「アナベル 死霊館の人形」 (2015年)

ジャンル:サスペンス、ホラー
監督:ジョン・R・レオネッティ
キャスト:アナベル・ウォーリス、ウォード・ホートン、トニー・アメンドーラ、アルフレ・ウッダード、ケリー・オマヒー、ブライアン・ホウ、エリック・ラディン
登場人物:ミア・フォーム、ジョン・フォーム(ミアの夫)、ペレズ(神父)、エブリン(書店店員)、シャロン・ヒギンズ(ミアの隣人)、ピート・ヒギンズ(ミアの隣人)、クラーキン(刑事)
ポストクレジット:なし
ポテッチの好き度:50/100(普通)

超ざっくりあらすじ

新たな命の誕生に向け穏やかな準備期間を過ごしているフォーム夫妻。夫ジョンは、妻ミアのために入手困難なアンティーク人形をなんとか手に入れプレゼントした。喜んですぐさま棚に飾り幸せを噛みしめるミアだったが、その晩から、予想もしなかった恐怖が始まる。

ここからネタバレ注意

事実関係・疑問・つっこみ など

●恐怖の人形
夫のジョンが運悪く呪いの人形を引き当ててしまい、事件が発生する。大まかには下記の流れ。
①アナベル人形入手
②アナベル・ヒギンズの襲撃
③人形を介し悪魔が活動開始
④ミアを精神的に追い詰める霊障発生
⑤リアを奪われ、ミアは自死を決意
⑥事情を把握したエブリンが、ミアの代わりに死亡

ラストでアナベル人形は店頭に並んでおり、映画冒頭の看護師へのプレゼントとして購入されていく。

人形自体が動いて事件を起こすタイプではなく、アナベル・ヒギンズという女が召喚した悪魔の“人間界干渉用ツール”が人形である。

●時代背景
本作の舞台となる1960年代後半はヒッピー文化が流行していた。ヒッピーとは、簡単に言えば、反体制運動から生まれたカウンター・カルチャーで、自然回帰・ラブ&ピースな若者たちとそのムーブメントのこと。

劇中のテレビで触れていた「シャロン・テート事件」は実在の事件である。当時チャールズ・マンソンという男が率いていたヒッピー集団「マンソン・ファミリー」のメンバーがシャロン・テート他数名を殺害した。事件を起こしたアナベルがカルト集団に入っているらしい、という事実が犯罪と結び付く十分な下地があったのだ。

ちなみに、アナベルが所属していたとされるカルト集団「羊の使徒たち」は架空の団体とされる。

●アナベルの目論見
ミアが参照した本によれば、悪魔の召喚には【近親者の血】と【無垢な赤子の血】を流す必要がある。

アナベルがその儀式を行おうとしていたなら、ヒギンズ夫妻を殺害したのは、【近親者の血】を流すためだったのだろう。

では、何故ミアは襲われたのか。あの時点ではミアは妊娠中だったので、【無垢な赤子の血】を狙ったわけではないはず。シンプルに考えると目撃者潰しではあるが、そうであれば、まず赤ちゃん部屋へ侵入していたのが腑に落ちない。アナベル人形の不思議な力に呼ばれてあの家に向かったとする方が自然、と考える。

いずれにしても、あの事件を引き金に悪魔はこちらの世界へ干渉できるようになった。アナベル的には目標達成!と言えるのだろう(本人死んだけど)。

●アナベルの霊?
アナベル・ヒギンズの姿をした霊的な存在が何度か確認されるが、最初の事件の時点で、アナベルの霊は消滅していると推測する。“自死以降のアナベル”は、悪魔の仮の姿とするほうが辻褄が合う。エブリンも劇中で触れていたが、死霊館ユニバースでは基本「霊は場所に憑き、悪魔は人に憑く」設定なので、矛盾がない。

