
ジャンル:アクション、SF
制作:ロバート・ロドリゲス、エリザベス・アヴェラン、ジョン・デイヴィス
監督:ニムロッド・アーントル
キャスト:エイドリアン・ブロディ(ロイス:主人公/傭兵)、トファー・グレイス(エドウィン:医者)、アリシー・ブラガ(イザベル:CIA非合法工作員のスナイパー)、ウォルトン・ゴギンズ(スタンズ:FBIが追う死刑囚)、ルイ・オザワ(ハンゾー:やくざ)、オレッグ・タクタロフ(ニコライ:ロシアの特殊工作員)、マハーシャラ・アリ(モンバサ:RUF=シエラレオネの殺人部隊)、ダニー・トレホ(クッチーロ:ロス・セタス暗殺集団)、ローレンス・フィッシュバーン(ノーランド)
超ざっくりあらすじ
ロイスは、落下中に意識を取り戻した。着地したジャングルのような土地で、同じようにここへ“降って来た”面々と共に事態を把握しようと動き出す。進んだ先で発見したのは、意味不明なオブジェ、頭蓋骨、ゲージ、アメリカ軍人の死体、そして無限に広がる山々と空に浮かぶ惑星……それらの謎解きをする間もなく、彼らは見たこともない獰猛な四足歩行動物に襲われる。しかしその“猟犬”を放った存在こそが、彼らの真の脅威だった。
ポストクレジット有無
なし
好き度
50/100(普通)

ここを【見所】とする
本作では、殺しのスペシャリストたちとプレデター+αによる、ハンティングバトルが楽しめる。
本作の舞台は、シリーズで初めて地球を離れた「謎の惑星」となっている。そこは、プレデターが星々から強そうな生命体を運んで来ては、狩る・時に狩られるという遊びを楽しむ猟場らしい。太陽が動いていないとか(でも夜になっていたので、ちょっとずつは動いているのか)、葉っぱで作った即席コンパスが回り続けるとか、実際には地球と根本が違う環境らしいが、見た目は完全にジャングルである。
そんなジャングルっぽい場所で、各国代表みたいな殺し屋たちが目覚めるところから物語はスタートする。この時点でプレデターとの対決を想像するとワクワクものだが、まず登場した相手は、まさかのプレデター犬だった。沢山の角を生やした四足歩行の生き物は、歩いているだけでビビッてしまいそうな見た目なのだが、それが猛スピードで突進してくるのだから、そりゃみんな銃を乱射しますよねとなる瞬間である。
その後に仕留めた謎の生物はまたプレデターとは違う生命体で、なかなかプレデターとのバトルが始まらない。しかし、ノーランドが登場するシーンを境に、ついにプレデターたちとの対決となる。プレデターはプラズマキャノンやリストブレードといった従来からの武器と、その圧倒的フィジカルの強さで襲い掛かる。それに対して人間側は、フルオートショットガンにボルトアクションライフルといった銃器に加え、手りゅう弾もナイフも刀も駆使して戦う。個人的には、スタンズとバーサーカーとの絡みは、これまでにない「ナイフ一本でプレデターを苛つかせる」というスリルがあり、気に入っている。
残念ながらチームとしてはほぼ機能しないまま徐々に散っていくことになった主人公サイドだったが、まさかの、クラシックプレデターと手を組むという展開もあった。それはこれまでにないパターンで(AVPを除く)、もっともっとクラシックプレデターの戦いぶりが見たかったくらいだ。
疑問・つっこみ・考察 ごった煮
①で、結局何が起こっていたのか
ノーランドの話を真実と仮定し、作中で何が起きていたかを簡単にまとめると、下記の通りである。
<前提>
・プレデターは、シーズンごとにこの惑星で狩りを楽しむ
・狩る側は新種プレデターで、毎回3体1チームで現れる
・狩られる側は人間など様々、他の星からケージに入れて運んでくるかパラシュートをつけて落とす
・獲物となる対象は、その惑星において戦闘力が高く戦うに値すると思われる個体だけ
・クラシックプレデターは、新種プレデターとは敵対している
<作中の事実>
・ロイス、イザベル、エドウィン、スタンズ、ハンゾー、ニコライ、モンバサ、クッチーロ(他にも居たがパラシュートが開かず死亡)たちが獲物として連れて来られた
・なんらかの事情でクラシックプレデターが1体、新種プレデターに捕縛されていた
