【考察】映画『ゴーストシップ』|40年の時を経て発見された豪華客船の秘密とは

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:なし

●突如舞い込んだ仕事
サルベージ船アークティック・ウォリアー号の面々が仕事終わりの一杯を楽しんでいると、謎の男が仕事を持ちかけてきた。それはベーリング海沖を漂流している船の調査をして欲しいという依頼だった。本作はその船内で怪奇現象に遭遇するというのがメインのストーリーである。ちなみに、簡単に言うと、なんらかの事情で航行不能になった船やその積み荷を回収するのがサルベージ船の役割である。

●胸ときめくマーフィーたち
船に近づくと、40年前に突如姿を消したイタリアの豪華客船アントニア・グラーザ号であることが判明する。海事法では船は発見者のものとなるらしく、一同はウキウキする。しかし、そのせいで『ライバルに気付かれたくない』という心理が働き、当局に知らせようと言うグリーアを制する流れとなる。もしこの時点で変な欲を出さず正直に報告していたら、物語の結末も変わっていたかも知れない。

●船に潜む幽霊
いざ船に乗り込むと、冒頭の映像でケイティが遊んでいたアルファベッドのブロックが勝手に動き“船へようこそ”と並んだり、エップスたちが立ち去ったあとでプールに大量の血が流れ込んだりと、彼らの見えていないところで怪奇現象が続々スタートする。しかし、本作は船に取り残された幽霊たちが悪さをする話ではない。むしろ幽霊たちの多くは被害者で、黒幕はマーフィーたちを誘い込んだ男、ジャック・フェリマンだった、というプチどんでん返しが待っているのである。

●フェリマンの正体
終盤ペラペラと喋っていたフェリマンの話をまとめると、彼はサタンに仕える【魂の回収屋】で、要するにパシリである。人間の魂に“悪の刻印”を焼き付けることが可能で、刻印を押した魂は支配下における。しかし、刻印は手当たり次第押せるわけではなく、そもそもその人間の性根が悪くないとダメらしい。とはいえ、刻印がない人間であっても死後フェリマン/船から逃げられるわけではなく、エップスに真実を伝えようとして妨害されたケイティのように、所謂監視状態にはあるようだ。

●魂の回収屋ってなに
魂の回収屋は船一杯分(何人分かは不明)の魂を集めてサタンに送るのが仕事だ。船が浮いている間は、“悪の刻印”がない魂も船に留めておける。船が沈没すると、支配下にない魂には逃げられる。今回、アントニア・グラーザ号にデカい穴が開いてしまったため、マーフィーたちを誘い込み、船が沈む前に修復させようとしたのである。フェリマンは、魂の拘束をしたり幻覚を見せたりはできても、物理的に船を修復する能力はないらしい。なお、魂回収後の死体は不思議な力によって処理されるらしく、大量虐殺の細切れ遺体が甲板で発見されるような事態にはならなかった。一方、死後3週間ほどと思われる新しい遺体はそのまま残されていた。船の悪魔パワーをもってしても死体の処理には時間がかかるのか、魂の回収作業には時間がかかるのか、その辺りは不明である。

●フェリマンがしてきたこと
・ローレライ号で大量虐殺、生き残った人間のフリをする
・そこから救出される形でアントニア・グラーザ号に乗り込む
・アントニア・グラーザ号で大量虐殺
船内に、死後3週間程度の死体が発見されていたことから、アントニア・グラーザ号が“消息不明”になって以降、何度かマーフィーたちのように人間を誘い込んでいたと思われる。

●フェリマンのその後
フェリマンは、なんやかんやでエップス以外のサルベージ船員を全員殺害することに成功した。しかし、結局爆発により船は沈没、回収した魂は解放されてしまった。フェリマンもその爆破時に死んでしまった、かと思われたが、本編ラストでエップスを救助した別の船へと金塊の箱を運んでいた。金塊の箱はサタンに【魂を運ぶ船の目印】兼【人間を釣る餌】と思われるので、『この船が次のターゲットだよ』というメッセージなのだろう。また、船の爆発レベルでも無傷なところを見ると、フェリマンは単なる肉体的ダメージだけでは殺せない存在と思われる。これからもサタンのパシリとして生き続けるのだろう。

●生前のケイティ
先にニューヨークへ行った両親のところに向かうため、一人でアントニア・グラーザ号に乗船。甲板でのワイヤー大虐殺はなんとか逃れたものの、 フェリマンの手下たちから暴行を受け、最終的には船室内で首を吊られていた。死亡シーンは画面上で存在しないものの、状況的には他殺と見られる。仮にケイティだけが自殺となるとテーマとのズレも生じる。可能性がゼロとは言わないが、他殺の可能性の方が圧倒的に高いだろう。

●幽霊少女になってから
本作ではエップスとのみ交流していた。彼女の意思でコンタクトしていたのか、エップスに霊感があったのかは不明。40年前の真実をヴィジョンで見せたり、ガス爆発を事前に知らせようとしたり、協力的な存在だった。最後は船の爆破により魂が解放されて、他の乗客たちと共に昇天した。

本作の出だしは、この開始5分半のために観て良かったと思わせるくらいの素晴らしさだ。あのワイヤーシーンは映画史に残るレベルの、ホラー映画ベスト導入シークエンスとして語り継ぎたい。じわじわ体がスライドしたり、上半身が自分の下半身に手を伸ばしたりする描写に、なぜか妙なリアリティを感じた。ケイティを庇っていたキャプテンだけ頭がぱっくりいくのも良かった。ケイティの身長を考えると若干矛盾を感じるが、許容範囲とする。

そんなインパクト抜群の出だしから、どんどん勢いが下がって、唐突にサタンオチを持ってきたかと思ったら、メタル調の音楽が流れ悪役が再登場してエンドロール……これぞB級だ!それなりに豪華な映像だったから実際B級かは知らないが、いかにもB級だ!

ガブリエル・バーンがもともと好きなので贔屓目もあると思うが、マーフィーが、サントスの件で落胆~幽霊と一杯~フェリマンの秘密を握る~証拠品とともに溺死、のシークエンスなんかは、程よい絶望感と緊迫感があってよかった。

映画自体の雰囲気も嫌いではない。優美で絢爛な当時の豪華客船と、不気味な鉄塊となった現在の船の対比も鮮やかで、お化け屋敷感が引き立っていたし、その後のチラリズムする幽霊少女、血で満たされたプール、船内に残された死体……という展開もぞくぞくして好きだった。設定やオチがもう少し丁寧だったら、大傑作になった気がしてならない。

基本情報

【公開年】2002年
【監督】スティーブ・ベック
【キャスト】ジュリアナ・マルグリーズ、ガブリエル・バーン、ロン・エルダード、イザイア・ワシントン、アレックス・ディミトリアデス、カール・アーバン、デズモンド・ハリントン、エミリー・ブラウニング、フランチェスカ・レットンディーニ
【登場人物】エップス(サルベージ船クルー兼出資者)、マーフィー(船長)、ドッジ(クルー)、グリーア(一等航海士)、サントス(操舵士兼機関士)、マンダー(クルー)、ジャック・フェリマン(パイロット)、ケイティ(少女)、フランチェスカ(歌手)
ポストクレジットなし

コメント