「プレデター」(1987年)

ジャンル:アクション、SF
制作::ローレンス・ゴードン、ジョエル・シルバー、ジョン・デイヴィス
監督:ジョン・マクティアナン
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー(アラン・“ダッチ”・シェイファー:主人公/米国特殊部隊少佐)、カール・ウェザース(ジョージ・ディロン:CIA局員)、ビル・デューク(マック・エリオット:ダッチの部隊メンバー)、ソニー・ランダム(ビリー・ソール:ダッチの部隊メンバー)、ジェシー・ベンチュラ(ブレイン・クーパー:ダッチの部隊メンバー)、リチャード・チャベス(ホルヘ・ラミレス:ダッチの部隊メンバー)、エルピディア・カリーロ(アンナ・ゴンザルベス:ゲリラメンバー

超ざっくりあらすじ

ダッチ率いる米国特殊部隊に今回課されたのは、南米のジャングルでゲリラ部隊から捕虜の政府要人を救出するという任務だった。少数精鋭の彼らはCIA局員ディロンと共に乗り込み、ゲリラを瞬く間に制圧する。無事に任務は完了したが、ヘリとの合流地点に向かうまでには険しいジャングルが立ちはだかり、更に追い打ちをかけるようにして突然仲間の一人が襲われた。その瞬間を目撃していた女は「森が襲った」と語るが、果たしてその正体は。

ポストクレジット有無

なし

好き度

82/100(大大好き)

ここを【見所】とする

新たなSFモンスターのアイコンが登場した記念すべき作品で、全編を通したワクワクがたまらない。

初めに宣言しておくと、私はプレデターが大好きだ。アメリカ映画を代表するモンスターの中でエイリアンも甲乙付け難い存在ではあるが、一番好きなのはどちらかと聞かれればプレデターと答えるぐらいには好きである。

まだ映画自体を見慣れていない小学生だった頃、テレビで流れてきた本作をあらすじも知らずに視聴したのが最初だった(当時映倫区分のうんにゃらとか知らなかったです)。その時は、得体の知れない「何か」が、じわじわシュワちゃんの仲間たちを殺していくのが、とにかく怖かった。そしてラストでいよいよ顕になったその素顔にはひっくり返るほど驚いたものだ。シュワちゃんの言葉を借りるなら、なんて《醜い野郎だ》と思うと同時に、一度見たら絶対に忘れられない造形の沼にハマった。プレデターに出会う以前に見たモンスターは、大抵人間に近しい姿をしているか、逆に完全に虫、完全に爬虫類、といった見た目が多かったように思う。そのためプレデターを初めて見た時も無意識的に、全身のシルエットから推測してあのマスクの下には人間的な顔が隠されていると勝手に想定していた。だからこそ、あのおでこ、あの牙、そして口の開き方の衝撃は凄まじかった。そんな見た目のインパクトと、背骨から一気にめきめきと頭まで引っこ抜く残忍さと、人間たちを寄せ付けない圧倒的強さ。それは私に、恐ろしさよりも、もはや憧れに近い気持ちを引き起こしたのだ。

その後大人になるまで、そして大人になってからも何度も繰り返し視聴して、見る度にプレデターが好きになっていくのだが、それと同時に特殊部隊のカッコ良さにも毎回痺れる。成人してから出会った映画の中で、ここまで筋肉isパワー!な映画はあまりない。個人的な映画の趣向もあるが、絶対数が少ないように思う。本作では、彼らの筋肉ムキムキが、底抜けの雄々しさと程よい暑苦しさを見せてくれるだけでなく、このマッチョメンでも勝てない相手なのか……と絶望感を演出する見事なツールとなっている。無駄のないマッチョの使い方なのだ。 ストーリーはまずゲリラに拘束された人質の救出というミッションからスタートする。現地に向かうヘリの中ではいかにも80年代アメリカンな下ネタジョークをかましたりして、CIAと特殊部隊とのピリピリした関係性を描きながらも、こいつらホンマに強いんか?といった余白を残す。しかしそれは、ゲリラのアジトに到着して一変する。こちらも息を止めてしまいそうな緊張感の中で、ダッチは的確に指示を出し、仲間たちはそれに正確に応えていく。そして往年のアクション映画らしいド派手な爆発、からの爆発、そして爆発!!!とドカンドカンしながら、瞬殺とも言える素早さでゲリラを制圧していく。はっきり言って特殊部隊が強すぎの一方的な戦いで、この時点で、コレ何が来てもこいつらに勝てるわけないじゃん、の気持ちになっている。個性も光っており、特にネイティブ・アメリカンのビリーはダッチに次いで印象的だった。誰よりも早くプレデターの存在に気付き、だからこそ誰よりも恐怖を覚えていたが、最後には自らタイマンを張りに行く。体格、筋力、武器の威力などどれを取っても格上の相手に、上半身裸で挑んでいく姿は男の中の男だ。

