
ジャンル:ホラー、アクション
制作:ジョン・デイビス、ゴードン・キャロル、デビッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、ティエリー・ポトク
監督:ポール・W・S・アンダーソン
キャスト:サナ・レイサン(アレクサ・“レックス”・ウッズ:主人公/環境工学者)、ラウル・ボヴァ(セバスチャン・ウェルズ:考古学者)、コリン・サーモン(マックス・スタッフォード)、トミー・フラナガン(マーク・ヴァーハイデン)、ユエン・ブレムナー(グラハム・ミラー)、ランス・ヘンリクセン(チャールズ・ビショップ・ウェイランド:ウェイランド社社長)
超ざっくりあらすじ
南極で突如発生した熱源の謎を探るため、ウェイランド社が各分野のプロフェッショナルを招集した。熱源を辿り南極地下の構造物へと向かった面々は、ピラミッドによく似たその建物の中に人類とは全く違う生命体の痕跡を発見する。そして、人類、狩人、宇宙トカゲによる三つ巴の戦いが始まるのだった。
ポストクレジット有無
なし
好き度
86/100(大大好き)

ここを【見所】とする
これまでにないたっぷりボリュームで、ヒーローポジション・プレデターの戦いが拝める。
プレデターは根っからのハンターであり、これまでの作品に置いても、孤高の残忍な狩人的側面が強く押し出されていた。だが、今回は違う。中でもスカープレデターは、まるで少女漫画からホラー映画の世界に転生してしまったかのような勢いで違う。本作のメインプレデター3体は成人になるための儀式としてエイリアン狩りをしにきた未成年プレデターという設定なので、ジャングルで単身特殊部隊とやり合ったプレデターや、ロスで警官から麻薬組織まで一挙に狩りまくったプレデターと比べると、内面に丸さというか、甘さというか、ハンターとしてそぎ落とすべき何かが残っているのかも知れない。いずれにしても、スカーはとても人間臭さを感じるプレデターなのだ。
プレデターは基本、敵として値しない人間は相手にしない。今回ウェイランドの体内に病巣を見て取ったときも、一時は放置して立ち去ろうとした。未成年であってもその基本には忠実だ(その後ウェイランドが武器を持って攻撃したので、やれやれ感を漂わせつつ殺していた)。また、背後に忍び寄るゼノモーフを振り返りざま手裏剣で頭ちょんぱする、飛び掛かるチェストバスターを素手でキャッチしコキッと殺すなど、一定水準の戦闘スキルも当然持ち合わせている。
その上で、レックスとの関わりを通じてこれまでのプレデターとは全く違う一面が描かれていた。たとえば、レックスのためにエイリアンの尻尾を工作してあげるシーン。武器と防具を手作りしてあげる行為自体もだが、その過程で、エイリアンの頭を突いてふざけるくだりがある。ジョークも分かるプレデター。爆弾をセットしている最中、不思議そうにしているレックスに「ここ、ばーん、するやで」とジェスチャーで伝えたりもする。相手の立場になってコミュニケーションが取れるプレデター。ここまでいくと、もはやまったくプレデターらしくない気もする。だが、これはこれで若さが感じられてとても良い。
本作はそんな若きプレデターたちが、完全無欠生物エイリアンに立ち向かって成長していく様子が見られるプレデター版青春ムービーとも言える一作なのだ。
疑問・つっこみ・考察 ごった煮
①エイリアン、地球にいたんだ
上述の通り、本作では『成人の儀式として南極で冷凍保存したエイリアンと闘うために100年に一度プレデターが来る』設定が追加された。それはつまり、地球にそもそもエイリアンが存在していたことになる。
クイーンエイリアンは凍結された上に鎖でがっしり固定されており、ピラミッド内の仕掛けを発動させることでその凍結が解除され産卵を始めるのだが、今回は酸性の体液で鎖を断ち切る暴挙に出てまんまと脱走している。場合によっては、クイーンエイリアンが野に放たれた可能性があったのだ。本作より前に公開されていたエイリアンシリーズ(初代~エイリアン4まで)では、リプリーがウェイランド社の薄汚い陰謀に必死に抗い、エイリアンの地球上陸をなんとか避けようと戦ってきたわけで、南極の地下深くとは言え地球上にエイリアンが居たとなると、なんだかあの戦いに水を差されたような気持ちは否めない。
とはいえ、整合性がないわけではない。初代のエイリアンは2122年、本作は2004年が舞台となっている。今回無事にクイーンが南極で死んだことで少なくとも一度地球上のエイリアンが絶滅、しかし120年後、再びエイリアン襲来の危機を迎え、それをリプリーが阻止した流れとも読み取れる。むしろ、ウェイランド社側がエイリアンの存在を知り確保を目論んだことの裏付けとなる一作になったともいえるだろう。ちなみに本作では、チャールズ・ビショップ・ウェイランドがウェイランド社の社長という設定となっており、エイリアンシリーズで登場するアンドロイド“ビショップ”はチャールズ社長をモデルとしていたことが分かる。(後のエイリアンシリーズで登場するウェイランド・コーポレーションの創設者はピーター・ウェイランドという別人なので、子孫もしくは親族が別会社を創設した設定なのかも知れない)
②ピラミッドの謎……謎?
