
ウジ虫付k……いや、うそ、付いてない、それはない
【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:あり、動物被害:なし
事実関係・疑問点の整理:子どもにも容赦ナシのシティ派死霊
マンションでの事件から湖畔の小屋へ
●地震と好奇心
ギター調整師ベスは、予期せぬ妊娠について相談すべく姉エリーの元を訪れる。その晩地震が発生するのだが、この地震が“死霊”によるものとは明言されておらず、テレビニュースでも報道されている規模だったことから、偶然の可能性は高そうだ。そして地震によって古いアパートの駐車場床には亀裂が入ってしまい、隠されていた金庫が覗く➡ダニーが興味本位で近づく➡レコードやら本やらを持ち帰る、という展開となった。
●死者の書
ダニーが持ち帰ったのは“死者の書“と、記録レコードである。たまたまDJグッズ一式を持っていたダニーがレコードを再生してしまうことで呪文が唱えられ、死霊を呼び寄せてしまった。レコードの内容は下記の通り。
◆レコードNo1
聖パトリック大聖堂のリトルトン神父が、”死者の書”を紹介する。全3巻の1つ『ナチュラン・デモント』という本で、干した人肉で装丁され、血のインクを使用している、といった説明。
◆レコードNo2
教会には内緒で翻訳作業を続けたリトルトン神父が、解読した呪文を唱える。カンダ、エストラダ、カンダ……
◆レコードNo3
リトルトン神父が自身の過ちを認め”死者の書”を破棄するように訴える。また、呪文によって悪霊が解き放たれたこと、仲間に憑依したこと、燃やしても埋めてもバラバラにしても止められなかったことを告げる。そして、とにかく逃げろと雑なアドバイスをする。
2枚目の呪文詠唱が始まった時点でレコードの停止も取り外しも出来なくなり、詰み状態だった。3枚目で逃げるんだ!逃げろ!とか録音している暇があったら、2枚目を粉々にするとか、せめて3枚目の表に『重要』『最初に聴いてね』など記載しておいて欲しかったものだ。
なお、なぜそもそもアパートの地下に死霊呼び出しセットが眠っていたのか、その経緯は作中明かされなかった。ビルがかつて銀行だったと言及されているので、教会側が銀行の堅牢な金庫に封印しようとした、という可能性はありそうだ。
●憑依から始まる惨事
呪文詠唱が終わると、悪の存在が這うように訪れ、まずはエリーに憑依する。その後、家族や同フロアの住民たちを次々襲い、ベスとキャシーだけが最後まで残って戦う流れとなる。以下に憑依された面々の行動をまとめた。
◆エリー
エレベーターで襲われ、憑依された。ベスの左手や腹部を刺す、ブリジッドの頬を傷つける、同じフロアの隣人たちを次々殺害するなど、憑依第一号の名に恥じない一番の活躍を見せる。卵叩きつけ料理をする、浴室の天井に貼り付く、奇声を上げる、『ウジ虫つきのママよ』と言うなど、悪魔的な所作を披露し、本作で最もインパクトを残したキャラクターである。
◆ブリジッド
エリーにつけられた頬の傷から憑依された模様。ガラス製のワイングラスを噛み砕いて飲み込むびっくり技を見せる。キャシーに折れた棒(ステファニー)を刺され一時戦闘不能に陥るも、すぐに復活してダニーを殺害。
◆ダニー
ブリジッドから大量の血を吐きかけられて憑依された模様。エリーと融合するまでは目立った行動なし。
◆近隣の皆さん
エリーによる殺害後、憑依状態に。フォンダはベスがエリーに銃を撃つ際に一度妨害したが、それ以外の活躍はない。Dead by dawnの合唱要員。
◆ザ・マローダー
憑依されたエリー、ダニー、ブリジットが文字通り悪魔合体して生まれたラスボスとも言うべきクリーチャー。しかし、合体したことで逆に動きにキレがなくなり、チェンソーと粉砕機を駆使したベスたちによってミンチにされる。フォンダ庭木剪定車、ありがとう。
●そして冒頭へ……
