り出す。ギャングは、しかし、怯むことなく俺の方が大きいぜ、と銃を構える。が、今度はそれを見た他の乗客たちもこぞって銃を取り出してギャングを銃口が取り囲むという展開になる。アメリカならではのコメディシーンだろう。そこへランバートを狙ったプレデターがやってくるわけだが、武器を持った人間だらけなので全員がプレデターのターゲットとなってしまい、一瞬にして殺戮現場へと変わる。

プレデターもバンバン発砲されており、いくつかは当たっていそうにも見えたが、ほぼノーダメである。プレデターは肉体も人類より圧倒的に強いので、人間用の銃では簡単に殺せない。実際、その後ハリガンが牛肉処理場で生身のプレデターに銃を10発ほど撃ちこみまくる描写があるが、一旦倒れたものの(死んだふり?)、再び戦闘体勢に入って人間を真っ二つに出来るくらいには余裕があった。

今回のプレデターとの戦いにおいて鍵となる武器こそレーザーディスクだったが、映画全体を通してみればやはり銃の印象が非常に強い作品だった。プレデターは、暑い戦場を好んでやってくる性質。異常気象でどこもかしこも暑い昨今、銃が氾濫した都市ならばどこでも出没の可能性がある、なんてことになりそうだ。

疑問・つっこみ・考察 ごった煮

①ジャマイカ団のカリスマ、ウィリー
主人公ハリガンの属するロス市警との敵対組織として、コロンビア系とジャマイカ系、2つの麻薬組織が登場した。コロンビア系の組織はスコルピオ団といい、そのボスはラモン・ヴェガという男だったが、ラモンはボスらしい活躍を見せることなく殺されてしまう。

対して、ジャマイカ系のブードゥー団はそれなりのインパクトを残す。まず挨拶代わりに、上述のラモンを裸のまま逆さ吊りにして、胸を切り裂いて殺す。これにはブードゥーマジックで魂を奪う、という意味もあるらしいのだが、後にブードゥー団のメンバーがプレデターに殺されて生皮を剥がれ吊るされる中、一人皮付き全裸で混ざってハリガンたちに違和感を与えることとなる。

その後、キースの行動を訝しんで、裏で何かが起きていると察したハリガンがブードゥー団の元へ共同戦線を申し入れに行くのだが、彼を迎えたブードゥー団のボス、キング・ウィリーはブードゥー教の聖者でもあり雰囲気満点である。ラモンたちを捉えて恐ろしい儀式を施したあのブードゥー団メンバーたちが服従しているらしいが、それも頷ける迫力とカリスマ性溢れた男なのだ。

キング・ウィリーは共同戦線に関してこそハリガンの望む返事をしなかったが、プレデターという存在には既にブードゥーパワーで辿り着いていた。敵が何者かは知らない、別世界から来た存在、殺される時しか奴の顔は見えない、と言い切っていたが、大正解だ。

そして彼の大物ぶりはプレデターも見抜いていたらしい。プレデターはハリガンが去るや否や、瓦礫に次いでビルの上から降りてくると、キング・ウィリーの元へ迫る。しかしジャマイカ団のボスの名に恥じぬ覚悟を見せ、キングは杖に仕込んでいたナイフで応戦の構えを取る。しかし、そんなナイフ一本で敵うわけもなく、その後断末魔の表情を浮かべたまま頭部がお持ち帰りされる展開となった。

それでも、プレデターの方から正々堂々のタイマンを挑まれただけでなく、戦利品の一つとしてカウントされた事実は、彼がプレデターにとってスペシャルだったことを表している。そう考えると、むしろもっと序盤から登場し、ハリガンと絡むなり共闘するなりする流れを見たかった気もする。

②プレデターってこういう奴
方々で指摘されていることだが、本作は、私たちが「プレデターってこういう奴だよね」と認知している形態や習性をはっきり描いたという点で、重要な意味を持つ作品だ。前作でも、プレデターの基本とも言うべき光学迷彩やプラズマキャノンなどは登場していたが、レーザーディスクやスピアと言った武器は実は本作が初登場である。また、妊娠したレオナやオモチャの銃を持っていた子どもを見逃したことから相手を見極めて攻撃対象を決めること=武器の有無だけでなく対象の性質を見ていること、単体で来ていると思いきや、実は見守っている仲間がいた上プレデターにも見た目で様々な個性があること、エイリアンもハントした実績があるっぽいことなど、新たに明らかになった事実は多い。

また、あれだけの仲間がいたのにハリガンと戦っているプレデターに対し誰も助太刀することなく、事が全て終わってから姿を現した様子から、他人の狩りを邪魔しない、或いは、助太刀されることは不名誉であり死んだ方がマシという思想があると伺える。光学迷彩でこっそり後をつけて突然殺すような戦法も取っているので「誇り高い」イメージはないのだが、プレデターたちならではの文化と言うか共同体としての様式が定まっていることが見て取れた。

ところであの宇宙船の飛び立ち方を見ると、到着時もかなりの轟音、振動、その他周囲への影響があったと想像できるのだが、来た時誰も気付かなかったのだろうか。ひょっとして着陸の時はステルスでそっと来ていたのだろうか。それにしても地下に宇宙船を隠しておくのは相当の技術が必要な気がするが、さすプレ(さすがプレデター)ということで納得しておこう。

③今回のメインプレデター
前作と本作に出てくるプレデターに固有の名前はないが、どちらもその主戦場から、ジャングルハンター、シティハンターと呼ばれている。シティハンターは、ジャングルハンターよりも多くの武器を身に着け、駆使し、負傷した際には人の家のタイルを使ってファーストエイドするなどのハイテク技術も見せた。そんなシティハンター、前作とは場所が変わり大都会が舞台となったことで、とにかく殺しの対象がうじゃうじゃいる。だから彼もばったばった殺す。手当たり次第の勢いで殺していくシティハンターは、前作の一人一人ジワジワ殺していくスタイルと比較すると暴れん坊のガキ大将のように見えてしまうが、もしジャングルハンターがロスのコンクリートジャングルで銃器に囲まれる状況にいたら、きっと同様にたくさん殺していたのだろう。

