
※卵はこのあとスタッフが美味しくいただきました
スペイン語でそのまま『泣く女』を意味するラ・ヨローナという名前の女が出てくる都市伝説にまつわるストーリー。2つの家庭と若干イライラさせられる“泣く女”の運命をまとめながらレビューしていく。
事実関係・疑問点の整理
交差する両家族の運命
●アルバレス家
作中、最初にラ・ヨローナの呪いを受けていたのはアルバレス家である。母パトリシアと息子トマスとカルロスの母子家庭だが、何故呪われるに至ったかは不明。家族全員、腕にラ・ヨローナの印があったので、呪いは最終段階にきていたと見られる。呪いから守るため、部屋に蝋燭を置き、施錠したクローゼットの中に息子たちを隠す。しかし事情を知らないアンナと警官が訪れると、軟禁されているように見える状況だったため、パトリシアを取り押さえ、子どもたちを「保護」。しかしその後、保護先の聖ビクトリア教会福祉施設でラ・ヨローナの呪いが発動したため、息子たちは溺死させられた。そばに川があったため、そちらに引きずり込まれた模様。もし川がなかった場合、どんな殺害方法だったかは分からないが、『溺死』がキーワードになる。
●アルバレス家の問題
児童相談所のケースワーカーであるアンナが「4年担当している」ことから、パトリシアによる虐待や育児放棄などがあったと思われる。アンナが家を訪れた際、「飲酒?」と言っているので、パトリシアの飲酒問題が原因の可能性が高い。なお、パトリシアは、子どもたちの溺死はアンナが「保護」したせいとしてアンナに呪いをかける発言をしていたが、その後実際に誘拐未遂も犯している。またその際、発砲してラファエルを負傷させている。普通に考えれば、本編終了後に逮捕コースである。
●ガルシア家
元警官の夫は他界、アンナが一人で息子クリスと娘サマンサを育てている。アンナがアルバレス家のケースワーカーだったがために、今回の呪いに巻き込まれた。呪いのきっかけが、【パトリシアがアンナの子どもを連れて行くようラ・ヨローナに祈った】からなのか、【溺死事件の現場でたまたまクリスがラ・ヨローナと接触した】からなのかは不明。怪奇現象についてペレズ神父に相談➡呪術医ラファエルを紹介してもらい、ラ・ヨローナと対決する流れとなる。
●ガルシア家の問題
アンナの多忙な生活は仕事にも支障が出ており、頻繁に職場に遅刻している模様。子どもたちの食事も簡易なものが多い。それこそ、アンナが怪我の一つでもしたら破綻しそうな、危うい生活に見えた。女手一つで子どもを育てることが容易ではないこと、それでも、アンナが必死に支えようとしている姿が描かれていた。
明かされるラ・ヨローナ伝説
●メキシコでの悲劇
1960年代、メキシコ。村で有名な美人だったラ・ヨローナは、ハンサムな牧場主と結婚。二人の息子も生まれ、幸せに暮らしていた。しかし、夫が若い女と浮気。ラ・ヨローナは嫉妬し、仕返しに子どもたちを川で殺した。その後、同じ川で自殺。これが本当なら、とんでもない女である。そして現代では、【ラ・ヨローナが亡くした子の身代わりをさらいに来る】と言う伝説になっている。なお、これは作中の話だけでなく、中南米では実際に有名な都市伝説で、子供を水辺に近づかせないとか、夜出歩かせないとかの、戒め的な意味で語られているようだ。
●ラ・ヨローナの呪い
①ラ・ヨローナの泣き声が聞こえる
②腕に火傷のような傷【ラ・ヨローナの印】をつけられる
③ポルターガイスト現象を引き起こす
④夜になると子どもを奪いに来る
⑤奪った子どもを溺死させる
➡大人は邪魔をしなければ溺死対象にならない可能性が高い。
ガルシア家のケースでは、最初の接触から数えて1日目にクリス、2日目にサム、3日目にアンナという時間軸で印をつけられた。印をつけるのは1日に1人の制約でもあるのだろうか。
●倒し方
メキシコでラ・ヨローナが息子たちを殺した際、そばにあった“炎の木”。その木を彫って作った小洒落た十字架を胸に刺すと、ラ・ヨローナは苦しんで消滅した。“炎の木”だから倒せたのか、十字架だから倒せたのか、単純に物理的な攻撃が効いたのかは判別がつかない。しかしラファエルが折角ドヤ顔で用意していたので【炎の木の十字架】だから倒せた、という解釈にしておく。