最後のシークエンスは、冒頭のシーンへと続く形で、時系列が前後していた。ベスたちが立ち去ったあとに憑依されてしまった同アパートの別フロア住人ジェシカが小屋へと向かい、同行者の従姉妹テレサと彼氏ケイレブを襲うという展開になるのだ。細かいことだが、冒頭シーンのあと”ONE DAY EARLIER“という表示なくライブハウスへ場面転換した方が、【結局死霊は解放されたまま】というネタバレなく見られて面白かったように思う。
”母“としての姉妹
●母であるエリー
最近離婚し、単身で子ども3人を育てていた状況。死ぬ間際にも「子どもたちを守って」と言い残したり、キーホルダーに家族写真を入れたり、日ごろから3人を大切に思っていたことは明らかだ。また姉妹揃って母親と不仲と思われる会話もあり、ベスにとってもエリーは母親代わりだったのだろう。
●母になるベス
「またやらかした」という発言からは、過去にも妊娠・中絶した事実が伺える。そんなベスだが、終盤極限状態の中でキャシーからの「ママになるの?」の問いにしっかり「YES」と答えていた。死霊との戦いを通じ、誰かを守ることに生きる意味を見出したのかも知れない。
死霊のはらわたシリーズ未見でも楽しめる
本作は死霊のはらわた正統続編と言われているが、シリーズを見ていなくても問題ない作りになっている。”死者の書”に書かれた呪文を唱えると悪の憑依が始まる、という基本の設定以外は、特に繋がりはなかった。一方で、オマージュされているシーンはいくつかある。たとえば、序盤ケイレブが操縦するドローンの動きは、死霊が森の中を這って迫る演出を模しているし、死霊のはらわた2にも本作同様目玉が飛び出て別人の口に入る展開があった。また、Dead by dawnの連呼や子守歌もシリーズ定番である。その辺りは過去作を見ていた人にしか伝わらないかも知れないが、これはこれで一つの演出として映画内で成立しているので問題ない範囲だ。
感想
この作品で最も興奮するのは、ジェシカが湖から浮かび上がると同時にタイトルが出てくるオープニングだろう。そしてこれまで同様山小屋で若者たちが悲惨な目に遭う……と思わせてからの、大都会へ場面転換には意表を突かれた。ターゲットがビクスラー家の面々であることは明らかだが、そうは言っても子どもだし、と油断していたところ、ブリジッドが普通に憑依されるわ、ダニーも殺されるわで、手加減の無さは心地よいほどだった。
そしてなんと言ってもエリーの死霊っぷりが最高だった。直前まで「ベイビーたちを守って」と母の顔をしていたはずが、憑依されると本当に死霊にしか見えないのである(褒めてる)。表情も動きもしゃべり方も全くの別人で、メイクの力を抜きにしても仕上がっていた感がある。正直マローダーよりもエリー単体の方が禍々しさは強かった(とても褒めてる)。
だからこそ最後のvsマローダー展開で、単にモンスターバトルっぽくなってしまったのは少し惜しい気もした。ただ、マローダー戦でのチェンソーと粉砕機による血みどろや、その前の6,500リットルの血糊大噴射エレベーターなど、画面が真っ赤になるのはこの手のホラーの醍醐味でもありテンションが上がってよかった。オープニングに加えて、繰り返し見たくなるシークエンスも多く、お気に入りの作品の一つである。
基本情報
【公開年】2023年
【監督】リー・クローニン
【キャスト】リリー・サリバン、アリッサ・サザーランド、モーガン・デイヴィス、ガブリエル・エコールズ、ネル・フィッシャー、ミラバイ・ピーズ、アンナ・マリー・トーマス、リチャード・クラウチリー
【登場人物】ベス(ギター調整師)、エリー・ビクスラー(ベスの姉)、ダニー(エリーの長男)、ブリジット(エリーの長女)、キャシー(エリーの次女)、テレサ(湖畔の女性)、ジェシカ(テレサのいとこ)、ケイレブ(ジェシカの彼氏)
【ポストクレジット】なし






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