【考察】映画『ゾンビランド』|ゾンビだらけの世界を生き抜くための32のルール

【苦手トリガーチェック】
虫:なし、体内侵入:なし、身体損壊:あり、子ども被害:なし、動物被害:なし

●平たく言うとゾンビランドとは
ゾンビが溢れ、人間よりも多くなってしまった世界を指してコロンバスがそう呼んでいる。あくまでもゾンビの方が多いというだけで、人類が完全に滅亡したわけではない。主人公たち以外にも生き残った人々はまだ存在していて、時に『今週のゾンビ殺し』として爽やかに登場したりする。

●ゾンビランドになった経緯は不明
作中では、『ガソリンスタンドのハンバーガーを食べた人物が狂牛病の変異種に感染した』ことが発端とされている。そして他の人間に感染し爆発的に全米に広がったらしい。感染すると脳が腫れて高熱が出る上、酷く狂暴になり、空腹で人間を襲うようになるという。コロンバスの語りでしか触れられないためパンデミックの経緯がどこまで真実かは分からず、悪徳企業がウイルスをバラまいた可能性もゼロではない。しかし、そこは本筋ではない。本作はあくまでも、主人公たちがゾンビまみれの世界でどう生きていくのかという点に収束していく物語で、“ゾンビランド”はその前提条件に過ぎないのである。

●頑張ればそれなりの生活ができる
ゾンビランドと化して数カ月が経過しているようだが、店に行けば食料も調達できるし、インフラもまだ生きている。日常こそ失われたものの、生きていくために最低限必要な物は手に入る状態と言えるだろう。しかし当然それらがずっと維持される保証はない。コロンバスは水力発電が稼働していると言及していたが、メンテナンスされていなければいつ壊れるか分からないのだ。いつまでも、あると思うな、電力とかトゥインキーとか。

●主人公たちの背景
“ゾンビランド”前の日常描写や過去の回想が限りなく少ない本作では、主人公たちの背景が透明になりがちである。だからこそ、『今を生きる』ことに焦点が当たっているとも言えるのだが、判明している限りをまとめておく。

◆コロンバス:オハイオに住む両親とは疎遠。大学寮で一人暮らしをしていた。もともと人嫌いで、特別仲の良い友人などもいなかった。
◆タラハシー:息子のバックと二人暮らしだったが、ゾンビによってバックを殺され、人一倍ゾンビを憎んでいる。妻に関して本編中では語られなかったが、設定上は出産時に死亡しているらしい。
◆ウィチタ&リトルロック:ゾンビランド以前から、二人で組んで詐欺を働いていた姉妹。家庭環境に問題があり二人で支え合うしかなかったという可能性が高いが、詳しい情報は一切明かされていない。なお、ウィチタの本名は“クリスタ”といい、作中で唯一本名が語られたキャラクターである。

●目の前の幸せ
ゾンビランドのような環境では、人の死に対して、悲しみや喪失感などが希薄になってしまうことはあるかも知れない。コロンバスが秒で射殺したビル・マーレイは、あっさり自分の死を受け入れるし、4人で葬送っぽいことをしたと思った次の瞬間にはコロッと切り替わる描写などは、その表れだろう。それでも、大事な何かを失えば心に傷が残るのは確かだし、大切な人を思い出せば『タイタニック以来の涙』も出る。だが常にゾンビに追われる状況下では、立ち止まることも許されない。だからこそ、“ルール32”が彼らにとって重要になるのだろう。

コロンバスが作成した「生き残るためのルール」は、ゾンビ映画を観尽くした人にこそ響くものが多い。実際にゾンビに襲われた場面を想像しながら、代表的なルールを確認しておこう。