そしてロイスたちが惑星からの脱出を目指して戦うのが本編の内容となる。序盤のロイスたちはプレデターという存在は勿論、自分たちがココにいる意味も知らない状態なので、とりあえずこの場所から移動するというのが目的になっている。しかし、狩られる側に立たされているのだと把握し、ミッションの難度が自動的に更新される。同じような経緯を経て単に生き延びるということを選択したのがノーランドであり、あくまでも脱出をゴールとするロイスたちとは行動に差が出た。プレデターの目的が殺るか殺られるかの戦いなのであれば、ロイスたちのように歯向かってくるタイプの方が、張り合いがあっていいのだろう。
②ノーランドの意味
作中、ノーランドの存在というのはなんとも異質で、振り返っても違和感の塊である。ノーランドは本作のガイド役として、プレデターも種族間で差があり争いになっていること、3体1組で行動していること、彼らの狩りは今回だけでなく何度も行われていることなどを説明する。結局はノーランドの裏切り行為によってその場を離れることになるが、彼の拠点でハンゾーが刀を、スタンズが防護服をゲットしていたのは後に大きな助けとなる。
しかし、クラシックプレデターが捕獲されていたのはロイスたちがそもそも目撃していたし、狩る側が3体いるとか狩りが何度も実施されていることなんかは、彼らの作戦やその後の展開にあまり関係がなかった。たとえば、ロイスたちが普通に歩いた先で掘削機を見つけて入る➡食料など人がいた痕跡がある➡残された品から狩りは何度も行われていることを推測➡刀や防護服をゲットして出発しようとしたら物音でプレデターが来たのを察知、みたいな展開でも別に良かった気がするのだ。
ノーランドはしょっぱいボヤを起こすのだが、サンマでも焼くかのようにパタパタ仰いで煙を起こしたりして、本当にロイスたちを殺すつもりがあるのかも怪しい上、精神に異常をきたしている描写もあり、彼の言っていることを信じていいのかも分からない。猟場に連れて来られたという時点でそこそこの戦闘力はあるのだろうし、恐らくイザベラが打ち損じた謎の生き物を殺したのは彼なので、全くの素人で役立たずではないだろう。しかし、「ん~?俺?まぁ、2~3匹殺したカナ、覚えてないけど(チラッ)」みたいな話をし始めた時には、誰もが心の中で「嘘つけ」とツッコんだだろう。プレデターのマスクでカモフラージュ機能を使いこなしていたようではあるが、本当にノーランドがプレデターを殺して奪ったという証拠はない。他の誰か(何か)が倒したプレデターの装飾品を奪っただけの可能性も大いにあるのだ。
ジャングルの中で息もつかせぬ攻防!みたいなシークエンスばかりが続くと見ている側が息切れしてしまうのは確かだが、ノーランドが絡む場面は、コイツ何者?何がしたいの?誰と喋ってるの?え、イマジナリー?!といった余計な思考を費やすようになるだけで、なんとも邪魔だなぁという感想になってしまう。と、ここまで散々文句を言ってしまったが、ブシャッ!!!と盛大な散り様だったことには、拍手を送りたい。
③今回のプレデター
本作では4体のプレデターが登場している。
まずは、ドッグハンドラープレデターと呼ばれる個体。前作までと比較し造形の違いが一番顕著なのはバーサーカーだろうが、特徴として新鮮に感じたのはドッグハンドラーだ。ドッグハンドラープレデターはプレデター犬を犬笛でコントロールし、必要に応じて獲物を追い立てる。それはまるで人間が獣猟で行うように。これまでも人間が獲物でありプレデターが狩人である、といったコンセプトはあったが、人間と似たような狩りの手法で動物(?)を使用するのは本作が初である。プレデターらしいなという印象は無いものの、獲物の種類も様々なのであれば、狩りの方法が多岐に渡っても不自然ではないだろう。