そんな彼らを映画中盤から翻弄するのが、光学迷彩という最新カモフラージュ技術で姿を隠し、サーマルヴィジョンで周囲をモニターし、優れた武器を駆使して襲ってくる、人間よりもデカく強い生き物、プレデターである。相手から見られないのをいいことに、プレデターは対象をじっくり観察する。たっぷり時間をかけて、じっくりねっとり観察する。たまに音声データも収集して、真似する。そして、どの人間が一番強いか、戦うに相応しい相手かを見極める。ホラー映画やパニック映画の敵と言えば、わけもなく本能のまま暴れまくるとか、人間を捕食しようとするとか、地球を侵略しようとするとかの狙いがあって襲ってくるパターンが殆どだったが、プレデターは違う。戦いたくて襲うのだ。だから勝利すれば純粋に喜ぶし、戦利品として頭蓋骨トロフィーも作る。逆に、戦うに相応しくない者なら無駄な殺生はしない、というか相手にしない。そんなクールな戦闘狂モンスターは、プレデターの他にいない(私は知らない)。

公開から数十年が経ち、当時よりも撮影技術は何段階も進んでいるわけで、最新映像に慣れ切った目で今本作を見たら確かにチープに見える部分もある。光学迷彩でノソノソ歩く姿は、多少ダサさすら感じる。しかし、そんなダサさを差し引いても余りある魅力が、この作品には詰まっているのだ。

疑問・つっこみ・考察 ごった煮

①ディロンて多分、不器用
ダッチ率いる特殊部隊は、政府要人救出という任務を受けてわざわざ南米のジャングルまでやってきた。そしてゲリラのアジトへと向かい制圧するが、そこには大臣などいなかった。機密情報を持ったCIA職員の乗ったヘリが襲撃されたというのが真相であり、ディロンの目的は情報の回収(+仲間の救出)だった。それを知ったダッチは、自分たちはCIAの手先じゃないとブチ切れるという展開がある。

ディロンは、ダッチと“再会”した描写があり、プレデターとの本格的な戦いが始まってからはそれなりの戦闘力を見せていることから、ダッチと共に特殊部隊にいた過去もあるようだ。そんな彼だからこそ、CIAの機密情報を回収するのを手伝ってくれ、と正直に頼んだところでダッチが動かないことも把握していたのだろう。それにしてもだ。バレた時の開き直りぶりは歴史に残る酷さで、俺は目覚めた!お前たちは道具だ!だから俺もお前たちを使った!とド直球に言い放ってしまうなど、どう考えても要領が悪い。少なくともあの時点ではまだゲリラのアジトにいるわけで、機密情報を持ち帰るまでが遠足、と考えるなら、無事帰還するまではダッチたちと円満な状態を維持する方が得策である。本当に腹黒い人間なら、きっと違う立ち回りをしていただろう。逆にその不完全さといういか、不器用さが、彼の憎めないところでもある。

実際、ディロンは姑息で嫌な奴という訳でもない。マックと共にプレデターを追跡していたシークエンスでは、ディロンはマックに対し、お前は這って行って近づいたプレデターを殺せと命じる。つまり、自分が囮になると言っているわけだ。残念ながら、這って近づいた方のマックが先に殺されてしまい、プレデターと直接対峙したディロンも腕を飛ばされることになるのだが、それでも、片腕で最後まで戦う気概は素晴らしかった。短いシーンではあったが、ディロンの人間性が遺憾なく表現されていたように感じた。