シティハンターは、どうやらハリガンが大好きだったようで、ジャングルハンターがシュワちゃんに見せた執着以上のねちっこさを見せる。冒頭のスコルピオ団との戦いにおいて、ハリガンが車を横づけして単身切り込んでいく姿に、一目惚れしたに違いない。シティハンターはハリガンにロックオンすると、彼のチームメイトを1人ずつ丁寧に殺していく。次はお前だと言いたいのか、全員死ぬ前に止めてみろと言いたいのか、どこまでやったらお前が出てくると試しているのか、真意はプレデターにしか分からないが、麻薬組織や地下鉄の乗客を派手に瞬殺してく姿とは対照的だ。ダニーのネックレスを木に掛けて匂わせをしたのも、なかなか自分に辿り着いてくれない苛立ちからきていたのか。

だからこそ、ようやく一対一に持ち込んだハリガンをあっさり殺すことはしない。たとえばキースをレーザーディスクで真っ二つにしたあと、ハリガンは走って逃げるのだが、プレデターは追いディスクを投げるでもなく、普通に追って行く。そして追い詰めた屋上で、スピアを投げる。だがハリガンは凄い反射神経で躱す。むしろ、一撃で終わらせるのが嫌でわざと外したんじゃないかと勘繰りたくなるくらいの精度で躱す。逆にハリガンはそのスピアを回収し、呼吸を整えているプレデターと心中の勢いで突っ込んでいく。しかし、ハリガンの強運は落下地点を超絶コントロールして、数メートル下のでっぱりに落ちて助かっていた。

その後プレデターとハリガンは、自爆してやるー!やめろよ(腕チョキン)!応急処置して逃げるもん!チョ、待てヨ!という一連を経て、宇宙船内での肉弾戦へと展開していく。そこでも、レーザーディスクというスーパーレアアイテムをずっと所持していたハリガンは強かった。ネットランチャーで壁ドン(?)されてもサクッと逃げるし、リストブレード相手に互角にやり合う。そして決着の時も、ディスクでプレデターの腹を裂いて葬る。

シティハンタープレデターが、ハリガンのどの辺りを見てターゲットと設定したのかは分からない。だがたとえば最後の最後、もう動かなくなったプレデターに留めを刺すことなくディスクを持った手を止めた姿を見ると、プレデターを負かしたのが別の人間でなくてよかったような気がするのだ。まぁ、たまにはプレデターが人間に勝つところも観たいですがね。

雑感

①とても分かりやすいキャラクターたち
ハリガンは、“暴力的性向”、“独断専行型”などと分析されているが、人情には厚く、仲間のためなら上司であっても食ってかかる。乱暴者だが憎めない、仲間思いで有能なデカだ。ダニーは、そんなハリガンをうまく扱える程よい緩さを持ったパートナーだし、レオナは気の強い姉御肌の紅一点、新たにやってきたランバートはすぐ軽口を叩いちゃうお調子者だが根はいい奴。そんな、ベタと言えばベタなキャラクターたちが主役サイドなので、するっと内容が頭に入ってくる良さがある。

対して、キースは立場からして怪しいし、普通に嫌なヤツで分かりやすい。そんな彼が、プレデターがそっぽを向いたまま撃ったプラズマキャノン砲に当たった瞬間は、雑に殺された!と思って喜んだものだ。付け加えるなら、その後再びキースが登場して、なんだ結局生きてたのかよ、とがっかりさせてからのきちんとレーザーディスクで真っ二つにカットという流れは本当に良かった。別にキースも根本は悪人ではなかったのだろう。科学の進歩を純粋に期待し、それ以外が見えなくなってしまっただけとも思える。あと、調子に乗った人間は大体死ぬ。これはホラー映画の鉄則で、アクション映画にも適用される。キースの構成要素のあともう3割くらいが謙虚だったなら、ワンチャン生き残れたはずである。

②体臭って……体臭!?
10年前にジャングルで起きた襲撃を研究し、キースたち特殊部隊はプレデターの生態をかなりのところまで理解していたらしい。プレデターが紫外線しか見えず、防護服で遮断してしまえば体温を“見る”ことが出来なくなると分析、不可視化する策を取った。これは、プレデター側の視点で何度も人間を見てきたこちらとしても、納得の作戦だ。倉庫内で放射能塵を撒いてプレデターを可視化してやろう、というのも、結局はプレデターの野生の勘が働き失敗には終わったが、キースたちが持ち得た情報だけで考えると非常に練られた作戦だっただろう。

だが、今回の作戦で最も私の注意を引いたのは、「体臭感知装置」である。モーションを感知するとか、逆に相手の熱を感知するとかではなく、まさかの体臭。前回の調査で「プレデターはめっちゃ臭う」という証言があったのだろうか。考えてみれば、人間をブシャブシャ殺して返り血を浴び、なんなら背骨頭蓋骨セットを高々と掲げて全身血まみれになったりしているだろうが、当然シャワーを浴びる様子はなく、都会に入ればジャングルよりも海や川で自然に洗い流されることはないだろうし、端的に言って、臭くなる要素しかない。それにしても、装置を屋外に置いて反応するレベルの体臭とはどれほどのものだろうか。「センサーが体臭を感知しました」には、爆笑してしまった。プレデターの推しフレグランスが発売されたら、怖いもの見たさで嗅いでみたい。