●悪魔の能力

◆ダイレクトには殺せない
ミアの恐怖心に比例して力を増していったあとも、「壁や天井に落書きする」とか、「リアを狙ってポトポト本を落とす」みたいな子供だまししかしない(神父には当たりが強かったが)。そのため、この悪魔は直接的には人間を殺せない設定と思われる。作中での「人間側が魂を渡すことを承諾しなければ勝手には奪えない」という話とも整合性がある。
◆幻覚作用
リアがいない!悪魔に奪われた!と大騒ぎしていた間、リアはずっとあの場に居たと推測する。要するに、幻覚と同じような作用で“大人にはリアが見えていない”だけ。さくっと人間をどこかに空間転移させられる力を持つなら、もっと他に手っ取り早い方法があるはず。

●アナベル人形の必要性
この悪魔は、「誰かが所有している物を介する」+「持ち主に媒介の許可を得る」条件を満たさないと人間に影響を及ぼせないと推測する。媒体となる何かさえ封じ込めればいいというのも、理屈が通る。作中では、アナベル・ヒギンズがアナベル人形への干渉を許可していたと見られる。

事件後、早く誰か買ってくんないかな~と大人しく棚に座っている悪魔/アナベル人形はいささかシュールだが、あの時点では誰の所有物でもない上に周囲に作用できるほどの力を持っていなかったため、「骨とう品店で大量殺人」みたいな事件には発展しなかったのだろう。

●悪魔の正体は
本編中で明言されないが、ミアが参照している本に「マルサス」の記載がある。そのためファンの間でこの悪魔はマルサスと呼ばれているようだ。マルサス君は、ミアの魂をあんなに狙ってたくせに、エブリンが代わりに差し出して満足したんだね、尻の軽い悪魔だね。

各作品の事件の時系列としては下表①、映画公開順では下表②の通り。

【死霊館シリーズ】:実在の心霊研究家エドとロレインをモデルとした悪魔祓い系ストーリー。
【アナベルシリーズ】エドたちが所有している呪いの人形アナベルにまつわるストーリー。(本作)
【死霊館のシスターシリーズ】シスターアイリーンが主役、1950年代のストーリー。

・死霊館シリーズはどれも単発で観てOK、だが公開順に観た方が細かい部分の繋がりを感じる
・死霊館2を見たあとで死霊館のシスターシリーズを見ると理解が深まる
・死霊館のシスター2は、死霊館のシスターを見てからがオススメ
・アナベル死霊人形の誕生➡アナベルは内容の繋がりがあるが、一方のみでも一応成立する
・死霊博物館は全然毛色が違い単発でも問題ない

感想

幽霊要素、カルト要素、からの、悪魔出現という、オカルトホラーのエッセンスをいろいろ取り入れて散漫になった、そんな印象を受けた。根性論で対処しようとしていた神父は、いざ動き出したと思ったらあっさり吹っ飛ばされて負傷する。ガイド的役割のエブリンも、悪魔に有効な対抗手段は持っておらず友情パワーで代理死する。そうして対悪魔の素人しか登場しない本作は、ハッピーエンドの皮をかぶって唐突に終わった。

単体の映画としてやや説得力に欠ける展開が多く、アナベル人形の不気味さと、何回トライしても地下で開くエレベーターの、コントみたいなくだりだけが記憶に残るような仕上がりだった。ボタンをガチャガチャ、ドアがチーン、ハイまた地下ですぅ!のテンポの良さに、「いやそのくだり何回やんねん!」とツッコミを入れたのを覚えている。

アナベル人形は引き攣り笑いみたいな表情のビスクドールでそもそも不気味だ。なので、レア物らしいが喜んで受け取るミアに共感出来ない。人形の並んだ棚が本作で最もホラーに見えたし、こっそり覗いてる悪魔の方が、まだ可愛い気がした。ちなみに、実際のアナベル人形はラガディ・アン人形(布製)だが、見た目は本家の方が可愛いと感じた。

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