死霊館ユニバース:ほぼ繋がりのないスピンオフ
本作はスピンオフ的作品にあたるので、自作の「死霊館ユニバース一覧」には入れていない。しかし折角なので関連作品として死霊館ユニバースを紹介しておきたい。
各作品の事件の時系列としては下表①、映画公開順では下表②の通り。本作の設定は1973年のため、時系列的には「死霊館」と「死霊館エンフィールド事件」の間に当たる。
今回登場したペレズ神父は「アナベル 死霊館の人形」に登場したキャラクターで、作中、数秒だけアナベルのシーンが挿入されている。また、ペレズ神父が「ツテがある」と最初に触れていたのは、死霊館シリーズに登場するウォーレン夫妻と思われる。
| ①時系列順 | ②映画公開順 |
|---|---|
| 1952年 死霊館のシスター | 2013年 死霊館 |
| 1955年 アナベル 死霊人形の誕生 | 2014年 アナベル 死霊館の人形 |
| 1956年 死霊館のシスター 呪いの秘密 | 2016年 死霊館 エンフィールド事件 |
| 1967年 アナベル 死霊館の人形 | 2017年 アナベル 死霊人形の誕生 |
| 1969年 アナベル 死霊博物館 | 2018年 死霊館のシスター |
| 1971年 死霊館 | 2019年 アナベル 死霊博物館 |
| 1977年 死霊館 エンフィールド事件 | 2021年 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 |
| 1981年 死霊館 悪魔のせいなら、無罪 | 2023年 死霊館のシスター 呪いの秘密 |
| 1986年 死霊館 最後の儀式 | 2025年 死霊館 最後の儀式 |
感想
ホラーとしてそこまで目新しいこともなく、ストーリーも浅く、印象が薄かった。ラ・ヨローナにもう少し悲劇的な要素があれば映画全体の見方も変わったかも知れないが、ダンナの浮気の仕返しに子どもを殺し、その上で他人の子どもを奪いにくるのはあまりにも身勝手だろう。容姿に自信があった彼女は、鏡に映った自分=化け物の姿を見て怒号を上げていた。それも自己中心的な反応にしか見えず、どこまでも同情の余地がなかった。
パトリシアは、息子たちが死んだのはアンナのせいと非難した。しかし、そもそもアンナがあの日あの場に踏み込んだのは、過去のパトリシア自身が招いた種ではないのだろうか。息子たちを守りたい気持ちに嘘はなかったと思う。しかし、あの状況で「アンナを呪う」選択をする彼女は、これまでの人生でも他責思考で、場当たり的に生きてきたように映った。【因果応報】という言葉がチラつく結末だったと思う。
それにしても、わざわざ家に来てもらっておいて、ラファエルの卵パフォーマンスを「テレビで見た」とか揶揄しちゃうアンナ、さすがに失礼なのでは。頑張っているママだとは思うが、どうにも最初から最後までアンナを好きになれず、感情移入も難しかった。こうして振り返ってみると、本作に登場する女性陣は、総じて内面の魅力がない。それがあまり本作を好きになれなかった要素の一つでもあると思う。
基本情報
【公開年】2019年
【監督】マイケル・チャベス
【キャスト】リンダ・カーデリーニ、ローマン・クリストウ、ジェイニー=リン・キンチェン、レイモンド・クルス、パトリシア・ヴェラスケス、ショーン・パトリック・トーマス、トニー・アメンドーラ、マリソル・ラミレス
【登場人物】アンナ・テイト=ガルシア:ケースワーカー、クリス:小学生/アンナの息子、サマンサ(サム):小学生/アンナの娘、ラファエル・オルヴェラ:呪術医、パトリシア・アルバレス:アンナが担当していた一家の母、クーパー(クープ):刑事、ぺレス:神父、ラ・ヨローナ
【ポストクレジット】なし






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