レックス一行がピラミッドへと足を踏み入れた際、仕掛け板を踏んだことでエイリアン覚醒スイッチが入ってしまった。また、石棺に入ったプラズマキャノンを取り出してしまったことでトラップが作動し、ピラミッドの内部が移動を開始する。それによってメンバーが分断され、人間側はピンチに陥る。
それに対し、考古学者セバスチャンは「彼らはメートル法を使っていた。つまり10進法だ。だから、10分ごとにピラミッドが動くんだ」と考察する。なんでだよ、と半笑いで聞き流したが、これがまさかの正解。その後10分おきに壁や床が移動して内部構造が変化していく。
そもそもこの作品に謎解きミステリー要素は求めていないので(こちらは主人公たちよりも敵の正体を知っているレベル)、あのくだりは特段いらなかったようにも思う。更に言うと、出口付近は「くそう! ここが出口のはずなのに!どうして出られないんだ!」みたいなこともなくスルッと外に出られてしまうので、トラップ自体もなんだか微妙に感じてしまった。ただ、10分置きに移動することで、人間が一人、また一人と脱落していくので危機感は演出されており良かった。
③今回のプレデター
本作では、未成年3体のプレデターがメインで登場している。
まずは、チョッパープレデターと呼ばれる個体だが、残念ながら彼はなぜ「チョッパー」なのかが描かれる間もなく退場することとなる。背中に頭蓋骨を背負った姿は、お気に入りのおもちゃをどこにでも持っていく子どもと重なる可愛さもあり、見た目のインパクトもあったのだが、グリッドエイリアンと呼ばれるボス格のエイリアンに瞬殺されてしまったのだ。もっとどんな戦い方をするプレデターなのかを見る時間が欲しかったが、これによって、エイリアンの個の強さが印象付けられることとなる。
2体目、ケルティックプレデターは、チームでやってきた3体のリーダー格である。成人の儀式のためにエイリアンを狩りに来たものの、先客がいたことで仕方なく手始めに人間狩りをすることとなるのだが、ピラミッドへ向かわず地上に残った面々をザクザクと秒速で殺していった個体こそがケルティックプレデターだ。その後ピラミッド内でも、勝手にプラズマキャノンを持ち出した人間に激オコして、回収に向かう。そしていよいよレックスたちと対峙したと思ったところで、チョッパープレデターがエイリアンに殺されてしまい、狙いをそちらへとシフトする。プレデター仕返しのターンキター!と思わせる流れでグリッドエイリアンをぶん投げる。ぐるんぐるん振り回して柱にバンバン叩きつける。乱暴な子である。しかし、猛攻空しく、留めを刺す直前でプレデターのネットを酸で溶かしたグリッドエイリアンが形勢逆転し、インナーマウス一発でやられてしまった。直前に、自分の防具が体液で溶けるのを見て慌てて脱いでいる描写があったが、エイリアンが酸性の体液を持っていることを知らなかったようにも見える。未成年であるが故か経験不足のためか、「防具が溶けたならネットも溶かされるかも知れない」というところまで頭が回らず油断してしまったのだろう。ちょっと短気っぽくて暴れん坊な感じが滲み出ており、わりと好きな個体だったので、早々の退場は残念だった。
そして、3体目は最も活躍の場が多かったプレデターとなる、スカープレデターだ。見た目こそ大して特徴がない(失礼)プレデターだったが、終盤ほぼ出ずっぱりで戦う出番の多さからAVPを代表するプレデターとなった。今回レックスと共闘したスカーは終始かっこいいアクションで見所だらけではあるが、最も痺れたシーンは、やはり終盤のクイーンエイリアンとの戦いの場面だ。貯水タンクの下へ逃げ込んだレックスを、クイーンエイリアンはタンクに体当たりして追い詰める。万事休す!と思われた時、突如スカープレデターがクイーンの背後から高らかに飛び上がり、空中で耐久し、反動をつけてから、クイーンの頭部をスピアで突き刺す。正直、このモーションだけでスカープレデターの虜になったと言っても過言ではないほど、痺れるかっこ良さである。ブルーレイで何度巻き戻して観たか分からない。このシーンは最高の見所となっているので、いないとは思うが、万一見逃してしまった人がいたら再視聴して確認して欲しい。
