【考察】映画『MAMA』|姉妹だけが見える『ママ』とは何者なのか

【苦手トリガーチェック】
虫:あり、体内侵入:なし、身体損壊:なし、子ども被害:あり、動物被害:なし

ここからネタバレがあります!未視聴の方はご注意ください!

●そもそも悲しいスタート
とある事故によって孤児となった幼い姉妹。5年後に山小屋で発見されるも、まるで獣のようになっているだけでなく、周囲には見えない「ママ」がいると語り……というストーリーである。ママが怪異の存在で徐々に怖く、やがて悲しい展開になっていくわけだが、とにかく出だしがキツい。父親が(おそらく)経営難を苦に、同僚を殺害して、妻も殺し、娘まで殺そうとしていたのである。見方によってはそこが最もホラーである。

●ルーカスとアナベル
残念ながらルーカスがさっさと病院送りとなるので、他人のアナベルが二人の世話をする展開になる。アナベルとルーカスの関係性がそこまで深くは描かれず、なんならルーカスはアナベルに「姪っ子がこの世で一番大事な存在!」とか零しちゃうノンデリのため、何故アナベルがそこまで??という疑問は感じてしまった。

●100年以上前の悲劇
ママと呼ばれる黒い女の正体は、イーディス・ブレナンという女性の幽霊だった。イーディスについて、公文書館の資料、ヴィクトリアの証言、アナベルの夢を(全て事実として)まとめると下記の通りである。

◆1877年時点でセント・ガートルード精神科病院に入院していた
◆自分の子どもを抱えて崖へ逃亡
◆崖から飛び降りるも、乳児は崖の木に引っかかって一人で転落

赤ちゃんの父親がどういう人物か、そもそもどういう経緯で入院していたのか、その辺りは不明。だが、乳児の遺骨が「誰も引き取らない遺体の置き場」とされる棚に保管されていたので、父親にあたる人物が存在を知らないか、認知していなかったことは明らかだろう。

●ママの能力
悪霊となったイーディス。作中の様々な行動を見ると、幽霊ではあるが物理的な干渉も可能そうである。一方、ジーンの体を乗っ取った時の「憑依」的能力は作中であの一度しか使われていない。怒りの爆発、姉妹を奪われるかも知れない極限の焦りなどから、特殊な力を発揮した可能性がある。

●ママの目的
たまたま見つけた姉妹を育てるのは、母親としての代替行動だったかも知れない。また、もともと二人を殺そうとしていたわけではない。最初から心中が目的であれば、もっと早い段階で実行していたはずだからだ。むしろ、人間社会でこっそり同居していくつもりだったと考えられる。ヴィクトリアが漏らした「約束」というのは、同居の代わりにアナベルに手を出さないということだろう。最後、どうあがいても姉妹を奪われていくと悟り、心中することにしたと推測できる。

●5年前の眼鏡が使える不思議
子どもの5年は大きい。どう考えてもかつての眼鏡の度が合っていたとは思えない。たとえば、最初にかけた時点でバッチリ見えていたわけではなく、ボケボケだった視界がちょっと改善されただけの可能性はある。そして、パパっぽい人物が見えて安心したのではないだろうか。

●グレイファスの殺害
ママは姉妹に憑いて移動したはずだが、グレイファスが小屋を訪れると、そこに現れ彼を殺害した。行動範囲がやたら広いことも、グレイファスの動きを把握していたことも、なかなかご都合主義に思える。恐怖演出のためにあの暗い小屋で殺された感じもある。そもそも、みんなやたら夜に活動していたので、見ている方は「明るくなってから行けばいいのに」と思ってしまった。

●最後に遺体を放り出した違和感
リリーの「ママ」の呼びかけに反応すると、ママは抱きしめていた乳児の遺体をポイとする。なかなか衝撃である。このシーンから、ママが本当に執着していたのが「乳児」そのものではなく、「母になること」だったと想像できる。また、ママの異常性を表したシーンとも言えるだろう。

●リリーはもともと死んでいたのか
これについて、断定できる情報はない。しかし作中描写から、リリーは【人間的には生存不可能な状態だったが、ママの霊力によって生命を維持・成長していたのではないか】と考える。根拠は下記の通り。

◆オープニングで、リリーが動物に襲われたイラストがある➡重症に描かれる
◆医師の診察を受ける、アナベルに抱きしめられる➡完全な霊体ではない
◆しばしば蛾を食べている➡蛾自体がママの象徴
◆ママと落下時に蛾になって霧散する➡普通の人間なら肉体はそのまま落下するはず

リリーは発見された時点で既に純粋な人間ではなくなっていた、と考えると、ラストでママと旅立っていくことの意味もだいぶ変わって見える。あちらの世界へ「帰る」ことが自然であり、彼女のためにもなると思えるからだ。

視聴中も、やや「ん?」と気になるツッコミどころはあるものの、ファンタジー的な目で見ると、なかなか面白い作品だった。結局、「親子」というのは、血の繋がりだけで完成するものではなく、ともに暮らして、愛情を与え合うことで親子になっていくというメッセージと捉えた。特に、アナベルについては、もともとは自分の子どもも欲していなかったようだったが、最後は命をかけてヴィクトリアを助けに行く姿に確かな母性を感じた。

リリーについては、きっと捉え方によってラストに抱く感情も変わるだろう。だが、彼女が最後にママを見つめてみせたあの笑顔は、我々の尺度の「正解」が必ずしも彼女の「幸せ」には繋がらないことを暗示しているようにも見えた。確かに喪失はあったのに救われたような、ただの切なさ、後味の悪さとは違う複雑な感情が押し寄せる、悲しくも美しいラストだった。

基本情報

【公開年】2013年
【監督】アンディ・ムスキエティ
【キャスト】ジェシカ・チャステイン、ニコライ・コスター=ワルドー、ミーガン・シャルパンティエ、イザベル・ネリッセ、ダニエル・カッシュ、ハビエル・ボテット、ジェーン・モファット
【登場人物】アナベル(ルーカスの恋人),ルーカス(ジェフリーの弟),ジェフリー(姉妹の父),ヴィクトリア(姉),リリー(妹),ドレイファス(博士),ママ,ジーン(姉妹の伯母)
ポストクレジットなし

コメント