◆ルール1有酸素運動/CARDIO
かつてゾンビはノロノロ歩きが定番だったが、昨今では生前と同じ運動能力で、時にはアスリート並みの速さで追ってくるゾンビも多い。一噛みされたらオワリである以上、結局ゾンビ相手には逃げるのが最善の手である。日頃からジョギングをして鍛えておきたい。
◆ルール2二度撃ち/DOUBLE TAP
これは対ゾンビのみならず、殺人鬼相手にも通じるルールだ。過剰防衛は避けたいところだが、命の危機がある場合には、腹や首への攻撃で安心したりしてはいけない。確実に頭を潰し、二度撃ちしてとどめを刺そう。
◆ルール3トイレに用心/BEWARE OF BATHROOMS
密室x無防備のトイレは最も警戒すべきスポットと言える。常に緊張感を持っていれば、トイレットペーパーをくるくるしている最中にゾンビがあらわれても、咄嗟に銃へ持ち変えることが出来るはずだ。短時間で用を足せるよう、腸内環境を整えておくのも必要だろう。
◆ルール4シートベルト/ SEATBELTS
日頃からシートベルト着用を習慣付けておく。車に乗ったらシートベルト。座ったらシートベルト。そうすれば、ゾンビがいてパニックになっても、体が勝手に動いてシートベルトを締めてくれるだろう。車に張り付いたゾンビを振り落す戦法もスムーズに取れるようになる。
◆ルール7旅行は軽装で/TRAVEL LIGHT
ゾンビだらけの世界で、武器と食料以外に持ち歩くべき荷物はないだろう。着替えたい、髭をそりたい、暇を潰したい……そんな時はバッグ一つで大型ショッピングモールへ行けばいい。ショッピングモールが、きっとすべてを解決してくれる。
◆ルール18準備運動/LIMBER
これは、なんならルール0と言ってもいいだろう。準備運動なしに、逃げるのも戦うのも危険が伴う。特にこれまでゾンビと戦ってこなかった層は、あっという間に関節を痛めてしまうに違いない。ゾンビが溢れ出した瞬間から、いつでも飛び出せるよう、こまめにウォーミングアップしておこう。
◆ルール22怪しい時は出口確保/WHEN IN DOUBT, KNOW YOUR WAY OUT
英語版は韻を踏んでおりオシャレなルール。これはゾンビだけでなく、慣れない場所で他人と居合わせるようになった場合には実践したい。ゾンビは目の前の物を追うだけだが、悪人は『逃がすまい』と考えて策を講じる場合もある。先手を打って逃げ道を用意しておこう。
◆ルール31後部座席を調べる/CHECK THE BACK SEAT
ホラー映画で、バックミラーを見てソレと目が合った次の瞬間!みたいな展開はよくある。ゾンビでも、人間でも、背後を取らせないよう必ず後部座席は調べておきたい。新たに乗り込む車であれば運よく武器などが転がっている可能性もあるし、見ない手はないだろう。
◆ルール32ささやかなものを楽しめ/ENJOY THE LITTLE THINGS
この映画が最も伝えたいルールは、恐らくこれである。常に警戒し、用心の上で戦うように促すルールや明文化された実践方法は、或いは他の映画でも学べることだろう。しかし、ただただ生き延びることが目的なのではない。人間らしく『生きる』というのは、きっと目の前の小さな出来事に楽しさや喜びを見つけて感じ取ることであり、コロンバスと共に我々も学ぶべき一番の教訓だったと言える。

ルールをメタ的に表現するのではなく、登場人物の行動指針として提示しているのが斬新で、冒頭から引き込まれた。ヒーロー物のようなスローモーションに良い塩梅のゴアが加わったオープニングシークエンスは、何度も見たくなるパートだ。

ビル・マーレイ関連のシーンは声を出して笑ってしまうほど愉快だったが、全編を通してずっとゆるく面白い感じがたまらない。それでいて、タラハシーと“愛犬”の回想をあえて流しておいての“息子”だったという演出や、なんだかんだで遊園地に集合してしまう展開など、多少ベタではあるがグッとくるドラマ性もあり、薄っぺらいコメディとも違う良さがある。

ゾンビ物、という括りの中ではかなりオリジナリティが高く、シンプルに楽しめる一作でもあり、要するにタラハシーってかっけぇなとなる一作である。

基本情報

【公開年】2010年
【監督】ルーベン・フライシャー
【キャスト】ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン、
ビル・マーレイ
【登場人物】コロンバス(青年)、タラハシー(カウボーイハットの男)、ウィチタ(詐欺師姉)、リトルロック(詐欺師妹)、ビル・マーレイ
ポストクレジットあり

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