ちなみに、ラストのシーンでレックスの奮闘を称えてスピアを差し出すプレデターはエルダープレデターである。エルダープレデターはシリーズを通して数回出ており、毎回同一個体か不明だが、青い髪が特徴的で、貫禄のある振る舞いを見せる年長者である。
雑感
①タイトル以上でも以下でもない、それがいい
ホラー映画好きならば絶対に避けて通ることのできない二大モンスター映画シリーズ、エイリアンとプレデター。両作におけるSFの塩梅や世界観、キャラクターの造形を見れば、掛け合わせの相性がいいことは請け合いで、ストーリー以外の不安要素はないに等しい(エイリアン3の残念CGが脳を過ったがエイリアン4で巻き返したのでヨシとする)。逆に言うと、ストーリー次第ではエイリアンの良さとプレデターの良さを相殺し、あまつさえ棄損し得る——要するに大コケし得る。果たして本作はどっちに転ぶのか、そんな不安と期待を抱えて、いざ実食した結果、私としてはかなり満足度の高い作品だった。製作費6,000万ドルに対し、興行収入が約1億7,000万ドル超という結果を見れば、数字的にも成功と言えるのではないだろうか。
欲を言えばもっと両者のバトルが観たかった気はするが、尺とドラマ性のバランスを考えれば十分に描かれていたと思う。『成人の儀式として南極で冷凍保存したエイリアンと闘うために100年に一度プレデターが来る』という新設定については賛否分かれるところだが、エイリアンとプレデターを共存させ、尚且つ人間と閉鎖空間で戦うという流れに持っていく前提として違和感はないだろう。
どちらのモンスターも基本の生態などはオリジナルを踏襲していたし(エイリアンの成長速度は少し気になるところもあるが)、制作においても肉感漂う実写を前面に押してCGはそこにうまく溶け込んでいた。映像的にもこれまでのシリーズと大きくかけ離れることなく、良い意味で期待通りの絵が、そこにはあった。
②エイリアン派VSプレデター派
既存作品の主役同士をクロスオーバーで敵対させる場合、既にいる両者のファンが納得する落としどころを見つけるのは難しいように思う。きのことたけのこが争って単純にきのこが勝ったとしたら、私は怒髪冠を衝くことだろう。
その視点でも、本作はうまく決着をつけたのではないだろうか。最終的にクイーンエイリアンは南極の海の藻屑となり、プレデターはクイーンを倒す直前に食らった攻撃で致命傷を負って、息絶えた。プレデター側は人間の加勢もあったわけで、「今回はほぼ引き分けだがレックスがいなければエイリアンが勝っていた可能性が高い」といった匂わせをして、上手に幕を引いていたように思う(プレデリアン?なんの話ですかそれは)。あえて言うなら、序盤で2体のプレデターがさっさと退場しスカープレデターの独壇場となるよりは、もっとバランスよく3体の出番を配分してくれても良かったのではという思いもあるが、エイリアンが完全生物であることと人間という邪魔が入った事実を踏まえると仕方ないのかも知れない。
しかし、両モンスターの魅力は安定感ある演出で発揮されており、どちらのファンも楽しめる要素が多かった。かっこいいシーンは、時にスローモーションで、時にたっぷりの尺で魅せてくれるし、エイリアンやプレデターの息遣い、粘液の痕跡や光学迷彩のチラつきなど、「来るぞ来るぞ」のわくわく感が満遍なくちりばめられていた。初代エイリアンや初代プレデターを観た時の、なんだか分からないが何かやべぇのがいる、という恐怖こそないものの、見せ場満載のアクションシーンを味わうことが出来る、何度も観たい作品である。
かっこいいシーンの一例
・エッグチェンバーからチェストバスターがぴょーんするシーン、スローで良い
・プレデターが光学迷彩発動しつつジャンプして反対の壁に移動するシーン、ここもスローで良い
・レックスをリストブレードで刺そうとしたプレデターを、背後のエイリアンが尻尾で一突きするシーン、シンプルに良い
・からの、プレデターの光学迷彩が解けてゆっくりエイリアンと向き合うことになるシーン、痺れる
・スカープレデターがクイーンの頭にスピアぶっ刺すシーン、無限ループ必須レベルで良い



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