【考察】映画『蝋人形の館』|静かすぎる町の真実と惨劇のすべて

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:なし

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

今回事件の舞台となったのは、カーナビにもないアンブローズという町である。山中の看板には【トルーディーの蝋人形の館】と掲げられていたが、ニックがクロスボウを盗んだガンショップには、【トルーディーの蝋人形の町】と書かれた看板があった。【蝋人形の館】で満足仕切れなかったトルーディーがかつて目指した【蝋人形の町】を、シンクレア兄弟が完成させようとしている、と読み取れる演出である。

●ボーとヴィンセント
本作の敵役である双子。結合双生児として誕生後に切り離された。ボーの話では、母トルーディーは脳嚢胞のうほうを患いその後死亡、父ビクターは自殺、双子は里子に出されたらしい。しかし、トルーディーの遺体をヴィンセントが蝋人形にしたのであれば『里子に出された』というのは時系列的に疑わしいし、ボーの話の信憑性が一気になくなる。第三者から得られる情報もなく、シンクレアファミリーの背景はごそっと欠落している。

●第三の兄弟
最後に警官への報告という形で、ロードキル・ドライバーがシンクレア家の3番目の息子だと仄めかされる。犯罪への関わりは明言されないが、個人的には2つの根拠から少なくとも【消極的な共犯】だったと思っている。

◆根拠①「何年もかいでりゃ慣れるさ」というセリフ➡表面的には、『何年もこの仕事をしていれば臭さにも慣れる』と言っているように見えるが、死そのものへの感覚の麻痺や、異常な環境に適応していることの暗示とも受け取れる。

◆根拠②犬の存在➡蝋人形館でウェイドが犬を目撃していることから、飼い主であるロードキル・ドライバーもアンブローズに出入りしていたことが伺える。さすがに、何度も行き来している場所で町民が蝋人形であることを知らない、というのは無理があるのではないか。

一方で、彼が悪意を持ってカーリーたちを乗せたようにも見えない。ひょっとすると、なんらかの事情で【善悪の判別がつかない】なんてことも考えられるが、とにかく全てが謎である。なんなら本名「レスター」も映画では明かされず、脚本にそう書いてあることをfandomで知ったくらいだ。

本作は前半こそ退屈なティーンホラーの様相を呈しているが、後半はインパクト抜群のスラッシャーとなる。生きたまま蝋人形にされる場面が一番特徴的ではあるが、アキレス腱を切られたり、喉を刺されたり、首を切り落とされたり、痛いシーンが盛りだくさんである。ウェイドは不法侵入を繰り返す”やらかし枠“だったこともあり、最も悲惨な目に遭っている。しかし指先を切り落とされたカーリーも、痛みレベルとしてはナンバーワンに近いだろう。

兄妹VS兄弟の双子対決がとにかく熱い作品である。ジョーンズ兄妹はいざとなった時のニックの頼もしさが尋常じゃない上、双子ならではの阿吽の呼吸でカーリーと共闘するのもワクワクした。一方シンクレア兄弟は、バックグラウンドが全く分からないのに兄弟の絆だけはやたら伝わる不思議なコンビだった。キレて騒いで暴れまくりの兄と、寡黙に殺害と蝋人形化を実行し続ける弟というコントラストも新鮮。結合双生児時代と同じポーズで死んでいくところまでは想像できず、わずかな時間だが心に残るシーンだった。

他のメンバーは正直可もなく不可もなくだが、ウェイドだけは少々やらかしが過ぎただろう。シンクレア邸でも、あっちこっち部屋を覗き回らずにトイレを借りてさっさと車に戻って居たら、少なくともアキレス腱を切られずに済んだかもしれない。そこまで強引に連れて来られたわけでもないのに気付けば身動きが取れない、というのは、胸糞系ホラーでよくある展開だが、ウェイドのような不法侵入繰り返しマンでは自業自得感が強くなってしまう。

レスターの存在は「双子バトル」という綺麗な枠組みには水を差された感があるものの、悪くないオチだと思った。ただ、いかんせん、シンクレア一家についての情報が少な過ぎる。母も生前蝋人形化殺人を犯していたのか?父の自殺との関連性は?実際に両親が他界したのはいつなのか?それまでの兄弟の歩みは?レスターとの関わりは?あの町は実際どこまで双子が『作った』のか?など、妄想の余地はあっても確証のない疑問が多い。これは是非とも前日譚が欲しいところだ。そこで出来ればボーとヴィンセントの子ども時代なんかも拝みたい。

全体的にもう少しコンパクトでもよかったかも知れないと思うし、ラストはややCG感が強くなっているものの、館ごと燃え落ちる大火災という迫力ある展開で、B級ながらも見応えがあった。蝋人形xスラッシャーx双子バトルがとにかく面白く、大好きな作品である。

基本情報

【公開年】2005年
【監督】ジャウム・コレット=セラ
【キャスト】エリシャ・カスバート、チャド・マイケル・マーレイ、ブライアン・ヴァン・ホルト、パリス・ヒルトン、ジャレッド・パダレッキ、ロバート・リチャード、ジョン・エイブラハムズ
【登場人物】カーリー・ジョーンズ(大学生)、ニック・ジョーンズ(カーリーの双子の兄)、ボー・シンクレア(ガソリンスタンド経営者)、ヴィンセント・シンクレア(蝋人形作家)、ペイジ・エドワーズ(カーリーの友人)、ウェイド(カーリーの恋人)、ブレイク(ペイジの恋人)、ドールトン・チャップマン(ニックの友人)
ポストクレジットなし

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