次に、ファルコナープレデターと呼ばれる個体。ファルコナーはその名の通り、持っている鷹のような鳥型の偵察装置を駆使して、遠くの状況も把握することが出来る。とはいえ、本作で鳥型装置が使われている描写は一度きりだったようだが。ファルコナープレデターは本作中盤で、史上初となるやくざとのタイマンを繰り広げる。それまで光学迷彩でロイス一行の後を追っていたファルコナープレデターは、ハンゾーが自身の気配を察知したのを知り、また彼が一対一での戦いを挑もうとしていることを悟り、カモフラージュを解いて姿を現す。散々こっそり後を付けていたものの、戦闘に関しては正々堂々と行いたいプレデターなりの信念を感じる。また、相手が刀一本で向かってくると分かると、自分もリストブレード一つで戦うことを決意。そして、ハンゾーの戦闘力を完全に見誤っていたのか、相手の強さを知った上で自分の力量を試したかったのかよく分からないが、まさかの敗北を喫する。正直、前作までの死闘が霞むという意味では、生身の人間相手に微妙な勝敗結果だと感じてしまった。なんなら、あの刀がプレデターたちの星の材質で作られためっちゃ強い刀、みたいな後付けをされた方が納得するレベルだ。或いは、ハンゾーもわざわざ獲物として連れて来られた人間なので決して雑魚というわけではなく、あんな見た目でも戦闘力が53万くらいあったのかも知れない。
そして、3体目の新種プレデターが、ミスターブラックプレデター、通称バーサーカープレデターである。バーサーカーは、恐らく今回の3体の中で一番体が大きく強い個体だったと見られる。ノーランドの話を信じるならば、ドッグハンドラー、ファルコナー、そしてバーサーカーの新種プレデターとクラシックプレデターはそもそも敵対しており、事実、クラシックプレデターは、彼らのキャンプ地で捕縛されていた。そして終盤では、ロイスに協力したクラシックプレデターとバーサーカープレデターが戦う展開になる。バーサーカーの素顔が本当に可愛くない上にマスク越しの顔もいまいちタイプではないので、戦っている間どうしてもクラシックプレデターに肩入れしてしまったのだが、個体としての力量の差か、或いは種族としての差なのか、わりとあっさりクラシックプレデターが殺されてしまった。この辺りも、これまでのシリーズで登場してきたクラシック系プレデターたちは実は弱い部類でした、といった印象を与えるので、少々微妙に思える。
だが、バーサーカーにも面白い側面はあった。たとえば、バーサーカーに取っ捕まったスタンズがナイフ一本でグサグサ刺して抵抗するシーン。スタンズが、ノーランドの部屋から奪ってきた防護服を着ていたことでちゃっかりキャノンを防いでいたことにも、ナイフでプレデターを刺しまくりながらロイスたちに「早く行け!」などと言って突然足止め役を買って出るのも驚いたのだが、一番はその後である。邪魔そうにスタンズを放り投げたバーサーカーに対し、なおも「その程度かよ、やれよ」と挑発するスタンズ。それにこたえるように、激おこバーサーカーは生きたままブチブチと背骨を抜くのだ。スタンズの頭蓋を持って咆哮する姿を見ると、心底スタンズに苛ついていたんだなと思わせてくれる。ウザかったもんね。
またラスト付近、エドウィンの裏切りを知ったロイスが、罠としてエドウィンに爆弾を括りつけて地面に転がしたシーン。バーサーカーは転がったエドウィンを発見すると彼の様子を慎重に確認して……ということもなく、とりあえずリストブレードで刺してみるのだ。ここは声を出して笑ってしまった。生かしておく必要がない邪魔者なのであれば、確かにとりあえず刺してみるのが手っ取り早いし確実である。後学のために覚えておきたい手法である。
これまでのプレデターと言えば、最後まで残った人間との一騎打ち時に舐めプをして負けてしまうという流れになりがちなのだが、バーサーカーは、少なくともロイスに対し舐めてかかったようには見えなかった。実際問題、イザベルの援護射撃がなければラストでロイスは死んでいただろう。そう考えると、最後まで全力で戦いきったバーサーカーは、とても真面目な子だったのかも知れない。
雑感
①オリジナルと比較されがち
本作は設定上の場所こそ謎の惑星だが、見た目はいわゆるジャングルである。その点において、オリジナルのプレデターを想起する人も多いだろう。また、オマージュというか、あえて寄せに行っている部分もある。