②マックの頭は再生します
上述の通り、終盤ディロンとマックがプレデターを追いかけていたシーンで、残念ながらマックは頭を派手にぶち抜かれてしまう。しかし、マックの死を知らないディロンは小さな声でマックを呼び続ける。当然返事はなく、ディロンが様子を見ながらそっと近づくと、なんとそこにはマックの死体が!!!という流れなのだが、先ほど頭が完全に爆散して死んだマックとディロンの目が合う演出は、どう考えても脚本ミスだろう。というか、撮影中誰も気付かなかったのだろうか。もうこれは、マックへの追悼とご愛敬と思って受け入れるしかない。

③今回のプレデター
今回登場したプレデターは、一般にジャングルハンタープレデターと呼ばれている、とてもオーソドックスなスタイルのプレデターだ。トレードマークとも言えるマスクを装備、左肩にはプラズマキャノン、右腕にはリストブレードガントレット、左腕にはコントロールパネル内臓ガントレットを装着した、定番のスタイルで登場する。(今でこそ聞きなれた)krkrkrkrという顫動音を鳴らし、時折、人間の言ったセリフを真似して発したりする。彼らの言語で話しているのは聞いたことがないが、独自の文字を使用しており、自爆装置の起動後はカウントダウンのような表示がされていた。以降のプレデターシリーズでも繰り返し出てくる定番武器や道具だが、やはりこのプレデターがオリジンだからか謎のアドバンテージを感じる。

他のプレデターシリーズを見たあとに本作に戻ってくると、付近に宇宙船の気配すらなく、単独で狩りを楽しんでいたらしいジャングルハンターという存在はむしろレア物に思われる。アンナが劇中語っていた“悪魔”の話が同一個体を指しているのなら、よほどこの場所が気に入って、何度も狩りに訪れていたのだろう。別に知り合いがいるわけでもないけど毎年同じ国に海外旅行する同僚、みたいな感じだ。

ちなみにジャングルハンターが単独行動していたため、ダッチはあんなに頑張ったにも関わらず報酬を貰えなかった(2作目、AVPでは、それに値すると見なされた人間にプレデターが武器を渡す)。ダッチの奮闘ぶりはスピアレベルの武器が与えられても良いレベルだろう。というか、あのスピア、私も欲しい。寝っ転がったままジャキン!として部屋の電気を消したりする無駄遣いをしてみたい。

雑感

①実はそんなに出てないプレデター
映画序盤は、サーマルヴィジョンでプレデター“が”見ている映像こそ何度もあるが、あくまでも「正体不明の何かがいる」という気配がメインで描かれている。得体の知れない何かがずっとダッチたちを監視するように見続けている。そして姿を見せないまま、仲間が一人、また一人と命を落とす。そんなジワジワ系の怖さが続き、開始50分を超えた頃にようやく、その“何か”が姿を見せるのだ。

その後マックが目を凝らして見つめる中、ゆっくりと初めて人間の前でカモフラージュを解いて見せたプレデターの姿は、しかしまだ全貌を見るには足りない。テレビのこちらで見ている我々も、特殊部隊メンバーと同じようにチラリズムでしかプレデターを拝めないからこその緊張感が終盤までずっと引っ張られるのだ。

それには、実はプレデターのスーツが撮影に間に合わなかったので、「プレデターはカモフラージュで自分の姿を隠せる」設定を利用してしばらくプレデターを登場させずに撮影を続けていたという裏話があると聞いたが、むしろ最後にバーーーン!と登場してこそのインパクトというものがあったわけで、結果オーライだったように思える。

②梅干しの種映画
映画には、何度も繰り返し見たくなる作品と、そうでもない作品と、絶対に二度と見たくないし見た記憶さえも消したい作品の3つがあるが、本作は間違いなく何度も観たくなる映画である。その中でも「最後のどんでん返しを知った後に最初から見返したくなる」というジャンルではなく、どちらかと言うと、全部分かりきった上でもう一度噛みしめたい、ずっと味わいたいタイプである。あえて言うなら、梅干しの種をずっとしゃぶり続けていたいあの感じに似ている。

本作のジャンルは基本的にはアクション/SFに分類されるが、たまにホラーにも引っ掛かったりする。実際、子どもの頃は普通に怖かった。だが今の楽しみ方としては怖さを味わいたいというよりも、この独特な“熱さ”を繰り返し体感するために見ている。そしてラストで、マジでなんて醜いんだろう!と言いながら、ときめきの気持ちすら抱えてプレデターを拝むのだ。これを書いている今もまた見返したくなっているのだから、もうこれはほぼ恋である。