「ジェーン・ドゥの解剖」(2016年)

ジャンル:ホラー
監督:アンドレ・ウーヴレダル
キャスト:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド、マイケル・マケルハットン、オルウェン・キャサリン・ケリー
登場人物:オースティン・ティルデン(医療技術者)、トミー・ティルデン(検死官/オースティンの父)、エマ(オースティンの彼女)、バーク(保安官)、ジェーン・ドゥ(謎の死体)
ポストクレジット:なし
ポテッチの好き度:50/100(普通)

超ざっくりあらすじ

バージニア州グランサム。遺体安置所兼火葬場を営むティルデン親子の元へ、身元不明女性=ジェーン・ドゥの遺体が運ばれてきた。翌朝までに遺体の死因を解明して欲しいと保安官から依頼され、検死官トミーは息子のオースティンと共に早速解剖を始めた。やがて、解剖を進める親子二人を恐怖の時間が襲う。

ここからネタバレ注意

事実関係・疑問・つっこみ など

●拷問の痕跡
トミーたちは解剖を進めていく中で、遺体が酷い損傷を受けていることを発見。損傷内容を元にジェーン・ドゥは生前下記の流れで拷問を受けたと推測した。

手足を縛る➡舌を切断する➡毒を飲ませる(体の自由を奪う)➡布を飲み込ませる➡内臓を切り刻む➡肺を燃やす

そして布の記載や付着していた土、体内にあった花の特徴から、魔女裁判による拷問だと結論付けた。しかし彼女が実際魔女だったのか、“魔女とされた”被害者だったのかは不明である。とはいえ拷問されたことを恨み、呪いを撒き散らして作中の惨劇を引き起こした以上、「ジェーン・ドゥ」としては魔女だったと言って差し支えないだろう。

●魔女ジェーン・ドゥ
ジェーン・ドゥの最終目標は不明だが、本作時点でのゴールは【完全な肉体で生き返ること】だったと考える。トミーがオースティンを助けるよう懇願した時には、それを聞き入れ、トミーの肉体と交換するかのように自身の肉体を再生させていたからだ。冒頭、地下から発見された時点でやたら綺麗な見た目だったが、ダグラス一家を殺害した際になんらかの力で肌を再生させた可能性がある。

●トミーの無念
結局、トミーはあまりの痛さに耐え兼ねて、自分を殺すようオースティンに頼んでしまった。それにより、肉体交換(?)の儀式は中断された。その代償がオースティンの死なのだろう。もしトミーがもがき苦しんでも放っておけば、オースティンだけは生き残れたかも知れない。電気ついた!外から人の声がする!助かった!と思わせてからの転落死、という悲しくも滑稽なラストを迎えずに済んだかも知れない。

●どれが現実?
本作は、現実と幻覚が入り乱れる構造となっている。第三者視点でも描かれている“明らかに現実の出来事”を並べると、下記の流れになるはずだ。

ダグラス宅からジェーン・ドゥの遺体が発見され、ティルデン遺体安置所に運ばれる

トミーたちは遺体の解剖をはじめ、通常通り、録画とメモ、写真撮影を始める

スタンリー死亡

トミーとオースティンは幻覚を見始める

トミーたち、洗面所に頭を打ち付けたり、解剖室のドアを破壊したり、安置所内をウロウロしたりする

遺体に火を放つと室内に広がり、解剖写真などは燃え、ジェーン・ドゥの体は燃えずに残る

オースティンがトミーを殺害

オースティンが転落死

付け加えると、ラジオも幻聴=天気はずっと晴れで、大木が地下への入り口を塞いでいることもなかった。

●スタンリーとエマの死
スタンリーが大怪我をしていた点は、ジェーン・ドゥの見せた幻覚か、現実の出来事か判別が出来なかった。しかし、トミーが最終的に首を折っているので、その時点で確実に死亡はしている。逆に、エマについては最後に運び出される遺体が2体のみであり、エマの車も停まっていなかったことから、完全に幻覚だったと言える。

●ジェーン・ドゥの力
ジェーン・ドゥは、直接トミーとオースティンを殺したわけではなく、幻覚を駆使して“彼らが死ぬ流れに持って行った”だけに見える。現時点でジェーン・ドゥが持つ力は、【幻覚を見せる力】と【人間の肉体と引き換えに自分の体を修復する力】、の2つだけなのかも知れない。

ネット上では「最後に登場した黒人警官が黒幕なのでは」という考察があると知ったが、私は彼にそういう背景はないと考える。運転中なので電話端末こそ持っていないが、耳にイヤホンをはめていたし、誰かと通話していただけに思える。Baby, listen(ねぇ、聞いて)という語り口から、彼女や奥さん辺りに電話しているだけではないだろうか。

その後、ラジオがヘブライ書4章の読み上げから例の歌へパッと切り替わるので、単純に「本人は電話に夢中で全く気付いていないけど彼にもジェーン・ドゥの魔の手が迫ってるよ!」ということを示唆して終わったのだと受け止めた。

感想

夜の死体安置所で解剖という状況の怖さと、異様に美しい死体の謎解きが融合した個性派ホラーで、引き込まれるものがあった。ルイスの遺体のベルはどう見ても伏線!と思える部分で、逆にそれがどんな風に展開するのかワクワク感もあった。解剖の知識はゼロだが、遺体にメスを入れて臓器を一つ一つ確認していく様は実にリアルに感じられて、人体破壊ホラーともまた違うちょっとした心寒さがあった。だからこそ、徐々にジャンプスケアが増えて、よくあるお化け屋敷ホラーになってしまったのが残念だった。

それでも、他にはないシチュエーションやインパクトのあるジェーン・ドゥの遺体のビジュアルも手伝って、一度見たら忘れない作品にはなっていた。ジェーン・ドゥって結局なんだったの?という謎を残した終わり方も良いが、あそこまで手の込んだ拷問をされて死んでいった女性の生前の様子は、やはり気になる。

ラストの足がピクッ!から、次に運ばれる先のコモンウェルス大学においても似たような惨劇が起こることは予想に難くないが、解剖します➡幻覚見せます➡解剖担当者死にます、の繰り返しではインパクトに欠ける。であればむしろ、ジェーン・ドゥのリアル魔女時代を描いた前日譚の方が興味をそそる。

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