たとえば、モンバサが木の上にいるプレデターの気配を唯一察して一人恐怖を感じるが、カモフラージュをしているため誰にも見えないというシーンで、なるほどコイツがビリー枠ね、と思わせる。しかし、早い段階で退場してしまう。後半にて、殿からのタイマン勝負という美味しい役を演じるのは、まさかの、それまでほぼ空気のような存在のハンゾーだった。また、かつての生存者が体に泥を塗ってプレデターから不可視化できた話を聞いていたロイスが、同じ戦法で泥まみれになって、バーサーカープレデターを挑発するシーン。周りを火だらけにして更にプレデターの視界を混乱させるという味付けこそあったものの、結局最後はその戦法かよ~と思わせてからの、バーサーカープレデターのヴィジョンチェンジという新技術が披露される。見事、ロイスの心臓の拍動を検知し、そこに向かってプラズマ砲を撃つという展開になるのだ。
オリジナルを見ているからこそ予想してしまう展開、そして逆を突かれる流れは、それを発見する楽しみがあった。しかし、それであればこそ、やはりオリジナルのクラシック系プレデターを弱者風に扱われたのが残念に思えてならない。同じくバーサーカーに殺されてしまうにしても、もっと知恵と技術を駆使し全力でやり合っての惜敗くらいの塩梅ならば、印象も違っただろう。
②結局、魅力があるのはプレデターだけ
俯瞰してみると、この作品は、狩る者・狩られる者という以外の関係性はとても希薄で、ニコライの子どもの写真であったり、エドウィンのサイコ設定であったり、ところどころ人間性が垣間見られるところはあっても、あまり深く描かれることはなかった。それは主人公ロイスも同じである。
彼は何らかの事情があって、アメリカ軍を辞めて傭兵になったと仄めかされている。それが何だったかは本編中でも描かれず、ただ「人間狩りに勝る狩りはない」などと言う発言があるので、殺人という行為自体に意味を見出してしまうような、恐ろしい経験があったのかも知れない。そんなロイスは、序盤こそ冷酷な傭兵といった振る舞いで、常に冷静に場を判断し、単独行動を好み、脱出に向けて動き続ける。しかし、蓋を開ければただの「根はいい奴」で、落とし穴に落ちそうになったイザベルに唯一手を差し伸べ、最後も、イザベルを助けるために宇宙船に乗らずに戻って来た。そして、上述の泥塗り作戦などを経て、なんとかプレデターを打ち負かし、イザベルと共に唯一の生存者となった。
しかし不思議と、終幕時の爽快感や安堵、カタルシスがないのである。何故だろうと考えると、理由は2つ思い当たる。まず1つ目として、そもそもここが地球ではなく、プレデターに勝ったところで感が半端ないのである。映画のラストは謎のケージがまた上空から降って来るところで終わるという、いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ」エンドであり、結局これは助かったうちに入るのか?という疑問が残ってしまうのだ。そして2つ目として、この状況ならなおのこと、プレデターに勝って欲しかった気持ちが残ってしまうのだ。主人公のロイスは確かに悪い奴ではなかったし、体を張ってイザベルを守った事実はある。しかし、その「体を張ってイザベルを守る」に足るバックグラウンド情報が少なすぎて、ピンと来ないのだ。彼らの間には熱い友情も仲間同士の絆もない。むしろ、単にタイプの女だから助けたんじゃないの的な、冷めた視線がどうしても混ざってしまう。それであれば、結局寄せ集めの人間がちょっと頑張ったくらいじゃ勝てないプレデターを演出した方が良かったとさえ思えてしまう。新たなケージが降りてくるくらいなら既に次の狩りの準備は始まっており別のプレデターたちが上陸していても不思議はない段階なのでバーサーカーを倒し二人で助かったねと安心したところで背後からkrkrkrが聞こえてレーザーの照準に気付いた時にはキャノンがぶっ放されて結局二人とも爆散というシナリオだったとしても全く不満はなかった(息継ぎナシ)。プレデターを狩るプレデター、という新機軸を持ってきた本作ならば、主人公を倒してしまうリアルヴィラン・プレデターが最後を締めくくるくらいの冒険をしてしまっても許され……いや、さすがにプレデターが嫌われちゃうかな。


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