【考察】映画『アナベル 死霊人形の誕生』|12年越しに引き起こされた呪いを紐解く

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり(軽微)、子ども被害:あり、動物被害:なし

●過去の悲劇と現在の事件
作中では過去と現在、大きく2つの事件が描かれている。①アナベル・マリンズの事故後、アナベル人形を介して呪いが発動し、エスターがケガを負う事件と、②12年後にやってきた孤児たちの一人、ジャニスが呪われる事件である。どちらも人形を介して発生したもので、同じ“悪魔”が裏で手を引いており、最終的にジャニスがその悪魔に憑かれるエンディングとなった。

●悪魔が憑くのは人間
悪魔は人形=物に取り憑かず、人間に取り憑くものとされている。だから死霊人形と名乗ってはいるが某チ〇イルド・プレイのように悪霊の乗り移った人形が刃物を持って追い掛け回す類ではないし、本作でもアナベル人形は直接人間を殺傷していない。

●アナベル人形の役割
ではなぜ、アナベル人形が必要なのか。悪魔は、アナベル人形がクローゼットに閉じ込められた際サミュエルたちに干渉できなくなっていたことから、少なくとも「人間の世界に干渉し始める・・・・・・ツール」としては必要だったと推測する。

しかしジャニスたちが訪れた時点では、人形がクローゼットに鎮座したままでも、周囲に影響を及ぼしていた。ジャニスをおびき寄せるために「find me」のメモを置いたり、部屋を開錠するといった行為は、悪魔がすでにクローゼットを越えて干渉できる状況を表しており、12年の間にじわじわと力を蓄えていたことを示唆する。

マリンズ夫妻をコントロール下においていた可能性もある。突然「そうだ、孤児たちを住まわせよう!」という気になったのも、無意識に悪魔の誘惑を受けていたのかも知れない。元々彼らは悪魔が人形に憑く=自分たちの人生に干渉することを了承してしまっていたので、パワーを増した悪魔が最終的には彼らを殺すことさえ出来たとすると辻褄は合う。 

●12年サイクルの謎
12年前アナベル人形を閉じ込めた時には、いわゆる霊障は収まった。しかし12年の歳月の間に、最初の祝福の効果は切れていたに違いない。聖書の切り貼りをした小さなクローゼットだけでは押さえ込めなかった。そして12年が経ち、孤児たちを迎え入れるイベントをきっかけに大々的に動き始めたのだ。

本作のエンディングでは、12年後再びジャニスが凶行に及ぶ描写がある。ジャニスに取り憑いたことでマリンズ工房の外に出ることに成功した悪魔だったが、なぜ12年間沈黙していたのか。もしかすると12年というサイクルに何か悪魔的な意味があるのかも知れないが、その点は明言されていない。ちなみに、12年後のアナベル人形について描かれているのが、前作の『アナベル 死霊館の人形』である。ジャニスのその後も見られるので、もし本作を先に視聴していた場合には、是非その目で確認して欲しい。

●この悪魔に十字架はむしろ禁忌
エスターもサミュエルも、十字架を持って悪魔に近付いたら返り討ちにあい、左顔面が潰されたり、指をポキポキと折った上で殺されたりした。ドラキュラの延長線で、なんとなく十字架を持てば悪魔に対抗できる気分になるが、違うらしい。別シリーズだが、死霊館においても心霊研究家のエドは十字架で悪魔を挑発する・ ・ ・ ・と言っていた。悪魔を見かけても、安易に十字架で威嚇しない方がよさそうである。

本作で一番インパクトのあるシーンはエスターの半身壁飾りかも知れないが、唐突なシスター・シャーロットの歯磨きシーンもやたら印象深い。

歯磨き前に彼女たちは一台の車を見送っている、つまり、あれはサミュエルが死んだその日の出来事ということになる。人里離れた家の中で、家主の男性が異様な死に様で亡くなったわけで、のんびり口腔衛生に気を使っている場合ではない。そもそも直前にはジャニスも酷い目に遭っていて、異常事態であることは明らかだ。すぐさま子どもたちを連れて外に出る!と騒ぎ立てていい状況だろう。シャーロットの危機管理能力が低いのではないかと疑わざるを得ない。

ジャニスが「(自分は)階段から落ちたんじゃない、目に見えない何かがこの家にはいる、ここには住めない」と必死に訴えたのに、「あなたは弱くない」という話に収束してしまった辺りでも、シャーロットの呑気度が高いと感じたが、そういうタイプの人間なのか、神の御加護を心底信じているから動じないのかは不明。

各作品の事件の時系列としては下表①、映画公開順では下表②の通り。

本作はアナベルシリーズ第二弾にして、アナベル人形の出自を描いた作品となる。

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リンダは、素直さと賢さの絶妙なバランスを保った好感しかないキャラクターだった。

・アナベル人形が異変の原因だと悟るのが誰よりも早かった
・そして原因排除のために不気味な人形を抱えて夜の井戸に向かった
・シスターが宙に浮き上がろうが、転んで足を引っ張られようが、挫けず逃げ続けた

といった具合に、大人顔負けの判断力を持ち、行動力も抜群の少女である。特に荷物用エレベーターでの逃走劇は、あの状況でも非常に冷静でストレスなく応援出来た。無駄なキャーキャーとかない。

一生一緒にいることを誓ったはずのジャニスに襲われ、そして失い、きっと心に負った傷は誰よりも深いだろう。それでも最後の場面で、ジャニスと交換した人形の「ベッカ」を大切に抱える姿に胸を打たれた。キャロルはどうでもいいが、リンダには、素敵な里親が見つかるといいと心から思う。

一方、マリンズ夫妻にはまったく同情できない。悲劇の始まりであるアナベル・マリンズの交通事故に関しても、あんな見通しの良い道で作業中の停車車両がいるにもかかわらず暴走してくる車は確かにバカ野郎だが、迫ってくる車の存在にまるで配慮しないマリンズ夫妻も迂闊だ。不慮の出来事とは思うが、まったく防ぐ術がない事故だったとは思えない。更に12年後、償いという自己満足的理由で子どもたちを引き取ることにも苛立った。せめて、巨大な金庫を買ってアナベルをぶち込むくらいのことをしてからなら、もう少し同情の余地もあったが。

基本情報

【公開年】2017年
【監督】デイビット・F・サン
【キャスト】ステファニー・シグマン、タリタ・ベイトマン、ルル・ウィルソン、グレイス・カリー、フィリッパ・クルサード、アンソニー・ラパリア、サマーラ・リー、ミランダ・オットー
【登場人物】シャーロット(修道女)、ジャニス(孤児)、リンダ(孤児)、キャロル(孤児)、ナンシー(孤児)、サミュエル・マリンズ(マリンズ工房主人)、アナベル(サミュエルの娘)、エスター(サミュエルの妻)
ポストクレジットなし

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